妊婦健診のエコーで「逆子ですね」と言われると、 「出産までに戻るのかな」「もしこのままでも、ちゃんと産めるんだろうか」と、一気に不安が押し寄せてきますよね。多くの赤ちゃんは妊娠中期には向きをよく変え、36週までに約95%が自然に頭位になるといわれています。臨月でも逆子であったとしても、予定帝王切開や外回転術など“安全に産むための選択肢”が用意されています。ですので、34〜35週ごろから主治医と方針を相談し始めるのが現実的です。
本記事では、産婦人科医・吉村泰典先生とともに「逆子」をやさしく整理し、今どの段階で何を気にすべきか、そして安心して出産に臨むための選び方をお伝えします。
- 【この記事でわかること】
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Q. 「逆子ですね」と言われたら、どれくらい心配したほうがいいですか?
A. 妊娠中期には約4割の赤ちゃんが逆子ですが、36週までに約95%が自然に頭を下に向けるとされています。本記事では、「どのタイミングでどこまで心配すべきか」の目安を整理しています。
Q. 逆子になったのは、私の生活や体質のせいですか?
A. そうではありません。逆子になりやすい“条件”はありますが、多くの場合、ママのせいではなく、赤ちゃんが一番ラクな姿勢をとっているだけと考えて差し支えありません。
Q. いつまでに頭位(とうい)に戻らないと“要相談”になりますか?
A. 34-35週あたりで相談するのがいいと思います。まだ戻る可能性はあるものの、34−35週は分娩方法も含めて具体的に相談する段階といえます。
Q. 逆子体操やお灸の医学的効果について教えてください。
A. これらのものには、はっきりした科学的根拠はありません。
Q. 34−35週をすぎても逆子のままだったらどうなりますか?
A. 自然回転を待ちつつ、外回転術を検討するか、予定帝王切開にするのかなど、安全に産むための選択肢を具体的に考える段階に入ります。
36週までの逆子は“よくあること”です

「逆子」と聞くと、“レアなトラブル”のように感じてしまいますが、実はそうではありません。
吉村先生は、まずこんな話から始めてくれました。
「人間以外の多くの哺乳類は、おしり側から生まれてくることがむしろ一般的です。人間は二足歩行になり、骨盤がぐっと狭くなった結果、一番大きい“頭”から先に通さないと引っかかりやすい。そうした事情があって、頭を下にした姿勢=頭位(とうい)で生まれるという形が標準になりました」
人間にとっては頭位が“普通”、逆子=骨盤位(こつばんい)が“例外”のように見えますが、生き物全体で見ればおしり側から出てくること自体は特別な現象ではない、ということ。
さらに、妊娠中期〜後期のエコーで逆子と言われること自体も、よくあることです。
「24~26週ごろは、赤ちゃんの約4割が骨盤位(逆子)だと言われています。この時期の赤ちゃんはまだからだも小さく、子宮の中でくるくる向きを変えながらすごしています。エコーで見た“一瞬”がたまたま逆子、というのはごく普通のことなんですね」(吉村先生)
週数が進むにつれて、少しずつ「頭を下にした姿勢」に落ち着いていきます。
「妊娠30週ごろでは、約15%が逆子と言われています。34週ごろになるとその割合は約10%まで減っていきます。36週(臨月)になっても逆子のままのケースは約5〜7%。つまり、36週までに約95%の赤ちゃんは自然に頭位に回ってくるということにもなります」(吉村先生)
妊娠中期〜後期に「逆子ですね」と言われても、それ自体は「経過の途中でよく起きること」と理解しておくと、必要以上に不安を膨らませずにすみますね。
なぜ逆子になるの? もちろん“ママのせい”ではありません

「どうしてうちの子だけ逆子なんだろう」「私の生活が悪かったのかな」と、自分を責めてしまう方も少なくありません。
でも、吉村先生は「それは違います」とはっきり否定します。
「逆子になりやすい『原因』のようなものはありますが、多くの場合、はっきりした理由はなく、赤ちゃんが一番ラクな姿勢をとっているだけなんです。『歩きすぎたから逆子になったんじゃないか』『寝方が悪かったのでは』『からだの冷やしすぎだったのかも』と心配される方もいますが、そういった日常生活の影響はほとんど考えなくていい、と私はお伝えしています。“ママのせいではない”ということを、まず知ってほしいですね」(吉村先生)
逆子は「ママの努力不足」や「妊娠期のすごし方の問題」といった自己責任の話ではまったくなく、赤ちゃんと子宮の条件がたまたまそうなっているだけ。そこを知っておくだけでも、気持ちは軽くなりますよね。
いつまでに戻らないと要相談なの?

次に気になるのが、「いつまで逆子でも“様子見”でいいの?」というポイントです。
吉村先生の話をもとに、ざっくりと「時間軸の見取り図」を描いてみましょう。
24〜32週:経過観察フェーズ
この時期は、逆子は“経過のうちの一形態”です。
赤ちゃんはまだ十分に動けるスペースがあり、くるくる向きを変えながらすごしている時期なので、「24週で逆子」「28週で逆子」と言われても、ほとんどの場合は深刻な意味はありません。
「このあたりでは“いまは逆子ですね、また向きが変わるかもしれません”という説明になります。特別なことをするより、普段どおりの生活でかまいません」(吉村先生)
34週ごろ:分娩方法の相談フェーズ
34週あたりになると、多くの赤ちゃんが頭位に落ち着いてきます。まだ逆子の場合でも、ここから次の健診までの動き方を見ながら、「このまま様子を見るのか」「いつから分娩方法を考えはじめるか」を、医師と共有していく段階です。
「まだ戻る可能性はあるのですが、この時期からは、逆子が続いた場合に外回転術を検討するのか、予定帝王切開を前提に準備するのかといったことを、担当の先生と具体的に相談していくタイミングと考えてください」(吉村先生)
36週以降:分娩方法の意思決定フェーズ
36週を迎えても逆子のままの場合、「自然に任せていればそのうち治る」ではなく、分娩方法も含めて具体的に決断していくフェーズに入ります。
「36週以降も骨盤位のままというのは、全体の5〜7%程度です。この頃になると自然に頭位へ戻る可能性はだいぶ低くなりますので、34〜35週ごろから主治医と相談してきた内容をふまえて、『どの出産方法を選ぶか』『いつごろ分娩のタイミングを決めるか』を具体的に固めていく段階です。もちろん1〜2週間のあいだに自然に回ることもありますが、 “どういう形で産むのがいちばん安全か”を医師と一緒に整理しておくことが大切だと思います」(吉村先生)
「いま自分はどのゾーンにいるのか」をざっくり知っておくだけでも、“いま必要な心配”と“まだ考えなくていい心配”を切り分ける助けになります。
逆子体操・お灸…やってもいいけれど「やらなくても大丈夫」と吉村先生が言う理由

逆子と聞くと、周囲からさまざまなアドバイスが飛んできます。「逆子体操がいいらしい」「お灸で治ったって聞いたよ」など、プレッシャーのように感じてしまうこともあるでしょう。
かつては、母親学級や雑誌でも【うつ伏せに近い姿勢をとる「胸膝位(きょうしつい)」】【左右どちらかの横向きで寝るポジショニング】【足の小指にお灸をすえる民間療法】といった“逆子対策”が盛んに紹介されていました。
吉村先生はこうした対策について、「否定をするわけではありません」と前置きしながら、こう漏らします。
「逆子体操やお灸などに、はっきりとした科学的根拠はありません。もちろん効果があったよ、という方もいらっしゃると思います。でも、そもそも36週までは自然に治ることもよくあることですので、体操をしたから治ったのか、たまたまそのタイミングで自然に回ったのか、区別がつかないんですね」
そのうえで、こうも続けます。
「『何かしていないと不安だ』というお気持ちは、すごくよくわかります。つらくない範囲で、“効いてよかった”くらいの気持ちでやるのは構いません。ただし、あんなにがんばったのに治らなかったのはなんでだろう、自分のやり方が悪かったんじゃないかな、などと考えないようにしてほしいと思います」
もしも、逆子体操などをやってみたいと思うなら、まず妊婦健診で医師・助産師に相談しましょう。特に逆子体操はお腹が大きくなると辛くなってきます。体操をやるにしても、苦しくなるほどの体勢や、「痛みを我慢して続ける」はNGです。
「何もしなくても、それはそれで“正しい選択肢”です。何もしない=怠けではありませんよ。努力でどうにかする類いの問題、というよりは赤ちゃんが回りたいタイミングで回るかどうかに近いものですから」(吉村先生)
妊娠中に「逆子ですね」と言われると、いろいろと不安になってしまうものです。でも実際には、36週までにほとんどの赤ちゃんが自然に頭を下に向け、仮に戻らなかったとしても、日本の周産期医療のもとで安全に出産するための選択肢はきちんと用意されています。
「逆子=大問題」ではなく、「赤ちゃんがその姿勢でいたいだけ」です。
そう理解したうえで、週数ごとに「今は経過観察でいいのか」「そろそろ分娩方法を考える段階なのか」を冷静に見ていけると、不安も和らぐのではないでしょうか。
次回の記事では、36週をすぎても逆子のままだった場合に、どんな分娩方法の選択肢があり、なぜ現代では“逆子=帝王切開”が主流になっているのかを、吉村先生と一緒に整理していきます。

- 【監修】吉村泰典(よしむら・やすのり)
- 慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。









