妊娠14週0日~27週6日にあたる妊娠中期。つわりが治まり、体調が安定してくる時期です。また、おなかの赤ちゃんの胎動が感じられるようになるので、ママになる実感もより強くなってくる頃です。
本記事は、妊娠中期の赤ちゃんの様子とおなかがどんどん大きくなるプレママが気をつけたいことについてまとめました。監修は慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生です。
妊娠中期はいつからいつまで!?
妊娠中期とは娠妊娠14週0日~27週6日をさします。妊娠4か月後半から妊娠7か月までの3か月間半にあたり、一般的に「安定期」とも呼ばれる時期になります。
安定期と呼ばれる所以は、胎盤が完成し流産のリスクが低下すること、つわりも軽減する人が多いことなどから、母子ともに安定した状態となるため。
また、胎動も始まり、おなかの赤ちゃんの存在をより身近に感じられる頃でもあります。その一方でおなかが大きくなってくる時期でもあり、またさまざまな症状も出始めます。
おへその下あたりの下腹部に感じる大切な命の存在。その成長を感じながらすごす毎日は、妊婦さんにしか得られないスペシャルな日々です。
妊娠中期の赤ちゃんの様子や大きさは?
この時期までに、おなかの赤ちゃんのからだの基礎はできあがっています。そしてここから、赤ちゃんの成長のスピードは加速していくことになります。ということで目まぐるしく成長を遂げる14週0日~27週6日までの赤ちゃんの発育の様子を見ていきましょう。
妊娠4か月後半
〈妊娠14週〉臓器の基本的な形が完成!
おなかの赤ちゃんの体重は約60~80g。まだまだ小さいですが、この頃には臓器の基本的な形が完成しています。また髪の毛や爪も生え始め、手や足を動かすようになります。
〈妊娠15週〉つわりがおさまりはじめます!
辛かったつわりもようやくおさまり始めるころです。そして受精卵が子宮内膜に着床したときから作られはじめた胎盤が、この頃に完成します。この時期の胎盤の大きさは14~15cmくらい。完成した後も胎盤は成長し、出産予定日のころには25cm前後、厚み2~3cm、重さ500~600gくらいまで大きくなります。
赤ちゃんも妊娠15週末頃には身長約10㎝、体重は100gくらいになっています。また、男の子と女の子の区別となる外性器の形も完成する時期です。
妊娠5か月
〈妊娠16週〉ママの声を記憶するように
赤ちゃんのからだは細かい部分までほとんど完成します。体重は約150gまで成長していますが、赤ちゃんの大きさには個人差が出てくるころでもあります。また、エコー検査で赤ちゃんが羊水を飲みこむ様子を観察できるようにもなりますよ。
この時期から赤ちゃんは外の音がわかるようになり始めます。いずれよく耳にするママの声を「記憶」するようになるので、「ママはここにいるよ」と、赤ちゃんにはどんどん話かけてみてはいかがですか。
〈妊娠17週〉指しゃぶりをする赤ちゃんの様子も見られる?
全身にうぶ毛が生え、髪の毛やまつげ、眉毛も生えてきます。また、手足の指先には将来、指紋になる渦巻き模様もできてきます。この時期から赤ちゃんは、手や指を吸う仕草をするようにもなるので、エコー検査で指しゃぶりする姿を見られるかもしれませんよ。
〈妊娠18週〉筋肉や皮下脂肪がつき、動きも活発に
この頃の体重は約200gですが、16週あたりから個人差が大きくなること、またそもそも推定胎児体重は、およそ±10%の誤差が出るため、あくまで目安程度とお考えください。
この時期の赤ちゃんは筋肉や皮下脂肪がついて、からだを反らす、首を左右に振る、手の指を握るなどの動きをするようになります。赤ちゃんはどんどん活発になってきますよ!
〈妊娠19週目〉胎動を感じられるママも増えてきます
手足の指先に爪ができ始めます。この頃から、赤ちゃんの動きを胎動として感じる方が多くなるようです。一般的に胎動を初めて感じるのは妊娠5〜6か月頃が多いですが、早い人は4か月末から、遅ければ7か月に入って感じる方もいらっしゃいます。
赤ちゃんの頭の大きさは鶏の卵ぐらいまで成長し、体全体のバランスとしては3頭身とまだまだ頭でっかち。皮下脂肪も体全体についてくるので、少しだけふっくらしてきます。
妊娠6か月
〈妊娠20週〉赤ちゃんの顔立ちがはっきりしてきます
妊娠期間40週の折り返し地点に到達です。赤ちゃんの体重は250~310g。感覚に関わる脳の中枢神経系が発達。顔立ちがはっきりしてきます。
この時期までに胎児の運動パターンはほぼ出揃い、また足の骨がしっかりして筋肉もついてくるので、“キック力”も強くなるなど、胎動を激しく感じることも。
〈妊娠21週〉脳にシワができてきます
それまで表面がつるつるとしていた赤ちゃんの脳にシワができはじめます。脳の表面積が広がり、脳細胞の数も増えていくことで、脳は発達していくのです。
消化器、泌尿器などの内臓の器官も発達。骨や筋肉がしっかりして、からだの動きが大きくなります。エコー写真も、赤ちゃんらしい姿が見られるようになりますよ。
〈妊娠22週〉ホルモン分泌がはじまります
体重は約450gほどになります。この頃までに内臓や器官がほぼ完成します。
また、赤ちゃんの性腺(男の子は精巣、女の子は卵巣)はこれまで以上に発達してきます。とくに、男の子の精巣からはテストステロン(男性ホルモン)が大量に分泌されるようになる時期。テストステロンが多いと、脳は「男の子」、少ないと「女の子」と認識しますが、これにより、生まれた後の性行動の性差も決まります。つまりこの時期のテストステロンの分泌量が、性の自己認識を決定づけることに大きな影響を及ぼします。
ちなみに、男の子か女の子かの「性別」は受精の瞬間に決まります。妊娠8週頃から男性と女性に分化をし始めます。妊娠14週頃までに男の子は「男性型」に、女の子は「女性型」に、外性器の分化が完了します。
〈妊娠23週〉どんどん成長する赤ちゃん。でもほとんど寝ています
赤ちゃんの身長は約30cm、体重は600g前後、超音波エコーの画面からはみ出すほどに成長します。ママのおなかも前にせり出してくるので、それの影響で腰痛や背中の痛みを感じることが多くなってきます。
また子宮も大きくなり、横隔膜を押し上げるため心臓や肺が圧迫され、息苦しさを感じることもあります。血液量が増えて、通常時より心臓に負担がかかるため、動悸や息切れが起こりやすくなる時期です。でもそれは赤ちゃんが順調に成長している証なので安心してくださいね。
この時期の赤ちゃんはほとんどの時間眠ってすごしています。ただしその8割は脳と目が活動しているレム睡眠 状態です。
妊娠7か月
〈妊娠24週〉羊水を飲んでしゃっくりすることも
赤ちゃんの体重は660g前後まで成長しています。赤ちゃんの皮膚の下では毛細血管が作られて少しずつ肌がピンク色になっていきます。このころの赤ちゃんはママのおなかの中でぐるぐる回転することもよくあります。ちょうど耳の内耳が発達し、平衡感覚が備わってくるころなので、上下前後ぐるぐると回っても、自分がどの位置にいるのかわかるようになっています。
まぶたが完成し、上下に分かれて、パチパチと瞬きができるようにもなります。また羊水を飲み込んでしゃっくりすることもあります。
〈妊娠25週〉ママの体の中に響く音を聞いています
このころから、赤ちゃんの感覚器官の発達が加速していきます。特に聴覚は完成に近づくといわれています。赤ちゃんが聞いているのは、母体に響く音です。ママの血管を流れる血液の音、ママのおしゃべり、くしゃみ、笑い声などを聞いています。なお胎児の耳は低音より高音の方が聞き取りやすいので、男性の場合は意識して少し高めの声で話かけてあげると聞こえやすいかもしれません。
〈妊娠26週〉エコーで外性器がはっきり見えることも
赤ちゃんの大きさには個人差が顕著になってきますが、平均体重は900gほど、大きな赤ちゃんでは1000g近くにもなります。この時期は味覚が発達して、甘味や苦味の区別ができるようになります。同時に嗅覚も発達。赤ちゃんはママの羊水のにおいを記憶することで、誕生直後から、(目が見えないのに)そのにおいの記憶に従い、乳首へ口を寄せ、おっぱいを飲もうとすると言われています。またエコーで外性器がはっきり見えることもあります。
〈妊娠27週〉光と影を認識するようになります
目が完成して、光の明暗を感じるようになります。赤ちゃんは子宮とおなかの壁ごしから差し込む光を「明るい」と感じるようです。この時期の赤ちゃんは、睡眠と覚醒を約20分間隔で繰り返していると言われていますが、光を感じられるようになることで、昼と夜の区別、1日24時間のリズムを認知し、体内時計を整えるファーストステップとなるのです。
妊娠中期の症状とは?
ほとんどのプレママは妊娠15週頃になるとホルモンの状態が安定して、つわりが治まります。乳腺も発達し、おなかの膨らみが目立ってくる時期です。日を追うごとに胎動も激しくなるので、赤ちゃんの存在をより身近に感じられるようにもなります。そんな時期に起こりやすい代表的な症状をまとめました。
貧血 ⇒バランスのいい食事で対策を
妊娠中の動悸やめまい、頭痛、立ちくらみの原因として、鉄欠乏性貧血があります。妊娠16週頃までは、つわりによって十分な食事を摂れないことで鉄分が不足し、貧血が起こりやすくなりますが、妊娠中期以降、特に妊娠20週以降は赤ちゃんのからだが完成し、子宮が大きくなっていく時期。そのため、鉄分や葉酸の必要量が増すので、貧血が起こりやすくなるのです。
レバー、ほうれん草など鉄分の多い食事は大切ですが、レバーなどからビタミンAを過剰に摂取すると赤ちゃんの発育に影響がある(※1)と言われていますから、鉄分だけを気にするよりバランスの良い食事を心がけることが大切です。
便秘 ⇒生活リズムを整え、水分と食物繊維を摂取、軽い運動も
妊娠中に便秘に悩むプレママは少なくありません。便秘の原因として、胎盤の形成に関わる黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で消化器の働きが抑制されること、大きくなる子宮に腸が押されること、運動不足になりがちなこと、などが考えられます。
便秘の予防には、生活リズムを整え、水分や食物繊維を含んだ食品を摂取し、散歩や軽い運動などでからだを動かすと効果があります。排便時にいきみすぎると肛門周囲の静脈がうっ血して痔になりやすいので気をつけましょう。
おなかの張り ⇒こまめにからだを動かしてみましょう
椅子に座ったりして、ずっと同じ姿勢でいると、おなかの張りを感じることがあります。これは大きくなった子宮に静脈が圧迫されて、下半身の血流の循環が悪くなったためです。
おなかの張りを感じた時は、立ち上がって姿勢を変えたり、脚を上げ下げするなど、こまめにからだを動かすように気をつけましょう。
腰痛 ⇒体重増加を適正範囲内に&長時間同じ姿勢はしないように
おなかが大きくなって直立でバランスが取りにくくなってくると、背中が反り返って、腰の湾曲が大きくなります。腰や背中が痛くなるプレママは多いですが、この姿勢が原因かもしれません。
腰痛対策としては、体重増加を適正範囲内に抑え、長時間同じ姿勢を取り続けないようにすること。市販の湿布剤の中には、妊娠中は使用できない成分が含まれているものがありますから、事前にかかりつけの医師に相談してください。
動悸・息切れ ⇒ゆっくりとした動作で。治まるまで休みましょう
妊娠中期は血液量が増えて、通常時より心臓に負担がかかるため、動悸や息切れをすることもありますが心配する必要はありません。普段よりゆっくりとした動作を心がけ、動悸や息切れを感じたら治るまで休みましょう。万が一、咳、むくみ、だるさなどを感じるようならかかりつけ医を受診しましょう。
皮膚のかゆみ ⇒入浴中と入浴後にていねいなケアを
皮膚のかゆみも妊娠中に起きやすい症状です。基礎代謝が上がり、ホルモンの影響で皮膚がデリケートになるためです。また湿疹のような発疹が手足を中心に現れる「妊娠性痒疹」という疾患もあり、おもに妊娠3か月頃から妊娠中期にかけて発症しやすく、出産まで症状が続くこともあります(出産後には改善します)。また、初産婦よりも経産婦に症状が現れやすいとされています。
いずれにせよ、皮膚はかゆみを感じやすくなるので、入浴中と入浴後のスキンケアをていねいに行ってください。それもで改善されないようであれば、かかりつけ医に相談してください。
プレママの適正体重とは?
体調が落ち着く妊娠中期になると、食欲が旺盛になってつい食べすぎてしまうプレママもいるようです。妊娠中の太りすぎは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの疾病につながるだけでなく、出産時にトラブルが起きやすいのでご注意ください。
一方で、自然な体重増も受け入れられずに食事の量を減らしてしまうプレママもいるようです。むしろ最近はやせすぎのプレママが多いことが問題となっています。プレママがやせすぎの場合、赤ちゃんの発育不全や低出生体重児のリスクが高くなることがわかっています。
日本産科婦人科学会は2021年3月にプレママの体重管理についての新たな指標を発表しています。妊娠中にどれくらいの体重増が適正なのかは、妊娠前の体格によっても違います。妊娠前のBMI(肥満度)を計算し、その値から妊娠中の体重増の目安を確認しておきましょう。もともとやせ気味のプレママは、12~15㎏の体重増加が推奨されていますよ。
健やかな妊娠期をすごし、元気な赤ちゃんを産むためには、適正体重を維持することが大切です。バランスのよい食事(※2)を摂り、無理のない範囲でからだを動かし、ストレスのない楽しい毎日をすごしたいものですね。
早産の原因と兆候
妊娠22週以降37週未満で赤ちゃんが生まれてしまうことを「早産」と言います。早産の主な原因として、子宮内の細菌感染で起きる「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」や「子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)」、子宮頸管の筋力が弱い「子宮頸管無力症」、双子以上を妊娠する「多胎妊娠」などがあります。
また妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病が悪化して早産になる場合もあります。喫煙による胎児発育不全は人工早産のリスクが高くなると言われています。
早産の兆候としては、出血、おりものの変化、おなかの張りがあげられます。正常な出産には早すぎる37週未満の出血、おりものの色や量の変化、いつもと違うおなかの張りを感じたら、すぐにかかりつけ医に連絡してください。
また最近は「切迫流産」や「切迫早産」と診断されるプレママが増えています。切迫早産は早産となる危険性が高い状態のことを言いますが、切迫早産が疑われる場合は、安静や投薬で治療を行います。早産を予防するために、妊婦健診をきちんと受け、無理のない生活を心がけましょう。
妊娠中期は、からだの中に芽生えた命の存在をより感じられるようになります。おなかの赤ちゃんを守り育てる日々は、新しい驚きと感動に満ちているのではないでしょうか。そして妊娠中期を終えると、赤ちゃんの誕生まであと3か月。新しい季節とともにやってくる新しい命。出逢えるのが待ち遠しいですね。
- <参考資料>
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※1妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性におけるビタミンA摂取の留意点等について(厚生労働省/平成7年)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/dl/4b-1.pdf -
※2妊婦のための食事バランスガイド(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b02.pdf
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※1妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性におけるビタミンA摂取の留意点等について(厚生労働省/平成7年)
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。