【専門医監修】 妊娠中期 症状・すごし方|ミキハウス 妊娠・出産・子育てマガジン

産婦人科医 / 吉村泰典先生

妊娠14週0日〜27週6日の期間は「妊娠中期」にあたり、つわりが治まり体調が安定してくる時期です。また、おなかの赤ちゃんの胎動が感じられるようになるので、ママになる実感もより強くなってきます。

本記事では、おなかがどんどん大きくなる妊娠中期のプレママが気をつけたいことをまとめました。監修は慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生です。

妊娠中期はいつからいつまで!?

妊娠中期はいつからいつまで!?

妊娠中期は妊娠14週0日〜27週6日を指します。妊娠4か月後半から7か月終わりまでの約3か月半で、特に妊娠16週からは「安定期」と呼ばれる時期です。この頃には胎盤が完成し、流産のリスクが低下します。つわりが軽減する人も多く、胎動を感じはじめる方もいます。

 

妊娠中期の症状とは?

妊娠中期の症状とは?

個人差はありますが多くのプレママは妊娠15週ごろになるとホルモンの状態が安定して、つわりが治まります。乳腺も発達し、おなかの膨らみが目立ってくる時期です。日を追うごとに胎動も激しくなるので、赤ちゃんの存在をより身近に感じられるようにもなります。そんな時期に起こりやすい代表的な症状をまとめました。

貧血 ⇒バランスのいい食事で対策を 

血液量は妊娠でおよそ30〜50%増え(主に血漿量)、体内の鉄分需要が大幅に高まり、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。たとえば妊娠初期はつわりで十分に食事が摂れず鉄分が不足しがちです。

妊娠中期に入ると胎児と胎盤が成長し、血液量もさらに増えるため、鉄や葉酸、ビタミンB12の必要量が増えます。ほうれん草や赤身肉、豆類など鉄分の豊富な食材を意識して取り入れましょう。

レバーにも多くの鉄が含まれますが、ビタミンAの含有量が高いため過剰に摂らないよう注意し(※1)、全体のバランスを大切にしてください。食事だけで補いきれない場合や、めまい・動悸が続く場合は、医師に相談し鉄剤やサプリメントの利用を検討しましょう。

貧血 ⇒バランスのいい食事で対策を 

便秘 ⇒生活リズムを整え、水分と食物繊維を摂取、軽い運動も

妊娠中に便秘に悩むプレママは少なくありません。便秘の原因として、胎盤の形成に関わる黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で消化器の働きが抑制されること、大きくなる子宮に腸が押されること、運動不足になりがちなこと、などが考えられます。

妊娠中に処方される鉄剤やサプリメントも便秘や便の硬化の原因となり得ます。便秘の予防には、生活リズムを整え、水分や食物繊維を含んだ食品を摂取し、散歩や軽い運動などでからだを動かすと効果があります。排便時にいきみすぎると肛門周囲の静脈がうっ血して痔になりやすいので気をつけましょう。辛いときは、無理をせず医師に相談してくださいね。

便秘   ⇒生活リズムを整え、水分と食物繊維を摂取、軽い運動も

おなかの張り ⇒こまめにからだを動かしてみましょう

椅子に座ったりして、ずっと同じ姿勢でいると、おなかの張りを感じることがあります。これは大きくなった子宮に静脈が圧迫されて、下半身の血流の循環が悪くなるためです。

おなかの張りを感じたときは、立ち上がって姿勢を変えたり、脚を上げ下げするなど、こまめにからだを動かすように気をつけましょう。

おなかの張り  ⇒こまめにからだを動かしてみましょう

腰痛 ⇒体重増加を適正範囲内に&長時間同じ姿勢はしないように

おなかが大きくなって直立でバランスが取りにくくなってくると、背中が反り返って、腰の湾曲が大きくなります。腰や背中が痛くなるプレママは多いですが、この姿勢が原因かもしれません。

腰痛対策としては、体重増加を適正範囲内に抑え、長時間同じ姿勢を取り続けないようにすること。市販の湿布剤の中には、妊娠中は使用できない成分が含まれているものがありますから、事前にかかりつけの医師に相談してください。

腰痛  ⇒体重増加を適正範囲内に&長時間同じ姿勢はしないように

動悸・息切れ ⇒ゆっくりとした動作で。治まるまで休みましょう

妊娠中期は血液量が増えて、通常時より心臓に負担がかかるため、動悸や息切れをすることもありますが心配する必要はありません。普段よりゆっくりとした動作を心がけ、動悸や息切れを感じたら治まるまで休みましょう。万が一、咳、むくみ、だるさなどを感じるようならかかりつけ医を受診しましょう。

動悸・息切れ ⇒ゆっくりとした動作で。治まるまで休みましょう

皮膚のかゆみ ⇒入浴中と入浴後にていねいなケアを

妊娠中は基礎代謝やホルモンの変化で皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみを感じやすくなります。さらに妊娠に伴う特有の皮膚疾患もいくつかあります。

妊娠初期〜中期に、おなかや腕・脚にざらざらした小さな丘疹が現れることがあります。アトピーや喘息などアレルギー体質のある人に多いとされ、出産後には自然に軽快します。かゆみが強い時は保湿剤やステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬を使うこともあります。

皮膚のかゆみは妊娠中によくあるものですが、黄疸を伴う全身のかゆみや発疹の広がりが急激な場合は、肝胆道系の病気など別の原因も考えられるため必ず医療機関を受診してください。

セルフケアのポイントは、入浴はぬるめのお湯で短時間にし、入浴後は乾燥させないように保湿クリームやローションで保湿すること。肌に刺激を与えない柔らかい衣服を選び、汗や乾燥を感じたら着替えや保湿を心がけましょう。かゆみが続く、発疹が悪化するなどの場合は、早めに医師や助産師に相談してください。

皮膚のかゆみ ⇒入浴中と入浴後にていねいなケアを

 

プレママの適正体重とは?

体調が落ち着く妊娠中期は、食欲が旺盛になってつい食べ過ぎてしまうことがあります。過度な体重増加は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった合併症のリスクを高め、分娩時のトラブルも増やします。

プレママの適正体重とは?

一方で、自然な体重増加を気にして食事量を落としすぎるのも要注意。やせ過ぎは胎児発育不全や低出生体重児のリスク上昇につながります。

日本産科婦人科学会ガイドライン産科編(2023年)の指標では、妊娠中の適正体重増加は妊娠前BMIと妊娠様式(単胎/多胎)で異なります。たとえば単胎妊娠で妊娠前BMI<18.5(「やせ」)の方は、総増加量の目安が12〜15kgです。それ以外のBMI区分や多胎妊娠、合併症がある場合は個別の指示が前提になります。

image11

妊娠前のBMI=体重(kg)÷身長(m)×身長(m)を確認し、主治医とご自身の目安を共有しておきましょう。健やかな妊娠期をすごすには、適正体重を維持することが大切。バランスのよい食事(※2)を基本に、無理のない範囲の運動を取り入れ、ストレスをためない生活を心がけてください。

 

早産の原因と兆候

早産の原因と兆候

妊娠22週以降37週未満で赤ちゃんが生まれることを「早産」と言います。早産は自発陣痛のほか、37週未満の前期破水を契機に起こることもあります。早産の主な原因として、子宮内の細菌感染で起きる「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」や「子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)」、子宮頸管の機能不全(子宮頸管無力症)、双子以上を妊娠する「多胎妊娠」などがあります。

また妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病が悪化して早産になる場合もあります。喫煙は早産と低出生体重のリスクを高めます。喫煙に伴う胎児発育不全では、医療的判断で予定より早く分娩が必要になる場合があります

早産の兆候としては、出血、おりものの変化、おなかの張りがあげられます。37週未満の出血、おりものの色や量の変化、いつもと違うおなかの張りを感じたら、すぐにかかりつけ医に連絡してください。水のような液体が持続して漏れているようであれば「破水」も考えられるので、その場合も医師に連絡を入れましょう。

また最近は「切迫流産」や「切迫早産」と診断されるプレママが増えています。切迫早産は早産となる危険性が高い状態のことを言いますが、切迫早産が疑われる場合は、必要に応じて子宮収縮抑制薬の短期投与や胎児肺成熟のためのステロイドなどを検討します。早産を予防するために、妊婦健診をきちんと受け、無理のない生活を心がけましょう。


妊娠中期は、からだの中に芽生えた命の存在をより感じられるようになります。おなかの赤ちゃんを守り育てる日々は、新しい驚きと感動に満ちているのではないでしょうか。そして妊娠中期を終えると、赤ちゃんの誕生まであと3か月。新しい季節とともにやってくる新しい命。出逢えるのが待ち遠しいですね。

<参考資料>

 

【監修】吉村泰典(よしむら・やすのり)
慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医

1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • X
  • LINE

あなたへのおすすめ

おすすめの記事を見る

記事を探す

カテゴリから探す

キーワードから探す

妊娠期/月齢・年齢から探す