吉村先生:他にも妊婦さんに気をつけていただきたい感染症としては、インフルエンザ、麻しん(はしか)、水痘(みずぼうそう)があります。これらの感染症は、妊娠中は重症化して流産・早産になったり、胎児の発育にも影響することが報告されていますが、どれも予防接種で感染を防ぐことができます。なおインフルエンザのワクチンは「不活性化ワクチン」のため妊娠中でも接種ができますが、麻しん、水痘のワクチンは「生ワクチン」ですから、妊娠前に予防接種をしなくてはいけないのでご注意ください。
――インフルエンザは毎年受けていますが、麻しんや水痘は小さい頃定期接種で受けただけです…。
吉村先生:基本的にはそれで充分です。子どもの頃の母子手帳があれば、予防接種の記録が残っていますから、それで確認することができます。妊娠前に母子手帳を見直すといいですね。
――母子手帳ですか? 自分のものは見たことがないです。
吉村先生:ワクチン接種歴がはっきりしないものがあれば、抗体検査を受けて、必要ならワクチンを接種しなければならないでしょう。母子感染を心配せずに妊娠期を安心してすごしていただきたいと思います。
――先天性風しん症候群の予防にパパ世代の予防接種が呼びかけられていることでわかるように、他の感染症でも妊娠の可能性のある女性だけでなく、社会全体で集団免疫を獲得すれば、母子感染の確率はほとんどなくなりますね。
吉村先生:そうです。感染症との戦いは人類の永遠のテーマなのかも知れません。新型コロナウイルスのような次々と現れる新しい病原体を根絶することは難しいと思いますが、TORCH症候群に代表される感染症による先天性の疾患をなくしていくために、感染症について知り、予防を徹底していただきたいと思います。
プレママ・プレパパは、安心して妊娠期間をすごすためにも感染症への対策はしっかりとしたいものです。そして少しでも気がかりなことがあれば、早めにかかりつけのお医者さまに相談してくださいね。
- <参考資料>
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※1風しんに関する疫学情報2020年3月4日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/2020/rubella200304.pdf -
※2ヒトパルボウイルスB19母子感染の実態(国立感染症研究所 2016年)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2340-related-articles/related-articles-431/6180-dj4314.html
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※1風しんに関する疫学情報2020年3月4日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。