専門医が語る ワクチン接種と妊活 ホントの話

胎盤や母乳を通じて、赤ちゃんに抗体を与えることも確認されています

胎盤や母乳を通じて、赤ちゃんに抗体を与えることも確認されています

吉村先生:とにかく産婦人科医として今、妊婦さんにお願いしたいことは、かかりつけ医と相談してなるべく早めに新型コロナウイルスのワクチン接種をしていただきたい、ということ。ワクチン接種のメリットとデメリットを妊婦さん自身がよく理解することも必要なのではないかと思います。

――インフルエンザワクチンの場合、プレママが接種するとおなかの赤ちゃんも抗体を獲得すると言われていますが、新型コロナウイルスのワクチンでも妊娠中のプレママや授乳中のママが接種したら、赤ちゃんは抗体を持つことになるのですか?

吉村先生:はい。妊婦さんが新型コロナウイルスのワクチンを接種すると、抗体が胎盤を通って赤ちゃんにも届くことが実証されています。母乳育児の場合も母乳から抗体を与えるようです。プレママや授乳中のママがワクチン接種をすると、赤ちゃんを感染症から守ることができるということです。

――それはすごい。プレママ、ママにはぜひ積極的にワクチン接種をしてもらいたいですね。あと気になるのはワクチンの効果がいつまで続くか、という点です。

吉村先生:これはまだはっきりとしたデータが取れていないのでわかりません。ただ日本の場合は、“ワクチン後発国”であるので、先に大規模接種を実施している海外の事例から多くのことを学べる立場にあるかと思います。つまり海外では、どんどんデータの集積が進んでおり、ワクチンの効果の持続性もそのうち判明する。そこから学びつつ、次の戦略を立てられる立場にあるというわけです。

専門医が語る ワクチン接種と妊活 ホントの話

――最後にワクチンに対する考え方です。特に若い世代の意見の中には、「自分は若くて健康だから、きっと感染しても軽症で済む。だから副反応の可能性もあるワクチンは接種したくない」という声も少なくありませんね。

吉村先生:感染しても軽症で済む人が多いのはそのとおりで、その認識に誤りはないですね。ただし感染する人がいる限り、その感染症はこの世界からなくならないということもわかってほしいと思います。そして感染者が多ければ多いほど、変異種が生まれる可能性も高くなる。実際、今、日本で流行り始めているデルタ株などは、若年層の重症化率も高くなっており、注意が必要です。

変異種が次々と生まれてしまえば、また私たちの生活に暗い影を落とし、この戦いがずっと続くことになるんです。もちろん病気が理由で接種ができない方もいるし、宗教的な理由で接種を控える方もいる。ワクチン接種を強制することはできません。ただ感染症対策は、ワクチン接種による集団免疫が基本です。「自分はかかっても軽症だからワクチンを打たなくていいんだ」との考えは、否定することはできませんが、医師として異を唱えたいと思います。感染症予防は自分のためでもありますが、赤ちゃんや老人、疾患を持った“弱者”を守る側面がある、ということを強く訴えたいと思います。

――そのとおりですね。人々が安心して暮らせるように、またこれから生まれる子どもたちがのびのびと育つ自由で活気に満ちた社会に戻れるように、私たち一人ひとりができることをしていかないといけませんね。今日はいいお話をありがとうございました。

<参考資料>

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