――よい精子を造るために、男性ができることはあるのでしょうか?
ひとつは、「禁欲期間を短くして射精をする」こと。射精をしないと、古い精子がたまって新しい精子を攻撃してしまうからです。精子の生存期間は約3日間ですから、禁欲期間は1~2日くらいが理想的です。また、精巣は熱に弱いので、「ブリーフよりも通気性のよいトランクスをはく」「長風呂、長時間のサウナは避ける」「膝の上でノートパソコンを使わない」ことも心がけるといいでしょう。さらに「自転車・バイクに乗りすぎない」「育毛剤を飲まない」こと。前者は、乗ったときに会陰部を圧迫したり、ウエアで肌を密着したりすることで、生殖機能への影響が懸念されます。育毛剤は、すべてではありませんが、主成分に男性ホルモンを抑制する働きをもつものが使われていることがあり、精子数減少などの副作用が考えられるからです。
問診では、喫煙や飲酒習慣、規則正しい生活をしているかについて聞きます。喫煙は、生殖機能に及ぼすマイナス影響が報告されていて、勃起不全(ED)の原因にもなるとされています。二日酔いになるような度を超えた飲酒や、不規則な生活も精子形成によい影響をもたらさないので注意が必要です。また、放射線も精巣によい影響がありません。1.0ミリシーベルト以下では問題とは考えられませんが、医療関係者など被曝の恐れがある人は生殖器を守る防具を必ずつけるようにしましょう。
いい精子を造るための10カ条
- 1禁欲期間を短くして射精をする
- 2ブリーフよりも通気性のよいトランクスをはく
- 3長風呂、長時間のサウナは避ける
- 4膝の上でノートパソコンを使わない
- 5自転車・バイクに乗りすぎない
- 6育毛剤を飲まない
- 7禁煙する
- 8お酒を飲みすぎない
- 9規則正しい生活を送る
- 10放射線に注意する
男性も一緒に不妊検査を受けましょう!
2年間性生活があるのに子どもができなかったら、まずはパートナーと一緒に検査を受けましょう。もしかすると無精子症かもしれないし、女性の側が卵管障害があるかもしれない。いろいろな原因が考えられますから、二人が同時に検査を受けることがいちばんよい方法です。
日本の不妊治療は、ウィメンズクリニックなどの婦人科の病院で行われていることがほとんどです。奥さんだけが一人で検査を受けて、医師から「問題ないですよ」といわれたとします。すると、排卵日に合わせて性生活をもつよう指導される「タイミング法」を行ったり、次のステップとして「排卵誘発(はいらんゆうはつ)法」をすすめられたりします。そんな感じで1年という時間を使った後、初めてご主人の精液検査をやって、男性の側に問題があることがわかるということもあるんです。女性が妊娠するためには年齢という因子は重要ですから、せっかくの時間を無駄にしてしまうと、可能だったことも不可能になってしまうんですね。
日本には不妊の専門医は480人くらいいて、男性不妊を専門とする人は45人ほど。しかも、数が少ないうえに大学病院にいる医師がほとんどです。僕は男性不妊の専門医で、婦人科の医師とともにクリニックを運営しています。ナース、胚培養士(はいばいようし)、カウンセラーなどスタッフ一丸となって、患者さんと同じ方向を向いて、全力を尽くしています。チームとしてやらなくてはどうにもならないのが、生殖医療なんです。ただ、このように男性不妊、女性不妊の専門医が常駐して治療にあたっているのは、日本ではここが初めてです。
――ということは、海外ではカップルが同時に検査をする形が一般的なのですね?
ヨーロッパではそれが当たり前です。日本でもこういうクリニックが増えればと思っています。レディースクリニックだと男性は行きにくいし、そもそも男は不妊治療クリニックに行きたくない。プライドもあるし、自分のせいだといわれたくないし。でも、僕は「それが本当にプライドを守ることになるんですか?」と思います。妊娠するには配偶子、つまり卵子と精子が必要なわけです。どっちが欠けてもダメで、そういう意味ではフィフティフィフティです。
男性が不妊治療の最初の過程で、一度検査を受けているかいないかは本当に大事なんです。もしも、男性に問題があった場合は、「自分に問題があるので、嫁にしんどい思いをさせて申し訳ないな」といういたわりの気持ちが出てくるでしょうし、そうでない場合でも、一度病院に行っていれば、不妊に対する理解と思いが変わると思います。いま不妊で悩んでいる人は、奥さんだけ泣いていることが本当に多い。旦那さんは奥さんがどんな治療をしているか、よく事情を知らないというケースです。