高熱が下がらない……乳腺炎で病院に行く目安は?
治療内容と薬の疑問を解決

高熱が出たり、おっぱいが赤く腫れ上がったり。「もしかして乳腺炎が悪化しているかも?」と思っても、「どの程度なら病院に行っていいの?」「セルフケアで様子を見ていいの?」と迷ってしまうことはありませんか?

我慢しすぎると悪化してしまいますが、早めに受診すれば、飲み薬だけで治ることも多い乳腺炎。この記事では、産婦人科医の吉村泰典先生に、いざというときに迷わないための受診の目安や、最新の治療内容(切らない処置や安全な薬)について解説していただきます。

【この記事でわかること】
Q. 乳腺炎が悪化したかも…何科を受診すればいい?
A. 出産した産婦人科、または「母乳外来」を掲げているクリニックがスムーズです。乳腺外科でも診てもらえますが、授乳期に対応しているか(母乳マッサージなどのケアがあるか)事前に電話で確認しましょう。
  
Q. 膿が溜まった場合は、病院で「切開」される?
A. 最近は切開することは稀です。膿が溜まっていても、針で抜く処置(穿刺吸引)や抗生物質で治せることがほとんどです。傷も小さく、授乳への影響も最小限で済みます。
  
Q. 抗生物質を飲むと授乳できない?
A. 授乳中でも安全に使える抗生物質がたくさんあります。医師は授乳中であることを考慮して処方しますので、心配な場合は「授乳を続けたい」と伝えてください。
  
Q. マンモグラフィ検査はするの?
A. 乳腺炎の診断には、痛みの少ない「超音波(エコー)検査」が主流です。マンモグラフィは圧迫時に痛みが強いため、炎症が落ち着いてから行うのが一般的です。
  
Q. 受診したら断乳を勧められる?
A. 現代のガイドラインでは、可能な限り授乳継続を推奨しています。一時的に患部側だけ休む場合でも、搾乳などでケアしながら再開を目指せます。

 

「切開」はめったにありません。安心して受診を

「切開」はめったにありません。安心して受診を

「乳腺炎が悪化して膿が溜まってしまったら、どうなるんだろう……」と不安に思う方もいるかもしれません。ひと昔前は、切開(メスで切る処置)が必要なケースもありましたが、今は治療法が大きく進化しています。

「現在は、早期に受診して薬を飲めば、ほとんどの方が手術なしで回復します。もし膿が溜まってしまった場合でも、メスを使わずに針で吸い出す方法が主流になってきています。『病院=痛い処置』ではありませんので、安心して相談に来てくださいね」(吉村先生)(吉村先生)

 

我慢しないで! 病院へ行くべき「危険なサイン」

セルフケアで様子を見ていいのか、すぐに受診すべきなのか。迷ったときは以下のサインをチェックしてください。これらのサインがある場合は、単なる「詰まり(うっ滞)」から「細菌感染(化膿性)」に進んでいる可能性が高い状態ですので、迷わず受診しましょう。

✔ 38.5℃以上の高熱がある
✔ 寒気(悪寒)がして、ガタガタ震える
✔ おっぱい全体が赤く腫れ上がっている、または赤い筋が見える
✔ 24時間セルフケアを続けても改善しない、または急速に悪化している

特に「寒気」や「震え」は、菌が全身に回ろうとしている(菌血症)可能性があります。この場合は24時間を待たずに、早急に医療機関を受診しましょう。

病院に行くとどんな診察をされるのでしょうか? 乳腺炎の診断には、痛みの少ない超音波検査(エコー)が欠かせません。

「エコーを使えば、そこにあるのが『ただの炎症(蜂窩織炎)』なのか、それとも『膿が溜まっている(膿瘍)』なのかを正確に見分けることができます。また、稀ですが『しこり(腫瘍)』が隠れていないかもチェックします。マンモグラフィは痛みを伴うため、炎症が起きている真っ最中に無理に行うことは通常ありません」(吉村先生)

 

「膿(うみ)」があっても切らない選択がスタンダードに

「膿(うみ)」があっても切らない選択がスタンダードに

検査の結果、治療方針が決まります。細菌感染が疑われる場合は、抗生物質(抗菌薬)が処方されます。

「適切な抗生物質を飲めば、多くの場合は数日で症状が劇的に改善します。点滴を行うこともありますが、基本は通院での内服治療です」(吉村先生)

炎症が進んで「膿(うみ)」の袋ができてしまった場合でも、すぐに切開するわけではありません。

「最新の治療では、メスで切る(切開排膿)のではなく、エコーを見ながら細い針を刺して膿を吸い出す『穿刺吸引(せんしきゅういん)』という方法が主流になっています。これなら傷跡も注射針程度で済みますし、痛みも少なく、処置後すぐに授乳を続けることも可能です。何度も繰り返す場合は切開が必要になることもありますが、最初から切ることはほとんどなくなりました」(吉村先生)

 

薬を飲むときの不安を解消

「薬を飲むと赤ちゃんに影響があるのでは?」「授乳を止めなきゃいけないの?」という不安についても、吉村先生に伺いました。

「乳腺炎の治療には、授乳中に飲んでも赤ちゃんへの影響が少ないとされる薬(セフェム系やペニシリン系など)が第一選択として使われます。

医師は『授乳中であること』を前提に処方しますので、安心して飲んでください。むしろ大切なのは『処方された分を最後まで飲み切ること』です。症状がよくなったからといって自己判断でやめてしまうと、菌が完全に死滅せず、ぶり返す原因になります」(吉村先生)

また、痛み止めに関しても同様です。

「痛み止めも、アセトアミノフェンやイブプロフェンなど、授乳中に使える安全なものがたくさんあります。炎症を抑え、痛みが取れれば母乳も出しやすくなります。我慢せずに活用してください」(吉村先生)

 

薬で治らない……もしかして別の病気?

薬で治らない……もしかして別の病気?

もし、適切な治療を受けてもなかなかよくならない、あるいはしこりが残る場合は、乳腺炎以外の病気が隠れている可能性も視野に入れる必要があります。

「稀ですが、抗生物質が効かない『肉芽腫性乳腺炎(IGM)』や、炎症に似た症状を示す『炎症性乳がん』といった病気である可能性もゼロではありません。
これらは専門的な検査や治療が必要になります。『乳腺炎だろう』と自己判断で放置せず、治らない場合は必ず再受診して、医師の診断を受けることが大切です」(吉村先生)

こんなことくらいで病院に行ってもいいのかなと迷う必要はありません。つらいときは、プロの手を借りるのが一番の近道です。

「私たちは、ママが1日も早く元気になって、笑顔で赤ちゃんに向き合えるようになることを一番に願っています。『相談してよかった』と思って帰っていただけるよう準備していますから、遠慮なく頼ってくださいね」(吉村先生)

1人で抱え込まず、まずは電話で相談することから始めてみましょう。

 

【監修】吉村泰典(よしむら・やすのり)
慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医

1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。

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