【ひな人形の選び方】2026年のトレンドは?
ママ・パパが選んだ“一生モノ”の基準とは

2026.02.26

ミキハウス編集部

梅のつぼみがほころび、春の足音がすぐそこまで聞こえてくる季節になりました。女の子のいるご家庭では、女の子のいるご家庭では、お部屋を彩るひな人形とともに、桃の節句のお祝い準備を楽しんでいらっしゃるのではないでしょうか。ひな人形は、お子さんの健やかな成長を願う大切なもの。だからこそ、これから初節句を迎えるご家庭にとっては、選び方に悩むものでもあります。

「今の時代、どんなひな人形が選ばれているの?」
「みんなはどういう基準で決めているんだろう?」

そんな疑問を抱きながら訪ねたのは、東京・浅草橋。江戸時代から続く老舗中の老舗、人形の「久月」さんです。昨今の複数調査によると、女の子のいるご家庭の約85%がひな人形を新調、あるいは親から譲り受けるなどして所有し、桃の節句を祝っているそうです。ライフスタイルが変わっても、なぜこれほど多くの家族が人形という形あるものを求めているのでしょうか。2026年のトレンドとともに、現代の選び方のリアルに迫ります。

 

選ぶ基準は、いかにインテリアに溶け込むか

選ぶ基準は、いかにインテリアに溶け込むか

〈▲ コンパクトかつグレージュカラーの木目込み人形も人気商品〉

2026年2月中旬。久月本店には優美なお顔立ちのおひなさまがずらりと並んでいました。まず目に飛び込んできたのは、伝統的なひな人形のイメージカラーとは異なる、明るくやわらかな色合いです。

「今年、支持されているのは、白やベージュ、実例を挙げれば『グレージュ』に代表されるような、いわゆる『くすみカラー』やナチュラル系のひな人形ですね」
そう話してくれるのは、久月の石田直樹さん。

〈▲ 入社以来30年以上、ひな人形の売れ筋・トレンドを捉え続けてきたという石田さん〉

「近年は白い壁やフローリング、北欧風の家具といったインテリアに馴染む、いわば『お部屋に溶け込むデザイン』が選ばれています。屏風も金屏風ではなく、和紙や布地を使った控えめなものが主流です。決定権を持つママたちの『自分たちの暮らしを邪魔せず、けれど季節を感じたい』というニーズが反映されているように思います」(石田さん)

〈▲ 金屏風ではなく、くすみカラーの木目の屏風で、全体的に落ち着いた印象の二人飾り〉

サイズについても顕著な変化があります。

「現在、もっとも売れる二人飾りでも、かつては横幅が65センチほどあるものが一般的でしたが、今や50センチ、さらにはもっとコンパクトなものが主流です。まず『どこに飾るか』というシミュレーションから検討が始まります。リビングの棚やテレビ台の上など、限られたスペースに収まるかどうかが大きな境界線になります」(石田さん)

〈▲10年前くらいまでは主流だったサイズ(左)と、現在、人気の高いコンパクトなもの(右)。たしかにこの差は大きいですね〉

ここで気になるのが価格のこと。サイズが小さくなれば価格も下がると思われがちですが、実はそうではありません。現在の売れ筋は15万〜25万円前後と、かつてと大きく変わらない、あるいは質を求めて上昇傾向にさえあります。

「実は小さくなるほど、職人の指先の技術はより繊細さが求められます。また、インテリア性を重視して上質な正絹(しょうけん)を使ったり、作家性の高いものを選ばれたりする方が増えているため、サイズを絞った分、質を追求する『一点豪華』な傾向が強まっています」(石田さん)

 

お顔と衣装に宿る、現代の“かわいい”

お顔と衣装に宿る、現代の“かわいい”

〈▲ 左は少し現代的なお顔のお姫様。顎周りがスッキリしていて、目元も今っぽいのが特徴。一方、右がクラシカルなお顔のタイプ。こうして比べると、随分印象が違います〉

人形そのものの「お顔」にも変化が。実際に売り場を歩くと、あごのラインがシュッと細身で、目がぱっちりと大きく、腫れぼったさのない「現代風の美人さん」が目立ちます。

「今のお母さん、お父さんの感性にフィットするような、かわいいお顔立ちですね。一方で、一言で『かわいい』と言っても、その表情は千差万別です。ひとつずつ見比べると、穏やかに微笑んでいる子もいれば、凛とした芯の強さを感じさせる子もいますよ」(石田さん)

また、近年改めて注目を集めているのが「木目込み(きめこみ)人形」です。木粉を固めたボディに直接布を埋め込んで作られるこの人形は、衣装を着せつけるタイプに比べ、全体的に丸みを帯びたフォルムが特徴です。

〈▲伝統的な木目込み人形も今っぽく。とってもかわいらしいです!〉

石田さんによれば、木目込み人形は今、小型化のトレンドに乗って見直されているとか。色合いもナチュラル系のものが増えており、その角のない温かみが現代の木目調のインテリアと調和することも、人気の理由のひとつとなっているようです。サイズも非常に小ぶりなものが多く、手のひらに乗るような小さな人形に、職人の繊細な手仕事が凝縮されています。そのやさしく、どこか幼子の面影を感じさせる表情に、思わず笑みがこぼれるママ・パパも多いといいます。

 

憧れと機能の両立「収納タイプの三段飾り」

住宅事情でコンパクト化が進む一方で、「段飾りへの憧れがある」という声に応えているのが、最近のヒット商品である収納タイプの三段飾り。

憧れと機能の両立「収納タイプの三段飾り」

〈▲ 飾り台がそのまま収納箱になるタイプのコンパクトな三段飾り。こちらは今年のトレンドを意識した淡いピンクを基調としたもの〉

「三段飾りの華やかさはそのままに、片付けるときはコンパクトにまとまります。出し入れのしやすさが心理的なハードルを下げてくれます。今のライフスタイルに寄り添いながらも、伝統的な節句の『しつらえ』を楽しみたい。そんなご家庭に支持されています」(石田さん)

 

伝統と革新の“波”は数年単位で繰り返されています

ここまで今年のトレンドをご紹介してきましたが、ひな人形のトレンドは、実は2〜3年という短いサイクルで「振り子」のように繰り返されていると石田さんは指摘します。

「もちろん、小型化であったり、顔が現代的になっている、という大きな変化はありますが、流行り廃りの周期は非常に短くて、クラシカルなものが流行ったら、数年後に目新しいものがブームになり、また数年後にクラシカルなものに人気が集中する…これを繰り返してるんです。たとえば今流行りのナチュラル系も数年前から広まり、今やどのメーカーも同じような『くすみカラー』を出すようになりました。こうなると、売り場がある意味で“単一化”してくる。そうなると、今度は『人とは違うものを選びたい』という親御さんの心理が働き、売り場の隅に追いやられた『黒塗り』や『色の濃いクラシックなもの』が再び売れ始めるんです」(石田さん)

〈▲ こちらクラシックタイプのもの。上品な佇まいに思わず見とれてしまいます〉

流行を追う時期があれば、また伝統的なクラシックへと戻る。ひな人形の世界は、数十年このサイクルを繰り返してきたと石田さん。
「今はナチュラル系が定番化していますが、また数年後には、どっしりとした伝統のよさが見直されるのではないでしょうか。流行は変わります。でも、大切なのは『まわりがそうだから』ではなく、自分たちが本当に心惹かれるものはどれか。愛する子どもにどんな人形を贈りたいか、という視点だと思います」(石田さん)

 

「一生モノ」との出会い。今はまだ、本物がある時代

昨今、ママのひな人形を譲り受け、人形はそのままに道具だけを新調して受け継ぐ方も少なくありません。また、住宅事情などで伝統的な人形を置かない場合でも、場所を取らないタペストリーを飾ったり、フォトスタジオで十二単を着て記念撮影をしたりするご家庭も。形あるモノを所有することにこだわらず、家族ですごす時間や記憶に価値を置く、そんな新しい節句のたのしみ方も定着してきています。

そうした価値観を肯定しながらも、石田さんは「ひな人形は特別な存在だと、私は信じています」と語ります。

「ひな人形は、その子の災厄を引き受けてくれる『身代わり』となります。だからこそ、愛する娘さんには贈ってあげてほしい。そしていつかお役目を終えるときまで、その子だけの守り神として大切にしてあげてほしいですね」(石田さん)

「一生モノ」との出会い。今はまだ、本物がある時代

一方で伝統の裏側にある職人世界の現実についても、こんなお話をしてくれました。

「実は今、高度な技術を持つ職人さんは、厳しい後継者不足に直面しています。大量生産型のもの、安価なものも多くありますが、数年後には、熟練の職人さんが手掛けた“本物”は手に入らなくなるかもしれません」(石田さん)

今、目の前にあるお人形と出会い、わが子のために選ぶことができるという事実は、実はこの時代だからこそ叶う、奇跡のような出会いなのかもしれません。

ひな人形のサイズはかつてないほどコンパクトになり、インテリアに溶け込むモダンな商品も登場しています。けれど、その小さな箱に込められた「娘の無事を祈る」という思いは、平安の昔から少しも変わっていません。

親が子を想い、子がその愛をいつか自覚する。その長い時間の物語を、ひな人形というひとつの「形」が繋いでくれる。

もし今、あなたがひな人形選びに迷っているなら、トレンドや相場、サイズの問題も大切ですが、最後はぜひ、ご自身の直感を信じてみてください。

“このお顔、なんだかあの子に似ているね”
“この着物の色、きっとあの子が大きくなっても好きだろうな”

その直感に導かれて選んだ人形が部屋を彩るよろこびは、冬が終わりを告げるたびに繰り返し訪れます。人形を飾るたびに家族の中に刻まれていく記憶は、お子さんにとっても、ママとパパにとっても、一生を支えるかけがえのない宝物になることでしょう。

来年も、再来年も、そのずっと先も。みなさまの節句が、幸せな記憶であふれますように。

 

取材協力
「人形の久月」浅草橋総本店

〒111-0052
東京都台東区柳橋1丁目20−4 久月ビル
創業天保六年。江戸の伝統を今に伝える人形の製造問屋

取材協力 「人形の久月」浅草橋総本店

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