小さなころから興味を持っていたことにとことん取り組んで、スポーツや芸術・学術の分野で活躍する人がいます。それほど特別な才能がなくても、興味のあることに打ち込んでいる人は生き生きとしていて、充実した人生を歩んでいるように見えます。
わが子が自分らしく能力を発揮するのに役立つなら、少しでも早く好きなことを見つけられるように手助けしたいと考えるママ・パパは少なくないでしょう。でもどうしたら、子どもが興味を持って取り組む「なにか」を見つけることができるのでしょうか。
今回のテーマは「子どもの興味を育てるためにママ・パパができること」。おなじみの慶應義塾大学医学部教授の高橋たかお先生がママ・パパの気持ちに寄り添ってわかりやすく解説してくださいます。聞き手は自らも2児のパパであるミキハウス出産準備サイトのスタッフIです。
「興味の種」は目には見えないけど、そこら中にぷかぷかと浮いているものです
I:今日は「子どもの興味のきっかけが生まれる時」をテーマにお話を伺いたいと思います。同じように育てていても、兄弟姉妹でも好きなことや興味を示すものが違うことはよくあることですね。そこで素朴な疑問です。子どもの興味の“種”はどこから来るものなのでしょうか?
高橋先生:子どもの興味がどこから芽生えるかは、大人たちが予測したり、コントロールしたりできることではないのでは。良いたとえとは言えませんが、それはまるでお風呂のカビのように、どこからやってきたのか分からないけれど、いつの間にか増殖するもの。いつの間にか子どもの中で大きくなり、態度や行動として見えるようになって初めて親はそれと気づくものなんですよね。多分その“種”は私たちの回りにぷかぷかと浮遊しているけれど、子どもたちにしか見えない。映画『となりのトトロ』に出てくる“まっくろくろすけ”みたいなもので、興味を持った子どもはそれを追っかけていくんだと思いますよ。
I:“まっくろくろすけ”はわかりやすいですね! つまり、本当は身近なところに子どもの興味の種はたくさんあるのに、大人には見えない……だからこそ、僕もこんな質問をしているのかもしれないですね(笑)。
高橋先生:そうかもしれませんね。子どもがなにかを好きになるきっかけは大人が想像するよりもいろいろな形で存在しているのではないでしょうか。大人でもそうですが、特に子どもは、出会ったとたんに「これだ!」と興味を持つことってありますよね。遊びに行った友だちの家で猫に出会い、そのかわいさに夢中になったりね。
I:子どもが夢中になれるものを発見して、目を輝かせているのを見ると、本当に幸せな気持ちになれます。
高橋先生:子どもの感性は非常に豊かで鋭いですから、放っておいても見つけてくるんですよ。そもそもなにかに夢中になる要素として「自分で見つけた」と思えることも大切。例をあげると(小さな子どもの話ではないですが)、おしゃれを自負する女の子たちは、「私がいいと感じて買ったら、流行り始めた」と思っているふしがある。流行を追っているのではなく、自分の好きな服を自分で選んで着ているんだと。実際は、お店に並んでいる服から選ぶわけですから、売る側の「今シーズンはこれ」という思惑に乗せられているというのが現実ですよね。でも彼女らは、あたかも自分が主導権を握って選んだと感じている。現実はそうではなくても、「自分で見つけた」と思い込めること……これは、子どもがなにかを好きになったり、夢中になったりする条件としてとても重要だと思います。