【専門家監修】
乳幼児教育 本当に大切な「学び」とは〈前編〉

2021.08.26

ミキハウス編集部

ママ・パパは「将来のために」と、小さなわが子に習い事をさせたり、知識を教えたりするもの。しかし、自身が教えていること、用意している習い事は、本当に乳幼児期の子どもにとって大切な能力を育てているのでしょうか?

今回お話を伺ったのは、お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科で「子ども学」を教える浜口順子教授。記事は2回に分けてお届けします。

浜口 順子(はまぐち・じゅんこ)先生のプロフィール

お茶の水女子大学家政学部児童学科卒 お茶の水女子大学大学院 家政学研究科修了 博士(人文科学)。研究キーワードは乳幼児期、保育、子ども観、倉橋惣三。雑誌「幼児の教育」(フルーベル館)編集主幹。お茶の水女子大学 基幹研究院(保育・児童学)教授。3児の母。

乳幼児期に育てたい、成長の基盤となる能力とは

乳幼児期に育てたい、成長の基盤となる能力とは

――今日は先生に子どもの能力の育て方を教えていただきたいと思います。熱心なご家庭では乳幼児期の早い段階から英語教室やピアノ教室、その他さまざまな習い事をさせていますね。諸説ありますが、「習い事は早ければ早いほどいい」という価値観がある程度、受け入れられている気もします。そこで先生にお聞きしたいのが、子どもが小学校入学前の幼児期に身につけるべき能力についてです。

浜口先生:親御さんは気になるところですよね。基本的には、就学前に読み書きや計算を「人より早くできるようにさせる」ことに、大きな意義はないのではないかと考えています。それよりも、乳幼児期にこそ身につけておくべき、子どもの育ちやその後の人生にも大きな影響を与える能力があります。それは共感力、好奇心、集中力、忍耐力など、感情や心の働きに関する能力。近年、この目に見えにくい能力が、成長の基盤となっているということが解明されて、教育界ばかりでなく経済界、政界など広く社会で注目されるようになっています。

乳幼児期に育てたい、成長の基盤となる能力とは

――乳幼児期に感情や心の働きに関する能力を育てると、その後の人生にも大きく役立つということですか?

浜口先生:ええ。子どもの内面で育つ能力はたくさんありますが、中でもすべての基本になるのは、人との関係を心地良く感じ、相手の気持ちを理解したり、受け止めたりする共感力です。相手が悲しんでいたら自分も悲しい気持ちになり、喜んでいたらうれしいと感じることは人間が成長する上で最も大切な能力。お母さんが困っていたら、赤ちゃんが心配そうな表情を浮かべることもあるぐらいですから、共感力は生まれてすぐに育ち始める能力と言ってもいいと思います。

――共感力を育てましょう、とはよく聞きますよね。

浜口先生:共感力が育って、人の気持ちを汲み取りながら他者に関わっていこうとすると、お友だちがやっていることは何だろう、どうして面白いんだろうという好奇心が湧いてくる。そして「自分もやりたい」という前向きな気持ちが芽生え、夢中になって楽しく遊ぶうちに集中することを覚えるわけです。遊びの中では自律・自制心も養われるし、コミュニケーション能力も育ちます。つまり共感力があるから周りの世界に興味を持ち、それが意欲や思いやりになっていくということです。

――さまざまな感情や心の働きに関する能力は、共感力を起点にそうやって連鎖的に広がっていくんですね。

浜口先生:ベースとなる共感力を育てるためには、一番身近な人と体をくっつけて、その人のそばにいれば安心できるという感情がわいてくる経験が大事。アタッチメントとか愛着形成とも呼ばれる深い関係性が、お母さん・お父さんや近くの人との間に育っていけば、共感力は自然と育ってきます。赤ちゃんを「かわいい」と抱き上げる、泣いていたら「さみしいのかな」と抱っこでなだめるというように、触れ合って、大人も共感性をもって愛情を伝えることがアタッチメントを強くするんです。「抱きすぎかも?」などと心配する必要はまずありません。

次のページ 経済学者ヘックマン教授が説いた「非認知能力」の重要性

この記事をシェアする

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

あなたへのおすすめ

人気の記事を見る

記事を探す

カテゴリから探す

キーワードから探す

妊娠期/月齢・年齢から探す