妊娠、出産を前にすると、世の中には“学校で習わなかったこと”がたくさんあることがわかります。そして、それは人それぞれで違う場合もあり、調べてもなかなか納得のいく答えにめぐりあわないことも…。
そこで、長年産婦人科医として、多くのお産に立ち会い、また不妊治療にかかわってきた、慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典医師にいろいろな相談にのっていただく「やすのり先生のなんでも相談室」を開設することにしました。
第1回は、「妊活中のお悩み」(女性編)に答えていただきました!
Q1:タイミング法を取り入れて妊活をして5ヶ月。まだ成果が出ません。そろそろクリニックに行ったほうがいいでしょうか?(36歳女性)
A1:タイミング法というのは、排卵日周辺の5日間くらいの間に性生活をもつということ。実は排卵日を特定するのはむずかしいので、自分では正しくやっているつもりでも実際はずれていたということも多いのです。
タイミング法を実施する前に、まず婦人体温計で基礎体温をつけていただきたいですね。体温の変化を見ることは、自分の月経周期を見ること。誰もが周期はいつも28日と決まっているわけではありませんから。3、4周期基礎体温をつけて、自分のリズムを把握。そして、低温最終日の前後2日間に起こるとされている排卵日の予測を立てましょう。
医師の指示のもとタイミング法を実施すると、それだけで妊娠する方も多いので、受診されるのもよいでしょうね。病院では血液検査によってホルモンの値を調べることもできるので、適切にアドバイスすることが可能です。また最近では、排卵日チェッカーなどと呼ばれる、排卵検査薬が市販されているので、そういったものを使うのもいいと思います。
卵子は短いもので12時間、長くても24時間しか生きられません。逆に、精子は女性の子宮、卵管で2日から5日ほど生きられるので、排卵よりも前に性生活をもつことも大切になってきます。排卵の2、3日前でも大丈夫です。
Q2:凍結した卵子は3年もつと聞きました。いま卵子を凍結して38歳のときにその卵子を使うのがいいのか、38歳のタイミングでそのときの卵子を使うのがいいのか、どちらがよいのでしょうか?(35歳女性)
A2:この方には、凍結するよりいま産んだほうがいいですよ、と申し上げたいですね。
凍結卵子は10年でも15年でも妊娠することができ、3年が限界だということはありません。ただ、受精させる前の未受精卵を凍結しておいても、だいたい10回に1回くらいしか妊娠にいたらないものなのです。これが精子と卵子を合わせた受精卵、つまり「胚」にしたものの凍結だと、妊娠の確率がグッと上がります。
病気のために卵巣をとらなくてはいけないから、その前に卵子を凍結しておくというケースもあると思いますが、質問者は医学的な卵子の凍結ではなく、社会的な卵子の凍結をしようかと迷っておられる。卵子を取り出すには80万円ほどのお金がかかり、1個につき1年間の保存料として約1万円の費用もかかります。
また高齢になるとそれだけ妊娠、出産のリスクも高まるので、35歳でお子さんが欲しいと考えておられるなら、それがその方の産み時なのではないかと思います。
Q3:妊活中に花粉症の薬を飲んだり、インフルエンザの予防接種を受けても問題ないでしょうか?(40歳女性)
A3:お薬に関してみなさん怖がることが多いようですが、そんなに心配する必要はありません。継続的に服用する抗てんかん薬や精神科から処方される薬には、赤ちゃんに対して影響のあるものもたしかにあります。その場合は、お医者さんに相談してチェックしてもらったほうがいいですね。ただ、ほとんどの場合は大丈夫。ましてや妊娠する前なら、怖がらなくてよいでしょう。
もし、それでも心配なら、排卵が終わって性生活をもって、妊娠したかもしれないという時期からはやめておくのがいいかもしれません。
インフルエンザのワクチンは妊娠前はもちろんのこと、妊娠初期でも後期でも打ったほうがいい。妊娠7、8ヶ月なら打ったワクチンが、お腹の中の赤ちゃんも守ることになりますから、かえっていいんですよ。
Q4:妊活したいと思って、基礎体温を測りはじめましたが、いつも三日坊主で終わってしまいます。最低、これだけはやっておきなさいということはありますか?(32歳女性)
A4:うーん、この方はまだ切迫感がないんでしょうね。30代前半ですから、三日坊主でもいいかもしれませんが、35歳を過ぎたら真剣に考えたほうがいいですよ。妊娠しようと本気で思って半年くらいたっても妊娠できなかったら、病院で検査をしたほうがいい。
やっぱり、最低でも基礎体温は測るべきでしょうね。そして、自分がちゃんと排卵しているかどうか確認しておいてください。毎月生理があるからといって、排卵しているとは限りませんからね。
――先生、今日はありがとうございました。連載初回でしたが、とてもためになるお話しばかりでした。今後も私たちの疑問にぜひお答えください。よろしくお願いします!