人工授精というのは、医師の手によって精子を子宮に入れること。カテーテルを使って、子宮腔内に挿入して行います。精子が少なかったり、精子の運動性が悪い男性の場合、卵管まで到達する精子の数も少なくなってしまうので、これを何とかしようと考えられたのがこの方法です。受精自体は体内で行われます。「人工授精」と聞くと、尻込みする方も多いかもしれませんが、受精のしくみに関しては、性生活による妊娠と何ら違いはありません。もしタイミング法などでなかなか成果が出ない場合には、早めに視野に入れてもいい方法と言えるでしょう。
精子は男性にマスターベーションしてもらって出た精液を使います。現在では、精液を洗浄して精子の数を濃縮した「調整精子」をつくり、これを子宮に戻すことをしています。
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自然妊娠のしくみを教わり、改めて妊娠、出産に至るにはさまざまなプロセスが必要なことがわかったのではないでしょうか。また、人工授精の「授」の字が使われた背景には、生殖補助医療の歴史がかかわっていたのですね。後編の「体外受精」「顕微授精」も、ぜひご覧ください。その違いをはっきりとわかっていただけることでしょう。