日本では、現在約27人に1人の子どもが体外受精によって誕生しています。不妊症で悩んでおられる方はたくさんいて、それが体外受精などの生殖補助医療(ART)の発達によって、解決することはたいへん意義のあることだと思います。
けれど、38歳以上の不妊は「社会的不妊」だと私は感じています。男性が不妊の原因であるケースも50%程度ありますが、女性が原因の場合、たとえばその方が25~30歳のときに子どもが欲しいと思っていたら、妊娠・出産できていただろうというケースがとても多いのです。
卵巣というのは、卵子をつくるところではなく、“卵子の貯蔵庫”なんです。20歳で排卵した卵は20年経った卵で、35歳で排卵したものは35年経っている卵。そういうことを今後は学校できちんと教えるようにしていかなくてはと思い、私自身も取り組んでいます。
体外受精などの不妊治療は、やめるタイミングを決めるのが非常に難しいもののようです。体外受精の成功率は、40歳を超えると10人に1人、45歳を超えると100人に1人となります。今は国や自治体による、費用の助成制度がありますが、治療にかかるお金は決して少ないものではありません。夫婦でよく話し合うことが大切だと思います。
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人工授精、体外受精、顕微授精には、このような違いがあったのですね。女性の晩婚化などにより、ますます生殖補助医療の需要は高まっています。ただ、社会が変わらなくてはいけない時期に来ているのもまた真実のよう。卵子老化に関する知識やライフプランの描き方など、子どもをもつことに対する教育の充実が求められている時代と言えそうです。