赤ちゃんをおなかの中から外の世界に出すためには、陣痛だけでは不十分です。「いきむ」ということが必要になります。少し難しい言葉でいうと「娩出(べんしゅつ)力」。腹圧をかけなくてはならないのです。
腹圧は、腹筋があるかどうかはあまり関係がありません。おなかの下のほうにいきまなくては、赤ちゃんは生まれてこないんですね。英語ではいきむことを“プッシュ”といいますが、赤ちゃんを下へ押し出すという感じです。
赤ちゃんは産道を通って生まれてきます。産道には骨産道と軟産道というものがあって、骨産道は骨盤の内側の骨の部分のことで、軟産道は子宮下部・子宮頸部・腟・外陰部の一部のことを指します。骨盤の形は生まれつきのものですが、お産が軽いかどうかに影響を及ぼします。また、軟産道は筋肉がやわらかく、伸展しやすい状態が理想的です。赤ちゃんが通りやすく安産につながりますから。

人間はほかの動物に比べて難産が起きやすくなっていますが、それは二足歩行するために骨盤が狭くなったことが原因です。
動物はみんな骨盤位、つまりお尻から生まれてきますよね。人間が頭から生まれてくるのはなぜだかわかりますか?人間の場合は頭が特に大きいからなのです。からだのいちばん大きい部分を使って、お母さんの子宮をどんどん開いて出てきます。赤ちゃんは産道でからだを旋回させて、誕生するのです。時にあごを引いたような状態に頭を下げたり、逆にあごを出して頭を上げたり。自然にそのような動きができるのが赤ちゃんなのです。とても神秘的だと思いませんか?