自分の出産を振り返る“バースレビュー”を通し、妊娠、出産を乗り越えた自分のがんばりを認め、自信を持つことで子育てに前向きに取り組む気持ちを育むマザーズペンクラブのワークショップ「バースレビュー・カフェ」。
後半も参加者のママたちの話を聞いていきます。
つらい経験をしたとしても、
その経験がもたらした「いいこと」を見つける!
ママたちの話が終わると、NAOKOさんは紙芝居風の漫画を披露します。彼女の作品である『助産師さん呼びましょうか』から抜粋したショートストーリーは、つわりで苦しむNAOKOさんをいたわろうとした夫が、夕食に○○○○を買ってきて焼きはじめるという内容。天然ボケキャラを感じさせる夫の表情と「さあ、私が夫を許せなかった○○○○ってなんでしょう」というNAOKOさんの質問に、ママたちからは笑いがこぼれ「お魚?」「ホルモン?」と回答が飛び出します。
NAOKO さん
「正解は、ぎょうざです! 夫は全く悪気がなく、何が私の気にさわったのか理解できなかったんです。でも私にとってはつらすぎる出来事でした」
ところが、このエピソードを漫画にしたところ「NAOKOさんのだんなさんってすごく楽しい人」という感想が多く寄せられたとか。同じ出来事が見方を変えると、こんなに違うとらえ方ができるんだとNAOKOさんは実感したそうです。
「2のステップでしていただきたいことは、いいこと探しです。モヤモヤの原因をポジティブにとらえ直してみましょう。みなさんの当時はつらかった出来事ですが、今になってみると結果的にいいことにつながっているという面はありませんか。シートの真ん中に一番いやだったりつらかったことを書き、その周りにどんないい変化があったか、書き出してみましょう」。
KUNIEさんが記入例のボードを見せると、これまでのやりとりで当時のことをどんどん思い出したママたちは、すぐにいいこと探しをスタート。2枚目のシートに書きをはじめました。
母乳育児がうまくいかなかったことがモヤモヤの種だったIさんは、「粉ミルクだから子どもを夫や母に簡単に預けることができました。飲んだ量がわかるのも安心だったし、腹持ちがよくて夜長く寝てくれるのはありがたかったです」とよかったことをあげました。
KUNIEさん
つわりがひどく、理解のない夫と出産後に離婚したというNさん。彼女が見つけたいいことは、「体調があまりに悪くて予定より早く実家に帰ったら、親にいたわってもらえて気が楽になり、つわりも治まりました。その間、夫との関係を冷静に考えることができて、離婚に踏み切る決心がつきました。今は早く離婚してよかったと思っています。それに自分がつわりで苦しんだので、マタニティマークをつけた人に優しくなれます」。
そして、最後のAさんの話には「いいな!」という声があがりました。Aさんの夫は妊娠中の妻を残して実家に帰ってしまったのですが、「家を出ていった夫に『荷物はどうするの?』と尋ねたら、『好きにしていい』と言われたんです。へそくりの場所を知っていたので、そのお金で贅沢なものを食べ歩きました。彼が大事にしていたけど、私が不要と思っていたものは全部捨てました。夫は帰ってきたときにいろんなものがなくなっているのを見て、がく然としていて、ちょっとスッキリしました。当時は寂しくてつらかったけど、今考えると夫がいなかった出産前のあの日々は、ひとりでのんびり過ごした最後の時間でもあったと思います。でも当時のことは、夫も私も本当に反省していて、2人目を授かったら胎教にいいように、仲良くしようねと話しています。一番よかったのは、夫も私も成長できたことだと思います」
「みなさんが今見つけたように、客観的になって思い返すと、つらかった出来事にも必ずポジティブな要素があるものです。それを書き出して何度も何度も読んでいるうちに、しんどかった記憶が少しずつよいものに上書きされ、悪いことばかりではなかったと思えるようになります。私も、ぎょうざを焼いた夫を当時は絶対に許せないと思っていましたが、面白おかしく漫画に描いて何度も読み返すうちに、今では“夫のおかげで面白い作品になってよかった”と感謝できるようになりました」というNAOKOさんの言葉にママたちは笑顔でうなずいていました。
はじめてのバースレビューで、最初は緊張していたママたちは、KUNIEさん、NAOKOさんの気さくで、思いやりあふれる進行と書く・話す・聞くというワークを体験するうちに、すっかり気分がほぐれたよう。2時間のワークショップを終え、みんな笑顔で会場を後にしました。