――ちなみに動画ではなく、写真を撮影するときに注意したいことは何かありますか?
井上: とにかく連写してください(笑)。いい表情が撮れそうだなというときに待ち構えていて、来た!と思ったら、タタタタタと連写。一発で撮るというのは、非常に難しいですね、目が半開きになっちゃってたり……。
――たしかに、そういうことはありますね(笑)。
井上: そうならないためにも、動画を撮影する感覚で、ここからここまでの動きを全部撮るという気持ちで連写してください。連続で撮ったものを後で見ると、こんな表情をしていたのかと驚くこともあると思います。たとえば、下を向いておもちゃで遊んでいた子が、上を向いてパッと目を開けた瞬間とか、パパ、ママが意識していなかった表情を捉えられる時があります。
――まだ小さい子を撮るときは、撮影場所が自宅ということも多いと思いますが、どんなことに気をつけたら素敵な写真になるでしょうか。あまり広い場所がないということも多いと思うのですが。
井上: ご自宅で、自然光がきれいだと思う場所はどの家庭にもきっとあると思います。明るすぎない、やさしい光が入る場所、そして時間帯を探してみてください。直射日光だとまぶしすぎて、濃い影が出てしまうので、レースのカーテンを1枚引いたりして調整すると、やさしい光が赤ちゃんに当たってかわいく見えると思います。
屋外なら、木の下などの木漏れ日が射すようなところもいいですね。光を柔らかくしてあげたほうが肌の質感もよく見えます。基本的に赤ちゃんが快適に過ごせる場所は、撮りやすい環境だといえると思いますね。
――快適な環境だと赤ちゃんの表情も柔らかくなりそうです。
井上: そうですね。そんな場所で興味のあるもの(おもちゃとか)を持たせて、夢中になっている瞬間を撮ってあげるといいですね。たとえばパパがカメラを構えて、ママが声をかけてあげると、今回のCMのようなドキュメンタリー風に、子どもが自然に楽しんでいる姿を撮りやすいでしょうね。
――ママとパパのコンビプレーが必要になってくると。
井上: そうですね。あと、おすすめのシチュエーションとしては食事の風景。赤ちゃんが食べ物をぐちゃぐちゃにしながら食べているのって、小さいときだけなので僕はすごくかわいいと思うんです。食べることって赤ちゃんにとって重要な仕事で、一生懸命な姿はそれだけで画になると思います。是非、ご自宅でベビーチェアに座らせて、実際に食べているところを撮影してみてください。
――最後に、たくさんの赤ちゃんを撮影し終わって、どんな感想を持たれたか教えてください。
井上: 僕にはまだ子どもがいないのですが、ずっと笑っていて、生まれつきハッピーというか、こっちまで思わず笑顔になっちゃう子って本当にいるんだなと思いました。かと思うと、気難しそうな子もいましたが、そんな子が少し笑っただけでも僕たちをハッピーな気分にさせてくれて……。今回のCMには「笑って泣いて愛されて、ただそれだけでキミはすばらしい」というコピーを入れたのですが、本当に赤ちゃんっているだけですばらしい存在。そんな存在そのものがすばらしい赤ちゃんの“二度とない瞬間”をぜひカメラに撮って、一生の宝物にしてください。
【プロフィール】
井上良(いのうえ・りょう)
映像ディレクター。1975年生まれ。イギリスの「THE LONDON FILM SCHOOL」で学ぶ。テレビCM、ウェブCMなどの制作に携わり、東京インタラクティブアワード、広告電通賞など受賞歴多数。