漫画家・鈴ノ木ユウさん×出産カメラマン・繁延あづささん対談
――出産、そして家族のものがたりを紡ぐということ<後編>

2016.11.10

ミキハウス編集部

わが子の誕生を目の当たりにして漫画『コウノドリ』を描きはじめた、漫画家の鈴ノ木ユウさんと、ライフワークとして「出産写真」を撮りつづけている写真家の繫延あづささん。同世代で、お子さんの年齢も近いお二人が、それぞれの作品への思いに加え、子育てのこと、家族のことについて語り合いました。今回はその後編です。

*   *   *

 

親にとって子どもは「先生」

――取材前の打ち合わせで、繁延さんが最近の『コウノドリ』が少し変わってきたとおっしゃっていましたよね。

繁延さん(以下、繁延):ええ。これは完全に一読者視点なのですが、なんとなく作品の雰囲気が変わってきているように思えるんですよね。

鈴ノ木さん(以下、鈴ノ木):そうですか。どんな風にですか?

繁延:医療者からの目線より、家族からの目線が強くなってきたというか、やさしい感じがする。物語の展開を重視するよりも、一人ひとりの気持ちを描かれているシーンが増えた気がしていました。そんなことはないですか?

鈴ノ木:どうだろう…プライベートの影響もあるかも。息子がだんだんしゃべられるようになって、いろんな顔を見せるようになったのも大きいかな。僕は子どもと二人で話をする時間をとても大切にしているし、そういう毎日のことに影響を受けているのかもしれないのですね。

繁延:わかります。私も、自分の出産直後の出産撮影と今の撮影では、目線がぜんぜん違います。何気ない子どもとの日々の会話や、子どもと過ごす時間の中で感じることが、私自身の目線になっている気がして。今の子育てが今の出産撮影への目線につながっていると思っています。

鈴ノ木:やっぱり、子どもを育てることで得るものは大きいです。僕は「子どもは先生」だと思っていますから。

繁延:子どもは先生…その通りですね。

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鈴ノ木:いっしょに仕事場まで手をつないで行って、そこから子どもが学校に行くんですけど、そこからが彼の時間で、ひたすら道端で草を取ったり…20分も前に学校に向かったはずなのに、遅刻したりするんですよ。その間、何してたのかって思いますけど、きっと彼にとってはその時間がすごく大切なのかもしれない。

繁延:大切なのでしょうね。

鈴ノ木:子どもってすごいなと毎日思いますよ。だから僕、「おまえ、すごいな」って、一日何回言うのかっていうくらい言っています(笑)。

繁延:どうしよう…私、そんなに言ってない(笑)。でも、子どもって本当にすごいですよ。息子が毎日「今日ね」といっていろいろと報告してくれるんですが、この間は「お風呂で70秒息を止められるようになったよ」と得意気に言ってきたんです。「お母さんは20秒も止められないよ」って返事をしたんですが、思えば私は長く止めようなんてチャレンジはしていません。でも子どもはいろんなことに毎日チャレンジしているわけです。小さい子が歩道のちょっと上がったところを上ったり、高いところからジャンプしたり、あれも限界への挑戦じゃないですか。

鈴ノ木:そうですね。大人になると、だんだん挑戦しなくなりますから、その前向きな気持ちには驚かされます。

繁延:と同時に、子どもがこんなにやっているから自分も何かしなきゃって思ってしまう。

鈴ノ木:子どもは精いっぱい、生きていますからね。そして宿題は精いっぱい、やりたくないと(笑)。

繁延:力を注ぐところがそこじゃないんですよね、きっと。

鈴ノ木:息子は漫画が好きで、とくに今は『ドラゴンボール』が好き。もうぎりぎりまで読んでいるんですよ。大好きだから、歯磨きをしながらとか、漫画を読みながら歩いてたりとか。そこまで好きなら別に怒ることないなって思うんだけど、うちの妻は、宿題は宿題でちゃんとやってほしいと思っているから、宿題もしないで漫画を読みふけっている息子を叱るわけです。

繁延:はい、その状況よくわかります。

鈴ノ木:でも僕は、結果的に子どもが自分の好きなものを選んでいき、それが彼の人生になると考えているんです。面白い本とか素晴らしい音楽とか、そういうものがあることを知らせること、触れるきっかけを与えることは親の仕事だろうと思っていますが、最終的に選ぶのは子ども自身。そして育つ。そこが子育てってすごく面白いなと思うところです。

繁延:ある意味、勝手に育っていく強さも子どもにはありますからね。

鈴ノ木:ええ。まぁ、本当は僕もがっつり子育てしたいんだけど、今はなかなか忙しくてそれができていないのが現状です。それでたまにやると“いいとこ取り”みたいになっちゃって(苦笑)。子育てはどうしてもお母さんが中心になるし、だからこそお母さんは大変な思いをするんですよね。

2-3

繁延:それを知っているからこそ、鈴ノ木さんの作品からは、お母さんの大変さに寄り添ってくれている視点が感じられるんですね。読むたびに、この人は女の人の味方だなって思いますし。

鈴ノ木:そうなんです、僕は女の人の味方なんですよ(笑)。女の人は子育てや家事などに追われていたりすると、やっぱり子どもをきつく怒ったりもするじゃないですか。僕、それを見るのが少しつらいので、妻が怒る前に自分が子どもを叱るようにしているんです。

繁延:優しいですね。

鈴ノ木:まぁ、でもなかなかうまくはいかなくて、自分がちょっと早いタイミングで怒るようにしているんですけど、確率的にだいたい4割しか「成功」しない。6割くらいは間に合わなくて、すでに妻が子どもを叱っているんですよ。そこの怒るタイミングが読みきれないことは多々あります(苦笑)。

繁延:私もいつも怒ってるなぁ。でも、本気で怒りたいわけじゃなくて怒っているセリフを言っているだけだなと気づくときもあります。無駄だと思うこともあるんですが…母親だからそうなのかな?

鈴ノ木:そうだと思いますよ。子どもが“間違えない”ように、母親を演じなきゃいけないんですよ。

繁延:母親をフォローしていただきまして、ありがとうございます(涙)。

 

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