現在進行形で妊活をしていたり、これから妊活を始めようとしていたりするプレママ・プレパパにとって、「みんなどのような妊活をしているんだろう?」「妊活にはいくらかかるんだろう?」といった疑問は尽きないものです。
ミキハウスでは過去2回、妊活の実態を知るためミキハウスベビークラブ会員のみなさまにアンケート調査を行ってきましたが、本年度も「妊活アンケート2017」として調査を実施。その結果、「94.6%の夫が妊活に協力的である」など、数々の“妊活のリアル”が浮かび上がって来ました。
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「妊活アンケート2017」でわかった妊活の現在地
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今回はこのアンケート結果を受けて、妊活をするに当たって心得なければならないこと、大切にすべきことは何か、慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医でもある吉村泰典先生にお話をお聞きしました。
妊活に対する意識は高まっている
——まずは今回のアンケート結果についての雑感をお聞かせください。
吉村先生:一番に驚いたことは、みなさんの妊活に対する意識の高さです。「妊活を始めたときに取り組んだことは?」という質問項目がありますが、86.2%の人が「基礎体温をつける」を挙げていますよね。これは自分の体のサイクルを知る上でとても大切で、かつ基本的なことです。これを9割近くの方が実施しているのは良いことだと思います。また、「葉酸などの栄養素を積極的にとる」と回答した人が66.0%いることにも驚きました。意外と知られていませんが、妊娠前から葉酸を摂取することは私たち医者も推奨していることで、これを6割以上の方が知っていて、実践しているのは素晴らしいことです。アンケートの回答者は意識が高い方がたまたま多かったのかもしれません。おそらく日本全体で考えると、ここまで高い数字は出ないとは思います。
——その他に気になったところはございますでしょうか?
吉村先生:「妊活をする上で参考にした情報」という項目で、8割近くの人がネットニュースやブログ、SNSといったインターネット上の情報と回答していますね。これは少し危ういな、と思いました。今や私たちの生活の中でインターネットの存在を無視することはできませんから、私も「インターネットを見るべきでない」とは言いません。もちろん、SNSなどを妊活中の心の拠り所にしている人もいるでしょう。しかし、インターネット上の情報は必ずしも正しい訳ではなく、中には全く誤ったものであるケースもあります。先ほどの「妊活を始めたときに取り組んだことは?」という項目に「産婦人科などを受診する」と回答した人が58.6%いましたが、それであればもっとかかりつけ医を情報源としてほしいですし、分からないことや困ったことがあれば医師にどんどん相談してほしいと思います。
妊活女性の「4大苦悩」とは
——アンケートの中には「妊活中につらかったこと、ストレスを感じたことはあったか」という項目では、「はい」と回答した人が71.8%に上ったという事実も浮かび上がって来ました。
吉村先生:私は妊活中の女性には「4大苦悩」があると考えています。ひとつは月経がきてしまって、妊娠していないことが分かった時。妊活中の女性なら誰しも、この時に落胆した経験はあるでしょう。ふたつ目は「赤ちゃんまだ?」と言われた時。特に職場の男性など、意外と配慮なく聞いている人は多いようです。そしてもう一つが仕事との両立の難しさを感じた時。この苦労は働きながら妊活をしている人は必ず抱いたことがあるはずです。妊活中は、病院に行かなければならない日は唐突にやってきます。例えば風邪や怪我で通院する時には「一週間後に来院してください」と告げられますから、それに合わせて有給休暇を取ったり早退したりできるでしょう。しかし妊活中では、排卵日が来て「明日か明後日、人工授精しましょう」と言われることは珍しくありません。
——職場で「妊活中なので今日は早退します」と言うことにも、勇気がいりそうです。
吉村先生:そうですよね。ですから、妊活をしていて仕事をやめる女性も少なくない。それが社会的にも問題になりつつあるんです。そして「4大苦悩」の最後のひとつが経済的負担を感じた時でしょう。「人工授精をする」と一言に言っても、人工授精を受けるだけではなくて、それまでに2〜3回病院に通う必要もありますから、その都度お金はかかります。また、体外受精をすると30〜60万円はかかります。国や地方自治体からの助成金制度もありますが、これを積極的に使っても決して安いものではありません。
未来の妊活はどうなる?
——では最後に、これからの妊活についてもお話をお聞きしたいです。
吉村先生:人工授精や体外受精といった治療は、技術が向上すればこれからの女性の生き方の選択肢を増やす一助にはなるかもしれません。海外、ことアメリカでは、若い女性が自分の意思で卵子の凍結をすることは少なくないのです。これはどういうことか言いますと、例えば35歳くらいの女性でパートナーがいなかったり、まだ仕事に専念したいと思っていて、かつ将来は子どもが欲しいという人がいるとします。すると若いうちに卵子を凍結しておいて、いざ妊娠したいという時にその卵子を受精させて体内に戻して、妊娠するんです。私はこのことを「社会的卵子凍結」と呼んでいまして、もちろん自然妊娠に比べて流産の確率は上がったり、ひとつの卵子を一年間凍結しておくのに1万円はかかったりと、金銭的な余裕も必要です。しかし、これは日本でも女性のキャリアの在り方を変える手段になり得るかもしれませんし、卵子凍結の技術力が上がれば流産の確率も下がるでしょう。
——なるほど。新しい妊活の未来と言えそうですね。
吉村先生:そうですね。しかし、それ以上に今の日本に求められているのは、みんなで妊活を応援する社会の環境づくりでしょう。欧米圏では妊活をしていることを表明している女性はたくさんいますが、国内ではまだまだ妊活中であることは言いづらい空気がありますし、制度も十分とは言えません。先ほどお伝えした妊活の「4大苦悩」のように、妊活はストレスの多いもの。子どもが授かってやめることができればいいですが、中には残念ながら妊娠できず、自分の意思でやめることになる人もいます。もし結果的に子どもが授からなかったとしても、女性が「妊活をしてよかった」「夫婦の絆が深まった」と思えるような社会の環境づくりが不可欠なのではないでしょうか。もちろんそれは一朝一夕でできることではありませんが、まずは職場や夫といった身近な人たちが積極的に妊活中の女性をサポートすることがとても大切なですね。