連載「高橋たかお先生のなんでも相談室」 
胎教、早期教育…
子ども時代の「環境要因‐教育」について

「胎児のときから子育てが始まっている」は事実

K:胎児のときに音楽を聞かせるお母さんも多いと思いますが、胎児はどれくらい聞こえているのでしょうか?

高橋先生:残念ながらほとんど聞こえていません。お母さんの心拍は聞こえていますが。モーツァルトを聞こうが工事現場にいようが、変わらないということです。

K:えーっ、そうなんですか!今回、驚きが多すぎます…。

高橋先生:ただ、「いい音楽だなあ、この音楽を聴くと気持ちいいなあ」など、音楽を聴いてリラックスしているお母さんの気持ちが、何らかの形で赤ちゃんに伝わっているとは思います。つまりどんな音楽を聞くかではなく、お腹の中の赤ちゃんに向かって「お母さんはこの歌が好きなのよ」「一緒に聞いてね」と語りかけることが大切だということです。赤ちゃんがお腹にいるときから、そのようなコミュニケーションを取っていると、生まれてきた際、「やあ、よく出てきたね」というところから親子の関係が始まりますよね。妊娠中にお腹の赤ちゃんに興味が持てないお母さんやお父さんの場合には、残念なことですが、生まれてきてから例えば虐待をしてしまうような不幸なことも起こりかねないのです。

K:音楽そのものが直接赤ちゃんの発育に働きかけることはないけれど、音楽を通じて親子のコミュニケーションを取りながら生まれてきた子は、愛情のあるスタートがきれるということなんですね。

高橋先生:はい。そういう意味では、子育ては胎児の時から始まっているというのは事実です。話は変わりますが、お子さんに生まれつきの病気があったり、アレルギー体質だったりすると、「妊娠中に無理して仕事を続けていたせいかもしれない」とか「妊娠中に飛行機に乗って里帰りしたせいだ」と、まるでお母さんの責任であるかのようにお母さんご本人も周りも思うかもしれないけれど、そんなことは全くないです。赤ちゃんはお母さんとお父さんから半分ずつもらった遺伝子でしっかり守られています。堅牢な金庫の中ですごすようなものなのです。

K:不幸にして流産になったり、子宮の中で発育遅滞が起こったりするのもお母さんのせいではないんですね。

高橋先生:そうです。多くの場合は、お母さんのせいでも、産科の先生のせいでもなくて、赤ちゃんが持って生まれた運命によってそうなってしまうだけなのです。

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