ところで最近では、デジタルデバイスで閲覧する絵本アプリも登場しています。ナレーターがお話を読みあげてくれたり、絵柄が動いたりと仕掛けも色々あり、絵本と比べて持ち運びも便利なことから利用されている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
気になるのは、これからアプリ絵本が、従来の紙の絵本の代わりになりえるのかということ。
野澤先生は「そのあたりは私自身が最近研究を始めたところなので、まだはっきりとしたことを言える立場ではございませんが…」と述べられた上で、研究の進んでいる海外の事例についてご紹介いただきました。
「絵本とアプリの比較についての研究は、海外では非常に進んでおり、そこで言われているのは、アプリの様々な仕掛けは子どもにとって刺激が多すぎて、ストーリーを理解するのを妨げることがあるということです。幼い子どもは複数に同時に注意を向けることが難しいため、飛び出す画像などがあるとそこに集中してしまいお話を追えなくなってしまうのです」
子どもが1〜2歳までは、ストーリーを理解すること自体がまだ十分にできない状態であるそう。そうした状態の子どもに、デジタル絵本特有の“仕掛け”が入ると、子どもの視線がそちらに向いてしまい、本来の絵本体験とは異なってしまうというのです。
「(従来の)絵本は、子どもたちが自分で面白さを発見できる余地が大きい。余地が大きいから大人がコメントをしたり、(そこに子どもが複数いたら)子ども同士でのやり取りが発生したりと、コミュニケーションがどんどん拡大していくのです。さらに(事前にプログラミングされた)ナレーションで淡々に進むデジタル絵本と違い、紙の絵本は人間が読み聞かせをするので子どもの関心に応じて読むスピードを変えたり、強調したり、あるいは読むのをしばしやめて子どもたちの様子を見守ったりすることもできる。とてもインタラクティブ(双方向/対話的)なんですね。もちろんデジタルの絵本が今後進化していけば変わってくることだとは思いますが、現状私が把握している範囲で言うと、まだまだ紙の絵本とデジタルのそれとでは大きな差があると思います」