《絵本特集 第3弾》 書店員さんが選ぶ「今、子どもに本当に読んであげたい絵本」

《絵本特集 第3弾》
書店員さんが選ぶ
「今、子どもに本当に読んであげたい絵本」

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絵本の読み聞かせに関する研究者や“読み聞かせのプロ”に訊ねた本企画。読み聞かせが子どもの成長を促し、親子のコミュニケーションをより深いものにすることを学びましたが、最終回となる今回は、多くの本を知り尽くした書店員さんに取材。“本のプロ”とも言えるみなさんに、今子どもに読み聞かせしたい絵本について伺いました!

今回お話を伺うのはタイプの違う3人の書店員のみなさん。いずれも本が大好きで、本のことをよく知る“本のプロ”の方々です。ご自身のお子さんに実際に読み聞かせをしている本を紹介してくれる方。ご自身の幼少時にお母さまから読み聞かせしてもらった名作を紹介してくれる方。そして「定番の名作は紹介されていると思うから、面白いものを」と変わり種ながらも、読み応えのある作品を紹介してくれる方。三者三様の意見が集まったので、ぜひ参考にしてくださいね。

 

まず、一人目に紹介してくれる書店員さんは、八重洲ブックセンター京急百貨店上大岡店の平井真実さんです。

《プロフィール》

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八重洲ブックセンター京急百貨店上大岡店 平井真実(ひらい まみ)さん

幼い頃から読書家で、小学校低学年から『ドリトル先生ものがたり』(岩波書店)シリーズなど、文字が多めの児童書に親しんでいた平井さん。その背景には、お母さまによる絵本の読み聞かせ体験があるそう。お母さまは、近所の図書館で絵本や紙芝居を借りてきて、度々読み聞かせてくれていたと言います。読書家として育った平井さんですが、そんな彼女にとって思い出深い絵本とは?

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「物心ついてから覚えている絵本は、圧倒的に『ねないこ だれだ』(福音館書店 せなけいこ 作)ですね。夜中はおばけの時間だから、子どもは早く寝なさいという内容ですが、結末が本当に怖くって。最初に読んでもらったときに、布団をかぶって眠った覚えがあります。子どもの心に深く入っていく作品だと思いますが、私は怖いだけでなく、見えない世界へのイマジネーションを広げてくれるものだと感じました。その後、成長してフィクションを読むようになる良いきっかけになったと思います」(平井さん)

子どもにとって少々怖い内容でも、パパとママが優しく読みあげてくれるのであれば印象はまた違ってくるのかもしれません。実際、平井さんはこうした“インパクトのある本”が良い読書体験となり得たと振り返ります。

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そしてもう一冊、親子で一緒に読むのにオススメの絵本も教えてくださいました。
「私が大人になってから知ったもので『バムとケロ』(文渓堂 島田ゆか 作)という絵本があります。犬のバムとかえるのケロの2匹が、おうちでくつろいだり、お出かけしたりするお話なのですが、絵が細かく書き込まれていて、見飽きることがありません。主人公たちの他にも、“おじぎちゃん”という三本耳の不思議なうさぎなどのキャラクターも絵の中に隠れているのもポイント。本編と並行して絵だけで進行するおじぎちゃんのストーリーを追ったり、子どもの方が先におじぎちゃんを見つけたりと楽しさ色々で、親子でとても盛りあがります」(平井さん)

シリーズ第1作『バムとケロのにちようび』の初版は1994年ですが、現在どこの書店に行っても置かれていることの多い大人気作なのだとか。このように一冊が長く愛される絵本の世界。

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店頭でも、初版から50年が経った『いない いない ばあ』(童心社 松谷みよ子 作/瀬川康男 絵)が根強く支持されていると平井さん。

あらためて読み返してみると、最後のページに登場する赤ちゃんが、男の子とも女の子ともみえて、読み聞かせをする子どもの性別に合わせるような配慮を感じるなど、発見が多いと話してくれました。

(八重洲ブックセンターHP: http://www.yaesu-book.co.jp/

 

2人目にご紹介いただくのは、 芳林堂書店東長崎店の飯田和之さんです。

《プロフィール》

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芳林堂書店東長崎店 飯田和之(いいだ かずゆき)さん
大学受験時代に習慣になった読書がきっかけで、現在の会社に入り書店員になったという飯田さん。東野圭吾作品などの推理小説好きの、2歳の女の子のパパです。趣味が多く、好きなものはトコトン突き詰める性格とのことですが、本にハマったのは意外と遅咲き。

書店員さんといえば、幼い頃から本に親しんでいそうなイメージですが、「僕は遅咲きの本読みなんで」と謙遜される飯田さん。果たしてそんな飯田さんの選ぶ絵本とは一体どんなものなのでしょうか?

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『もこ もこもこ』(文研出版  谷川俊太郎 作 / 元永定正 絵)は、2歳の娘に何度も繰り返して読み聞かせています。水平線に突起物がいきなりニョキニョキ生えてきたりする絵がとってもユーモラスですよね。100万部を超える大々ベストセラーですが、個人的には言葉を書いている詩人の谷川俊太郎さんが、私が通っていた中学校の校歌の歌詞を書かれていたりして愛着があり、『谷川さんの絵本』ということに注目して手に取りました。娘は舐めたり、ガジガジ噛んだりするほどこの絵本が大好き(笑)。自分に接点がある絵本を、子どもが喜んでくれるのは感慨深いです」(飯田さん)

特に子どもが幼い頃の絵本の選択は、親に一任されているようなもの。口コミを参考にする以外には、自分の過去に共通点があるなど、パパとママ自身が愛着の持てる絵本を読み聞かせするのもいいかもしれません。

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『ぐりとぐら』(福音館書店  中川李枝子 作 / 大村百合子 絵)のシリーズも昔からのベストセラーですが、森の中でカステラを作る場面などは大人心にも美味しそうですよね。」

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『からすのパンやさん』(偕成社 かこさとし 作)シリーズも、見開きに色んなかたちの美味しそうなパンがいっぱい。読み聞かせすると娘は、『パン、パーン!』と言って大興奮しています」(飯田さん)

食べものなどをテーマにした絵本は子どもが夢中になるのではと話してくださった飯田さん。

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対象年齢は少し上がりますが、売り場では『おしりたんてい』(ポプラ社 トロル 作)も人気なのだそう。

「においますね」が口ぐせの紳士が主人公のユーモラスなお話ですが、全体の雰囲気はとってもお洒落。子どもたちの興味を惹きそうなモチーフだけど上品さが保たれている絵本というとことが、今選ばれている理由かもしれません。

(芳林堂書店HP: http://www.horindo.co.jp/

 

そして最後に登場するのは、東京・下北沢にある「本屋B&B」に勤める中川紀彦さんです。

《プロフィール》

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本屋B&Bスタッフ 中川紀彦(なかがわ のりひこ)さん
東京・下北沢の「本屋B&B」でイベント企画を担当している中川さん。もともと親も本好きで本に囲まれて育ったせいか、本がある生活が当たり前だったのだとか。今は、11歳と5歳の二人のパパで、方向性は違えども、二人とも着実に本好きに育っているそうです。

下北沢の「本屋B&B」といえば、個性的な品揃えで知られていますが、一体どんな本をオススメしてくれるのでしょうか?

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『すてきな三にんぐみ』(偕成社 トミー=アンゲラー 作)は、娘が小さいころに、よく読んで聞かせていました。大盗賊が全国の孤児を集めて、お城をプレゼントするという、予想を裏切る展開が特徴的です。ストーリーはもちろん面白いのですが、見所は、とにかく絵がスタイリッシュなこと。どのページもポスターにして飾りたいほどです」(中川さん)

見た目の面白さというのも、絵本の大事な要素だと、この本を見るたびに思うという中川さん。その後、パパ譲りの大の読書家に育ったという娘さん。こうした「見て楽しめる本」を幼少期から読み聞かせしてもらったことも大きかったのかもしれませんね。

続いて中川さんが紹介してくれた本はこちら。

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『100かいだてのいえ』(偕成社 岩井俊雄 作)は、子どもたちの大のお気に入りで、『ちか100かいだてのいえ』『うみの100かいだてのいえ』シリーズもすべて買いました。なにより大人も読んでいて楽しめます。本を縦に置いて、下から上に(ちかとうみはその逆)にめくっていくのは、通常とは違ったダイナミックな読書体験ですね。どのページも細かいところまで書き込んであるので、毎回発見があるのもポイント。最終ページに到達するまでのドキドキハラハラは、オチが分かっていても親子同時に冒険している気になります」(中川さん)

親が読んで楽しいものを読むのがいいかもしれません、と語る中川さん。絵本を楽しそうに読むパパやママの雰囲気も、子どもは感じ取ってくれるのかもしれませんね。

そして最後の1冊は「定番かもしれませんが…」と、言いながらオススメしてくれました。

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「1965年に出版された名作『ちいさいおうち』(岩波書店 バージニア・リー・バートン 作)。 静かな田舎に立つおうちが経験する時間の流れが、本当に繊細なタッチで描かれていて、眺めているだけで幸せな気分になる一冊です。 偶然ですが、今回ご紹介した三冊はすべて『家』にまつわるお話でした。これらの三冊を読んできた娘は、読書も家も大好きな子どもに育っています。一方、息子は、絵本よりも図鑑や国旗の本を好んで読んでいたせいか、電車や魚、国旗や首都に精通した変わった子どもに育っています(笑)。鶏が先か卵が先かじゃありませんが、幼少期の読書体験と子どもの性格って、なにか関連性があるような気もしています」(中川さん)

※紹介した本は在庫がない場合もあります
(「本屋B&B」HP:http://bookandbeer.com/

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3人の書店員さんの選んだ絵本はいかがでしたか? おなじみの絵本もそうではない絵本も、それぞれの面白がり方、楽しみ方にこそ、本のプロとしての独自性が表れていたのではないでしょうか。どの方も「親が読んで楽しいものを読んであげる」ことを大切にされているという共通点がありましたが、絵本を楽しんで読むパパやママの気持ちを、子どもは感じ取るのかもしれませんね。お子さまに絵本を読み聞かせる際のヒントにしていただけたらと思います。

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