絵本の読み聞かせの効能について東京大学の研究者に話を伺った前回(https://baby.mikihouse.co.jp/information/post-8153.html)。読み聞かせは、子どもの言語習得や読解力の育成はもちろん、親と子のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているということが分かりました。
特集第2弾は、絵本の読み聞かせを職業とされている“プロ”にインタビュー。子どもたちのリアルな反応を知っている方に、特に乳幼児期における「読み聞かせのコツ」をお聞きしました。プロの実演動画も掲載しているので、ご家庭での読み聞かせのヒントにぜひご活用ください!
服のサイズが変わるように”ぴったり”の絵本も変わる
今回、お話を伺うのは「聞かせ屋」のけいたろうさん。元ストリートミュージシャンで、保育士経験もあるプロの絵本読みです。夜の路上で大人に絵本を読み始めたのをきっかけに、現在は子どもへの読み聞かせ、絵本講座、保育者研修などを全国各地で開催されています。ご自身も一児の娘さんのパパであり、公私ともに絵本の読み聞かせの現場を熟知されています。
そんなけいたろうさんのもとには全国のパパやママから日々、絵本の読み聞かせについての相談が届くのだそう。
中でも多いのが、“ブックスタート”と呼ばれる、赤ちゃんと絵本の最初の接触の時期の「うちの子、どうやら絵本にまったく関心がないみたいなんです」という親御さんのお悩み。親としては絵本が好きな子に育ってほしいという強い思いがあるのに、赤ちゃんが反応を示さないことを残念に感じているようです。
それに対して、けいたろうさんは「その絵本自体が、赤ちゃん向けではない可能性があります」と指摘します。
「子どもが大きくなるにつれて服のサイズを変えるように、 “ぴったりの”絵本も変わっていきます。しっかりとした物語を楽しめるようになるのは、3〜4歳ぐらいから。それ以前の乳児期の赤ちゃんにとって絵本は、親とのコミュニケーションツールとしての側面が大きいと思います。ですから、『赤ちゃん絵本』と呼ばれている乳児を対象にした絵本は、物語というよりも、親と子の触れ合いが生まれるような絵本が多いんですよね。小さなお子さんは、まずはこういった赤ちゃん絵本から、本というものに親しんでいってほしいと思います」
うちの子は絵本が好きじゃないのではないか。そう心配されるママやパパもいるそうですが、そうした場合には、「『赤ちゃん絵本』を試してみられたら、また違う反応が返ってくるかもしれませんよ」とけいたろうさんは言います。
「赤ちゃん絵本はいろいろなところから出ていますが、たとえば『0歳からのあかちゃん絵本』というシリーズに、目を覆っている猫が表紙の『だあれだ だれだ?』(ポプラ社)という作品があります。有名な『いないいないばあ』(童心社)とお話の構造は似ていますが、こちらの方がよりシンプル。大人が読むと“たったこれだけ?”って思われるかもしれませんが、赤ちゃんに読むと反応がいい絵本なんです。こういう赤ちゃん絵本を読み聞かせすることで、まずは親子のコミュニケーションを深めていってほしいですね」
小さな赤ちゃんへの読み聞かせで大切なのは選書だけでなく、読み聞かせ方も同じ。例えば、先に挙げた『だあれだ だれだ?』には「だあれだ だれだ? ねこさんだよ。ねこさん おさかな だあいすき。あむ あむ あむ。」というような一節があります。こうした箇所を例に、けいたろうさんはこう説明します。
「ここの一節は、ふつうに読み上げるだけでも、言葉のリズムが良くて楽しいですよね。赤ちゃん絵本は、リズムの良い絵本が多くあるので、(絵本を)読んであげるというよりも歌を唄ってあげるという意識で臨むのがいいかもしれません」
けいたろうさんによると、人気の高い「赤ちゃん絵本」には、必ず “おいしい音”(=赤ちゃんが喜ぶような音)が入っているのだそうです。「まみむめも」、「パピプペポ」、「バビブベボ」のように上下の唇をくっつけて発する音がそれにあたります。
「『まんまん ぱっ』(童心社)は1歳9ヶ月のうちの娘も大好きな絵本なのですが、おいしい音がたくさん含まれています。また、『いろいろ ばあ』(えほんの社)は色への興味を促しながら、同時に『ばぁ!』、『ぶにゅ!』、『ぷくーっ』など、これもおいしい音がいっぱいです。言葉の意味は分からなくても、親子で一緒に音や言葉のシャワーを浴びるというような感覚で読み聞かせするのがいいのではないでしょうか」