《絵本特集 第1弾》 東大の研究者に聞いた「読み聞かせ」、ホントの話

《絵本特集 第1弾》
東大の研究者に聞いた「読み聞かせ」、ホントの話

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親が子どもに本を読んであげる「読み聞かせ」。特に、幼少期においては絵本の読み聞かせについて様々な心理学的研究が行われ、その効果・効能が報告されています。一般的にも、幼少期からの読み聞かせ習慣について重要だと感じられている方は多いと思いますが、具体的にどういう効果があるのかは、そこまでご存知ないのではないでしょうか。

そこで今回、出産準備サイトでは「読み聞かせ特集」を3回に渡ってお送りいたします。まず第1回目は読み聞かせについて研究をされている先生に、子どもの創造力を伸ばす絵本の読み方、さらに年齢別のおすすめ絵本などをお聞きしました。

 

まずは“読み聞かせ”の効能について研究者の方にお聞きしました

今回、お話を伺うのは東京大学・発達保育実践政策学センターの野澤祥子先生です。野澤先生は発達心理学と保育学をご専門に、乳幼児期の子どもたちの発達や、それを支える保護者の援助や保育環境について研究されています。

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幼児教育の世界で、絵本の読み聞かせは「子どもたちの想像力や言葉に対する感覚を豊かに育むものとして捉えられています」と語る野澤先生。

なぜ、読み聞かせは言葉の発達を促す役割を果たすのでしょうか。先生は「共同注意」という言葉を使って、こう説明してくれました。

「絵本というある種、限られた世界の中で読み聞かせをしていると、親と子で同じものを見ることになります。たとえば子どもが絵本の中のある箇所を指差したとします。それに対して、親が『これは○○だね』といったやり取りが生じますよね。こうした行為は『共同注意』といいますが、絵本の読み聞かせでは、こうしたやり取り(認識や気持ちの共有)を通じて言葉を学びます。さらに世界を把握する助けになると考えられます。」

野澤先生は以前、1歳前から3歳ぐらいまでの子どもたちの読み聞かせについて調査を実施されました。年齢に応じて反応は変わっていくそうですが、1歳であっても絵本の中で自分の知っているものを指差すという行動がみられるそうです。

たとえば、お話に長靴が出てきたときに、ある子どもが『私の長靴ここにあるよ!』と自分の長靴を指差す場面がみられました。こうして、子どもたちは絵本の世界と自分の周囲とをつなぎながら、世界への認識をどんどん広げていくのです。また読み聞かせは、親と子のコミュニケーションツールという意味でも重要な役割を果たします。絵本を介して同じ経験を共有することで、コミュニケーションの濃度が高まるのです」

絵本の読み聞かせにとって大切なこと。絵本の内容や読んだ冊数に目が行きがちですが、その行為を通じて、親と子で経験や気持ちを共有することも非常に大切なことのようです。

デジタルデバイスによる読み聞かせについても聞いてみました

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ところで最近では、デジタルデバイスで閲覧する絵本アプリも登場しています。ナレーターがお話を読みあげてくれたり、絵柄が動いたりと仕掛けも色々あり、絵本と比べて持ち運びも便利なことから利用されている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

気になるのは、これからアプリ絵本が、従来の紙の絵本の代わりになりえるのかということ。

野澤先生は「そのあたりは私自身が最近研究を始めたところなので、まだはっきりとしたことを言える立場ではございませんが…」と述べられた上で、研究の進んでいる海外の事例についてご紹介いただきました。

「絵本とアプリの比較についての研究は、海外では非常に進んでおり、そこで言われているのは、アプリの様々な仕掛けは子どもにとって刺激が多すぎて、ストーリーを理解するのを妨げることがあるということです。幼い子どもは複数に同時に注意を向けることが難しいため、飛び出す画像などがあるとそこに集中してしまいお話を追えなくなってしまうのです」

子どもが1〜2歳までは、ストーリーを理解すること自体がまだ十分にできない状態であるそう。そうした状態の子どもに、デジタル絵本特有の“仕掛け”が入ると、子どもの視線がそちらに向いてしまい、本来の絵本体験とは異なってしまうというのです。

「(従来の)絵本は、子どもたちが自分で面白さを発見できる余地が大きい。余地が大きいから大人がコメントをしたり、(そこに子どもが複数いたら)子ども同士でのやり取りが発生したりと、コミュニケーションがどんどん拡大していくのです。さらに(事前にプログラミングされた)ナレーションで淡々に進むデジタル絵本と違い、紙の絵本は人間が読み聞かせをするので子どもの関心に応じて読むスピードを変えたり、強調したり、あるいは読むのをしばしやめて子どもたちの様子を見守ったりすることもできる。とてもインタラクティブ(双方向/対話的)なんですね。もちろんデジタルの絵本が今後進化していけば変わってくることだとは思いますが、現状私が把握している範囲で言うと、まだまだ紙の絵本とデジタルのそれとでは大きな差があると思います」

 

【年齢別】 絵本の読み聞かせポイント

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絵本の読み聞かせが、言語能力をはじめとした子どもの成長や親子のコミュニケーションに大きく貢献することがよく分かりましたが、最後に子どもの年齢に応じて、絵本の読み聞かせのアドバイスや注意すべきポイントを野澤先生に教えていただきました。

■〜1歳 【ママとパパが読みたい絵本でOK】
「自治体によっては生後4ヶ月頃から、『ブックスタート』という健診などの際に絵本を配布する取り組みをしているところがあります。ただ、1歳までの時期は絵本というより“モノ”として認識している部分も大きいです。ですから、パパ・ママがが読み聞かせしていて心地いい絵本を選ぶのはいかがでしょうか。乳幼児にとっては両親の声がけ自体に安心するものですから。それからこの時期の赤ちゃんは、絵本を口に入れようとする子もたくさんいますので、くれぐれも誤飲には注意しましょう」

■1〜2歳 【覚えやすい言葉が羅列された本を】
「1歳後半頃から『語彙爆発』といって、言葉のボキャブラリーが一気に増える時期に入ります。ここで果物や動物などの絵本を読んであげると、子どもが興味をもって、楽しんで読めると思います。ただ、まだまだストーリーを理解することは難しい時期。例えば「だるまさんシリーズ」(ブロンズ新社)のように、繰り返し表現などシンプルな構成のものがおすすめです。思わず真似をしたくなるポーズや、「どてっ」「ぺこっ」「ぎゅっ」といった擬音語が何度も出てくることで、話の意味は完全には分からなくても言葉の楽しさや面白さに触れ、言葉との距離が縮まっていくと思います」

■幼児期前半(2〜3歳) 【簡単なストーリーのある本が読めるように】
「だんだんとストーリーが理解できるようになり始める時期。同時に、一般的に『いやいや期』といって子どもの自我が芽生える頃でもあります。たとえば、電車や食べ物など、その子の興味の方向性に沿った絵本や、簡単なストーリーのある絵本を選んであげると楽しめるでしょう。生活への関心も芽生えてきていますから、料理やお着替え、トイレトレーニングなどが描かれる絵本もおすすめ。絵本に登場するキャラクターを真似したり、自分と比較してみたりして『私はちゃんとできるよ!』と主張する子も出てきます」

■幼児期後半(3歳〜) 【主人公に感情移入できるようにも】
「3歳頃になると友だちとの人間関係についても理解し始めます。そして4歳以降になると自分とは異なる意思を持った他者についての想像力がぐんと深まっていきます。同時にストーリーへの理解力も増していますから、主人公に感情移入して絵本を読むことができるようになってきます。『はじめてのおつかい』(福音館書店)のように、自分と同年代の子どもが様々な挑戦をする様子を、自分ごとのようにハラハラドキドキ見守るようになるのです。他者への思いやりに目覚めるような絵本を読んであげるのもいいかもしれません」

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以上に記したことは全体的な傾向で、特に幼少期においての読書傾向は個人差が大きいのは言うまでもありません。中には全然絵本に興味を持たないお子さんもいると思います。野澤先生は「子どもが『絵本を読みたい』と意思表示したときが、その子にとって絵本が必要な時期です。1歳や2歳で絵本に興味を示さない子も少なくありませんが、そういう子でも3歳くらいになれば次第に興味を持つようになります」と言います。また世の中には名作・名著と呼ばれる絵本もありますが、何より大切なことは「その子が好む絵本がその子にとって必要な絵本」(野澤先生)だとも。

今回野澤先生には、絵本の読み聞かせは、子どもの言語習得や理解力、他者への想像力を育むのに効果的な習慣であり、親と子のコミュニケーションツールという機能もあるということを教えていただきました。

続いて特集第2弾は、読み聞かせを職業とされている“プロ”の方にインタビュー。研究者の方とは違った視点のお話をお伺いすることができたので、そちらもあわせてお読みください。

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