好奇心いっぱいの赤ちゃんにはリスクがつきもの
救急医からみた「日常生活で気をつけるべきこと」とは

2018.01.18

ミキハウス編集部

まだ寝返りできない赤ちゃんでも、気が付くとベビーベッドの中でさっきとは違う場所にいて、ママ・パパをびっくりさせることがあります。にぎることができるようになると、手が届くものは何でも引っ張り、口に入れてしまうなんてことは日常茶飯事。赤ちゃんは、大人が予測できないことをするものです。

身の回りのモノや出来事に興味を持つのは、赤ちゃんが成長していくために大切なことですが、まだ自分の意思で自由に動いたり、危険を察知することもできない赤ちゃんに、ママ・パパはハラハラしてしまいますね。赤ちゃんのために安全な環境を確保するには、どうしたらいいのでしょうか。

国内最大規模の小児・周産期・母性医療のための高度専門医療センターである国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)で、救急診療科の医長として子どもたちの治療にあたっている植松悟子先生に、赤ちゃんのけがの原因とママ・パパが気をつけるべきことについて伺いました。

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家の中でけがをさせないために、ママ・パパができること

国立成育医療研究センターの救急センター(小児ER)は、1年365日24時間体制で、病気やけがの子どもたちを診察しています。小児ERに来院する子どもたちは年間約3万人。そのうち、外傷で受診する子どもは、全体の16%。内訳は、1位がけがで3,728人、2位は異物誤飲の421人、3位にやけどの160人となっています(いずれも2016年度の数字)。

けがの原因で多いのは、どんなことなのでしょうか。

「一番多いのは、高さのある場所からの転落(転がり落ちること)や墜落(落ちること)によるものです。最近は、リビングにソファを置いているご家庭が多くなったので、ソファから落ちる赤ちゃんの事故が目立ちます。ママたちにとっては、赤ちゃんを寝かせる時にかがまなくてもいいちょうどいい高さなんですね。でもソファは奥行きがないし、座面の前方部分は下に向かってカーブしているものも多いので、生後1か月の赤ちゃんでも手足をバタバタさせているうちに、体の位置がずれて落ちてしまうことがある。合成皮革や革のソファは特に滑りやすい。家の床は(コンクリートやアスファルトに比べ)柔らかいので、深刻な事故になることはあまりないのですが、赤ちゃんは頭が重いので、落ちた時に頭を打つことは十分考えられますから注意が必要です」(植松先生)

リビングのソファで授乳した後、赤ちゃんをちょっとソファの上に寝かせて、タオルを取りに行く……なんてことは、ついやってしまいがち。でも短い時間とはいえ、目を離すなら、ベビーベッドなど安全な場所に置いてあげましょう。

赤ちゃんが転落・墜落しやすい場所はソファだけではありません。

「ママかパパがひとりで赤ちゃんをお風呂に入れた時、まだ動かないからと、お風呂上りに赤ちゃんを洗面所の洗濯機の上に置いて自分の体を拭いていたら、落ちてしまったということもよくあることなんです。洗濯機の上部はフラットに見えても、よく見ると前方に傾斜しているものが多い。面倒でも、脱衣所の床の上にタオルなどで寝かせる場所を作ってから入浴すると安心です。あと、お風呂のふたの上に赤ちゃんを置いて目を離すのも危ないのでご注意ください」(植松先生)

基本的なこととして、高さのある場所に赤ちゃんを置かないようにしたいものです。ベビー用のハイチェアに座らせるときも、必ずシートベルトをする、ベビーベッドもサークルを下げたまま寝かせないなど、ベビー用家具の安全のための機能をきちんと使うことも赤ちゃんの安全のためにやっておくべきことですね。

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もちろん転落・墜落以外にも室内で気をつけるべきことはあります。

「赤ちゃんがハイハイなどで移動できるようになった頃から起こりがちなのは、ドアとドア枠の間に指を挟まれてしまう事故です。赤ちゃんがドアの近くに来ていないか、確認してからドアを閉める習慣をつけるようにしましょう」(植松先生)

また定番のトラブルとして挙げられるのは異物誤飲。これはママ・パパが赤ちゃんの手が届くところにモノを置かないことを徹底すれば、防げることも多いと植松先生は言います。

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「赤ちゃんは、トイレットペーパーの芯を通るぐらい3㎝ぐらいの大きさなら、たいていのモノを飲み込むことができると言われています。指先が上手に使えるようになると、なんでもつまみ上げてお口に入れたりするんですよね。ボタン電池だったり、おもちゃのパーツだったり。突然赤ちゃんの具合が悪くなったと病院に来ても、すぐには原因がわからない。それでいろいろ調べてみたら、何か飲み込んでいた……ということもよくあります。誤飲したもののほとんどは2~3日後に大便の中から見つかるのですが、お菓子の袋やビニール製の堅いシールなどは、のどに詰まることもありますから、こういったものは特に気をつけていただきたいです」(植松先生)

赤ちゃんはカラフルな色のものを好み、それを口に入れる傾向もあるようです。植松先生はあるものについて、こう警鐘を鳴らします。

「心配なのは、最近発売されたジェルボールと呼ばれる新しいタイプの洗剤です。これは濡れると溶ける容器に非常に濃い洗剤が入ったものですが、どの商品も赤ちゃんの興味を引きそうなきれいな色なんです。ご家庭で使う時には、必ず赤ちゃんの手が届かないところに置いてもらいたいです」(植松先生)

また、誤飲以外でも、赤ちゃん用の湯たんぽも同じ場所にずっと当てていたら、低温やけどを負ってしまうこともあるので皮膚が薄い子どもたちは特に注意が必要です。さらに意外と多いのが電化製品のコードを引っ張ったりすることによる事故。特に湯沸かしポットや調理器具のコードを引っ張って、(熱湯などで)やけどをすることもよくあることなので、気をつけなくてはいけませんね。

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「ただ、ママ・パパが赤ちゃんからまったく目を離さないなんて現実的には不可能なこと。なので、赤ちゃんの感電事故を防ぐコンセントカバー、キッチンの入り口や階段などあぶない場所に入れないようにつけるベビーゲートなど、赤ちゃん向けのセーフティグッズを利用して、まずは家庭内に安心して子育てができる環境を作りましょう」(植松先生)

赤ちゃんにとっては、あらゆることが未知の経験で、好奇心の対象です。一日のほとんどをすごす家の中を安全な場所にするために、家具の配置や調理器具の置き場所、床のクッション性などを見直してみてはどうでしょうか。

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