シリーズ「赤ちゃんのための靴選び」第1部
“歩行の専門家”が語るハイハイの重要性と足の発達、
そしてプレシューズ選びの“5か条”とは

2018.08.02

ミキハウス編集部

イタリアのルネサンス期を代表する芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチは、「人間の足は人間工学上の最高傑作であり、最高の芸術作品である」という言葉を残しています。直立2足歩行をする動物は人間だけですが、人間の赤ちゃんは生まれてたった1年で“人間工学上の最高傑作”を使い、立ち上がって歩き始めるわけです。

さて、今回のテーマは「赤ちゃんのための靴」。実は靴選びはその人の歩き方や姿勢にまで影響を及ぼすと言われるほど重要なことで、それは歩き始めの赤ちゃんにとっても同じです。ママ・パパからすれば赤ちゃんに“間違いのない靴”を選んであげたいですよね。

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かのダ・ヴィンチをして“最高傑作”と言わしめた人間の足の動作を邪魔しない靴とはなにか。“靴の専門家”でもあり、歩行を科学的な見地から研究している関西大学人間健康学部の河端隆志先生に2回に渡りお話を伺います。第1回目は、生後〜1年くらいの赤ちゃんの足の発達と“たっち”をはじめたら履かせてあげたいプレシューズについてご紹介します。

 

無理に早く歩かせる必要はありません 基本は急がず自然のままに

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生まれたばかりの赤ちゃんのかわいい足。産着(うぶぎ)の裾からのぞく小さな足を見て、ママとパパは愛おしさで胸がいっぱいになってしまいますね。生後3か月ごろにはふっくらと丸みをおびてくる赤ちゃんの足の形は、大人の足とはかなり違います。赤ちゃんの足はどんな発達・成長を遂げて、大地を踏みしめ、歩いたり、走ったりできるようになるのでしょうか。

関西大学人間健康学部の河端先生はこう言います。

「まず『骨の成長』についてのお話から始めましょう。あまり知られていないのですが、骨が育つということは、骨の端の方が伸びていくわけではありません。骨端よりも少し内側にある『骨端軟骨板(グロースプレート)』と呼ばれる骨のすき間のような軟骨組織に栄養素を取り込むことで、骨は大きくなって伸びていきます。もちろん赤ちゃんの足にもグロースプレートはたくさんあるのですが、この部分は負荷に弱いんですね。だから赤ちゃんの足に大きな負荷をかけると、変形してしまうこともあります。ママ・パパが赤ちゃんの成長を楽しみにするあまり、無理に立たせようとしたり、早く歩かせようとすると、足の骨の成長に悪い影響を及ぼす可能性もあるので、“たっち”や“あんよ”はどうか急がずのんびりと、あくまで自然にまかせてください」(河端先生)

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「うちの子は10か月で立ち上がった」とか「1歳の誕生日前に歩いた」と聞けば、同じぐらいの月齢でまだハイハイを卒業しない赤ちゃんがいる新米ママ・パパはちょっぴり焦ってしまうかもしれませんが、心配はいりません。成長には個人差があって当たり前ですし、ゆっくりじっくり成長していく方が、その後の成長によい結果を生む可能性もあるようです。

なお先生によると、赤ちゃんが上手に歩けるようになるためには、「ハイハイを十分にすることが不可欠」とのこと。ハイハイをしっかりすることで腹筋や背筋、腕の筋肉など上半身が鍛えられて、バランス感覚や反射神経が養われるといいます。

「歩くようになればハイハイすることはほとんどなくなるわけですから、いかにハイハイ期に上半身の筋力を鍛えられているかが重要なんです。事実、ハイハイの時期が長い子は、歩き方に安定感があって転びにくいんですよ」(河端先生)

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また、赤ちゃんの足が湾曲し、膝が外側に向いてO脚に見えるのは、骨盤と大腿骨の接続部分が未発達なため。小学校低学年の頃には、膝は正面を向き、踵(かかと)の骨と脛骨(すねの骨)がまっすぐにつながってきます。

「赤ちゃんや成長期の子どもの靴が重要なのは未発達だから。ちなみに骨の『グロースプレート』がなくなり、成長が止まるのは、一般的に15歳から18歳までの間。言ってみれば、そこが成長期の“出口”なんです。親は『子どもの成長の出口像』を知り、正しい2足歩行ができるように導いてあげてほしいと思います。骨が変形したまま固まると、骨格や体の動きにも影響してきますから」(河端先生)

たっぷりハイハイをした後、歩き始めるようになれば、今度は「裸足でたくさん歩かせてください」と河端先生。その理由について「踵と足の裏の役割」を挙げて説明してくださいました。

「人間の踵の骨は、他の動物に比べて大きくて発達していますが、それは、2本の足で全体重を支えるための抗重力構造になっているから。そして足の裏は、立っている時の人間の体で唯一、地面や床などに常に接しているので、いろいろな情報を収集するための感覚が発達しています。赤ちゃんは、足の裏から伝わる圧感覚(押し付けられる感触)に大脳が刺激されて平衡感覚を育んでいくので、よりダイレクトに圧感覚を得られるよう裸足で歩かせるのが望ましいですね」(河端先生)

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バランスをとりながら歩いたり、動いたりするときに必要な平衡感覚は、足裏の感覚と目で見る情報、内耳の感覚の3つが合わさってきちんと機能します。“たっち”を始めたばかりの赤ちゃんの足の裏は脂肪に包まれていて不安定ですが、少しずつ足の中指、薬指、小指で地面をつかんで歩くようになっていき、より安定して歩行できるようになります。

次のページ プレシューズを履いて“あんよ”の練習を

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