特集「赤ちゃんのいる寝室」第1回 乳幼児コミュニケーションの専門家が語る 赤ちゃんにとって“良い眠り”“良い寝室”とは

特集「赤ちゃんのいる寝室」第1回 
乳幼児コミュニケーションの専門家が語る
赤ちゃんにとって“良い眠り”“良い寝室”とは

妊娠・出産インフォ

赤ちゃんが生まれてから自宅の寝室をどうするかは、ママ・パパにとって大きな問題です。赤ちゃんをお世話しやすい方法はないか、赤ちゃんだけでなく親もゆっくり眠れる方法はないものか、などとあれこれ思いを巡らせることでしょう。

そこで、ミキハウス出産準備サイトでは、「赤ちゃんが生まれてからの寝室」について考えてみたいと思います。第1回目は、乳幼児コミュニケーションを研究する立正大学社会福祉学部の岡本依子先生にお話を聞き、“寝かしつけ”と“寝かし方”についてまとめます。

 

まずは“寝かしつけ”から考えていきましょう

a&s01

0歳児の赤ちゃんにとって、「寝室」はただ眠るだけでなく、眠りにつくまでの時間をママ・パパとすごす場所でもあります。親子のコミュニケーションについて詳しい岡本先生は、寝かしつけは親子の信頼関係を築く時間と考えています。

「特に生後2か月ぐらいまでは、授乳後眠ったと思って布団やベッドに置くとすぐに目を覚ましてしまったり、なかなか眠れなかったりする赤ちゃんもいます。ママやパパは入眠のお手伝いをすることになりますが、この時間がとても大切。背中を触りながら、語りかけたり、子守唄を歌ったり、1歳をすぎてくれば読み聞かせなどもいいでしょう。ママ・パパを独占できる時間が毎日必ずあると確信することは、赤ちゃんに大きな安心感をもたらします」(岡本先生)

そして入眠前、明かりを消してからが「特に大切な時間です」と岡本先生。部屋が暗くなると、赤ちゃんはママ・パパの声や皮膚の感触をより強く意識するようになると言います。

「明るいところでは目から入ってくる情報が優先されますが、就寝前の暗いお部屋の中では視覚以外の感覚が敏感になるんです。そのためママ・パパの息遣いや手のぬくもりを感じながら赤ちゃんは安心して眠りにつくことになります。短くてもいいので、毎日必ず入眠前のふれあいの時間を作ってくださいね」(岡本先生)

時間をかけて一生懸命寝かしつけようとしても、眠ってくれない赤ちゃんに、ママ・パパはどうしたらいいのでしょう。

「赤ちゃんはママのお腹の中にいる時から人の声を聞いているので、とにかく人に興味があります。なので、寝かしつけたと思っても、ママとパパがまだ起きている気配や、近くで何か楽しそうなことがあるようだと敏感に察してしまうこともあります。まだ起きていたいと“心のこり”がある状態なので、眠りが浅いとそれで起きたり、そもそも寝つけなかったりするんです」(岡本先生)

赤ちゃんが眠れない一番の原因が、“心のこり”とは、ちょっとかわいらしいですね。寝つきの悪い赤ちゃんに悩んでいるなら、いっそママ・パパも一緒に眠ってしまうという手があるかも知れません。その代わり朝は早起きして、赤ちゃんが起き出す前にやり残した家事や仕事を終わらせてしまいましょう。

赤ちゃんが安眠できる環境とは

a&s02

赤ちゃんをベビーベッドで寝かせるか、それとも添い寝にするか。どちらの方がすやすやと寝てくれるのか。どちらの方が夜中のお世話をしやすいか……。あらゆる判断基準があるので、なかなか正解は見つけづらいところですが、やはり安全面まで考えるとベビーベッドの使用はおすすめです。

「たとえば、寝かしつけをママ・パパのお布団やベッドでして、ぐっすりと寝ついたころにベビーベッドにうつしてあげるのも一つの方法です。大切なことは、添い寝にせよベビーベッドにせよ、夜中に赤ちゃんが目を覚ましたり、泣いたりしたときに、応えてあげられる環境を作っておくこと。寝室でのそうしたコミュニケーションが、基本的な信頼感や『自分は愛されているんだ』という感覚を育てますから」(岡本先生)

先生によると、こうした信頼感は、子どもの情緒を安定させ、成長してからの社会性を育むことにもつながるそうです。

さらに、赤ちゃんが安眠できる寝室を考える時、まず気をつけておくべき重要なポイントが部屋の温度。赤ちゃんは大人より体温が高いので、少し薄着にしてあげると寝つきが良くなると言われています。一度寝ついたようでも、暑くて目が覚めたりすることもあるので部屋の温度には注意が必要です。

また、暗くて静かな空間であることもぐっすり眠るには重要とのこと。目を覚ました時に暗闇を怖がるかもしれないと小さな明かりをつけておくよりも、赤ちゃんが声を出したら、まずママ・パパの声で応えて、それから抱き上げるなどすることで、そばにいることを伝えるといいようです。

自己主張より協調性…そんな日本人らしさは寝室で育っているのかも

a&s03

誕生後早い時期から親とは別の部屋のベビーベッドで寝る欧米の赤ちゃんと、ママ・パパと同じ部屋で寝ることが多い日本の赤ちゃん。生まれた直後からまったく違う寝方をしているわけですが、赤ちゃんのその後の発達に何らかの影響を及ぼすものなのでしょうか?

「眠っている間の赤ちゃんにとってママとパパが近くにいようと、別室で寝ていようと心理的な影響は考えられません。ただ、欧米の赤ちゃんは、ママ・パパを呼ぶために大きな声で泣かなくてはいけないため、しっかりと主張する必要性をこの段階から学びます。ところが、ママ・パパと同じ部屋に寝ている日本の赤ちゃんはちょっと声を出すと『どうしたのかな?』と気づいてもらえる。そうすると自分からそれほど要求しなくても欲求は満たされます。つまり察してもらえるから、そこまで自己主張する必要性を感じずに育つというわけです。この違いは小さくないと思います」(岡本先生)

欧米の保育施設でも研究を重ねている岡本先生は、「人格は赤ちゃん時代からの人とのかかわりがベースになっています。その意味で寝室も大事な場所です」と指摘します。欧米の子どもは、自分から働きかけてコミュニケーションをとらなくてはならないために自立心が育ちやすく、親の気遣いを受けて育った日本の子どもは、相手を思いやることを学び協調性を身につける傾向があるそうです。

「自立心と協調性、どちらを最初に身につけるかは、文化の違いであり、どちらのタイプがよいというわけではありません。欧米のママ・パパもやり方は違っても、子どもを大切に思って試行錯誤しながら子育てをしているのは私たちと同じです」と岡本先生。いずれにせよ、赤ちゃんの頃からそんな“文化”が培われているというお話は大変興味深いことですね。

最後に岡本先生から、寝室づくりを考える上で大切にしておきたい心構えについてお伺いしました。

「寝室をどうするかは、それぞれの家庭のママとパパの考え方、生活スタイルで決まっていくこと。ただ“寝かしつけ”の大切さや、赤ちゃんの呼びかけにどう答えるかが、その子の性格の形成に関係することは知っていただきたいと思います。赤ちゃんの人生は、寝室から始まるのですから」(岡本先生)

特集「赤ちゃんのいる寝室」、続いての第2回では、筑波技術大学の梅本舞子先生に、日本の寝室の現状について研究データを基に解説していただきます。

 

113-1_prf

<プロフィール>
岡本依子(おかもと・よりこ)
立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科 准教授 発達心理学を専門とし、主な研究テーマは親子コミュニケーション、親への移行、異文化の保育など。「海外の乳幼児保育・教育の現場‐デンマークの園訪問の備忘録‐」(2017年)などの論文を多数発表している。日本子育て学会設立発起人。著書は「妊娠期から乳幼児期における親への移行:親子のやりとりを通して発達する親」(新曜社)、「エピソードで学ぶ乳幼児の発達心理学」(新曜社)など。監修した育児書に「0-5歳児 食育まるわかりサポート&素材データブック」(Gakken保育Books)、「せいかつのえずかん3冊セット:ちっちゃなプレNEO2.3.4さい」(小学館)、「おでかけのえずかん3冊セット:ちっちゃなプレNEO2.3.4さい」(小学館)、「きせつのえずかん3冊セット:ちっちゃなプレNEO2.3.4さい」(小学館)がある。

113-1_books

妊娠・出産インフォ トップに戻る