特集「赤ちゃんのいる寝室」第1回 
乳幼児コミュニケーションの専門家が語る
赤ちゃんにとって“良い眠り”“良い寝室”とは

2018.08.23

ミキハウス編集部

自己主張より協調性…そんな日本人らしさは寝室で育っているのかも

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誕生後早い時期から親とは別の部屋のベビーベッドで寝る欧米の赤ちゃんと、ママ・パパと同じ部屋で寝ることが多い日本の赤ちゃん。生まれた直後からまったく違う寝方をしているわけですが、赤ちゃんのその後の発達に何らかの影響を及ぼすものなのでしょうか?

「眠っている間の赤ちゃんにとってママとパパが近くにいようと、別室で寝ていようと心理的な影響は考えられません。ただ、欧米の赤ちゃんは、ママ・パパを呼ぶために大きな声で泣かなくてはいけないため、しっかりと主張する必要性をこの段階から学びます。ところが、ママ・パパと同じ部屋に寝ている日本の赤ちゃんはちょっと声を出すと『どうしたのかな?』と気づいてもらえる。そうすると自分からそれほど要求しなくても欲求は満たされます。つまり察してもらえるから、そこまで自己主張する必要性を感じずに育つというわけです。この違いは小さくないと思います」(岡本先生)

欧米の保育施設でも研究を重ねている岡本先生は、「人格は赤ちゃん時代からの人とのかかわりがベースになっています。その意味で寝室も大事な場所です」と指摘します。欧米の子どもは、自分から働きかけてコミュニケーションをとらなくてはならないために自立心が育ちやすく、親の気遣いを受けて育った日本の子どもは、相手を思いやることを学び協調性を身につける傾向があるそうです。

「自立心と協調性、どちらを最初に身につけるかは、文化の違いであり、どちらのタイプがよいというわけではありません。欧米のママ・パパもやり方は違っても、子どもを大切に思って試行錯誤しながら子育てをしているのは私たちと同じです」と岡本先生。いずれにせよ、赤ちゃんの頃からそんな“文化”が培われているというお話は大変興味深いことですね。

最後に岡本先生から、寝室づくりを考える上で大切にしておきたい心構えについてお伺いしました。

「寝室をどうするかは、それぞれの家庭のママとパパの考え方、生活スタイルで決まっていくこと。ただ“寝かしつけ”の大切さや、赤ちゃんの呼びかけにどう答えるかが、その子の性格の形成に関係することは知っていただきたいと思います。赤ちゃんの人生は、寝室から始まるのですから」(岡本先生)

特集「赤ちゃんのいる寝室」、続いての第2回では、筑波技術大学の梅本舞子先生に、日本の寝室の現状について研究データを基に解説していただきます。

 

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<プロフィール>
岡本依子(おかもと・よりこ)
立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科 准教授 発達心理学を専門とし、主な研究テーマは親子コミュニケーション、親への移行、異文化の保育など。「海外の乳幼児保育・教育の現場‐デンマークの園訪問の備忘録‐」(2017年)などの論文を多数発表している。日本子育て学会設立発起人。著書は「妊娠期から乳幼児期における親への移行:親子のやりとりを通して発達する親」(新曜社)、「エピソードで学ぶ乳幼児の発達心理学」(新曜社)など。監修した育児書に「0-5歳児 食育まるわかりサポート&素材データブック」(Gakken保育Books)、「せいかつのえずかん3冊セット:ちっちゃなプレNEO2.3.4さい」(小学館)、「おでかけのえずかん3冊セット:ちっちゃなプレNEO2.3.4さい」(小学館)、「きせつのえずかん3冊セット:ちっちゃなプレNEO2.3.4さい」(小学館)がある。

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