特集「赤ちゃんのいる寝室」第2回 たまにはママにも自由な睡眠を!赤ちゃんもママ・パパも“幸せになれる寝室”とは

特集「赤ちゃんのいる寝室」第2回 
たまにはママにも自由な睡眠を!
赤ちゃんもママ・パパも“幸せになれる寝室”とは

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赤ちゃんのいる家庭では、「赤ちゃんのお世話が先になって、夫婦同士の会話やふれあいはいつも後回しになってしまう」というのはよくある話。もちろん赤ちゃんのお世話は大切なことだけれど、お互いに大好きで家族になったママとパパの間に、待望の赤ちゃんが生まれたとたんに“距離”ができてしまうなんて、悲しい気もしますね。そこで「寝室」のあり方を工夫することで、赤ちゃんのお世話と夫婦の時間を両立させることはできないのでしょうか。

シリーズ「赤ちゃんと寝室」。2回目は「赤ちゃんもママ・パパも幸せな“寝室”に」をテーマに、筑波技術大学の梅本舞子先生の研究(※1)から、日本の子育て世代の「寝室」の現状と問題点について考えてみましょう。

 

子育て世帯の「寝室」は半世紀前からあまり変わらないようです

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教育学博士・篠田有子さんは20年の歳月をかけて日本の家族の寝かたと子どもの成長や情緒関係などのかかわりを研究し、著書「家族の構造と心―就寝形態論」(世織書房 2004年 ※2)にまとめています。

同書のなかで篠田さんは「日本の夫婦の意識は(中略)子ども優先で展開しており、お互いの情緒的関係を育み豊かにしていこうという方向に向いてはいない」と指摘。これについて住環境の観点からも研究しようと考えた梅本先生は「夫婦の就寝形態の実態と希望を捉(とら)える調査」(2005~2006年)を行いました。

調査対象となったのは、北は北海道から南は大分県まで全国9地域の郊外の一戸建て住宅に住む337の核家族。その結果、0歳~2歳の子どもがいる家庭では、スペースや部屋数は足りているにもかかわらず、約8割は家族全員が同じ部屋で就寝し、2割がパパだけ別室という就寝形態がとられていることが分かりました。

「つまり、2歳までの子どもはほぼ100%がママと同じ部屋で寝ています。その後未就学児で7割、小学校中学年で半数、中学校入学前後でも1割見られます。そしてどの段階にも、パパは別室という例が2割程度あります。3歳までに子どもが夫婦とは別の部屋で寝るようになると言われるアメリカとは対照的で、日本の子育ての『母子密着』の特徴が表れています」(梅本先生)

この数値は、1970年代に行われた調査(※3)とほぼ同じ。また今から約50年前には、アメリカの学者によって(※4)「日本では就寝時にも夫婦関係より親子関係が優先される」と指摘されています。この半世紀で日本の住まいは大きく変わったように見えますが、子育て世代の寝室の風景はそれほど変化していないようです。

「最新の調査によると、就寝時の母子密着は、ますます長期化する傾向にあるようです。女性の社会進出が進んだ結果なのでしょうか。日中、子どもと一緒にいる時間が少ないママは、寝る時間ぐらい一緒にいたいと思うのかもしれませんね」(梅本先生)

日本のママ・パパが赤ちゃん(や小さな子ども)と同じ部屋で眠るのは、「世話をするのに合理的だから」という理由ばかりでなく、第1回目の岡本先生のお話にもあったように「寝室は親子のコミュニケーションの場として欠かせないもの」 ということを、ママ・パパ自身が実感しているからとも言えそうです。

赤ちゃんの成長とともに変化、移動するママとパパの寝室

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梅本先生の調査では、第一子誕生後、平均して9.3年間は夫婦の寝室に子どもが一緒に寝ていることが報告されています。その間、第二子が誕生したり、パパだけが別室で寝るようになったりと、寝室はママとパパだけの部屋ではなくなります。

また2階建て住宅に住む乳幼児のいる家族では、1階のリビングわきの和室を寝室にしているケースが多いという結果が出ています。赤ちゃんが小さいうちはミルクやおむつ交換などで夜中に頻繁に起きるので、キッチンや洗面所、トイレが近くにある場所を寝室にするのは便利です。日中もベビーベッドや布団をリビングやその近くに置いているという家は多く、合理的な住まい方と言えるでしょう。

ところが子どもが小学生以上の家族では、その数は減ります。そして、子どもが成長して自分の部屋で眠るようになった家族では、再び1階和室を寝室にするケースが多くなります。ここで1階に寝ているのはほとんどが親です。「注目したいのは、子どもの成長とともにママとパパは、寝室の位置も変えているようだという点です」(梅本先生)

欧米のような“夫婦の空間”としての寝室の確立は、日本では難しいと先生は指摘します。

「よく洋画のワンシーンで、夫婦やカップルが寝室のベッドの上で食事をしたり、お酒を飲んだりするシーンがあると思います。寝室は夫婦の時間を楽しむための場所として描かれていますが、日本ではこのスタイルは根づきにくいのかもしれません。調査でも、夫婦の居場所として寝室を充実させたいという希望はほとんど見られませんでした。寝方も、寝室の場所さえも、子ども優先で変化するためでしょう。寝室は自分たちの居場所ではなく、寝るだけの場所ということかも知れません」(梅本先生)

ママ・パパにもやさしいフレキシブルな寝室を

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母子密着型の就寝が大多数を占める(日本の子育て世帯の)寝室の現実をママたちはどう感じているのでしょうか。梅本先生の調査では、家族全員同じ部屋で寝ているママの3人に1人は、「部屋に一人で寝たい」と思うことがあるとか。

この中で「常に一人で」を求めているのは3割で、7割は「時々一人」を望んでいます。理由の中には「配偶者のいびきや寝相の悪さからの解放」も一部あるそうですが、一番多いのは「たまには一人でゆっくり寝たい」という安眠欲求。次いで、「読書やテレビ等一人の時間が欲しい」という希望。梅本先生は、「夫に対する不快感というより、母子密着型育児からの一時的な開放と自分のための時間を欲するママの気持ちの表れ」と分析しています。

「自分自身の経験でもありますが、特に赤ちゃんを抱えたママたちは育児と家事と仕事で精一杯です。赤ちゃんの寝顔を見ながら眠るのは、“いやし”でもありますが、熟睡できないこともしばしば。ママがいつも睡眠不足気味では、パパとの生活を楽しむ余裕なんて持てませんよ(苦笑)。子どもができて夫婦関係が変わってしまった場合、それはママがパパをなんとなく受け付けなくなった…というようなこともあるかもしれませんが、多くの場合はママの寝不足に起因していると考えられます。なので月1回、ママをひとりでゆっくり寝かせてあげるなどして、睡眠不足を解消することも大切だと思います」(梅本先生)

1日の大半を眠りの中ですごし、成長していく赤ちゃん。そんな赤ちゃんを見守るママ・パパにとっても「寝室」は1日の約3分の1をすごす場所ですから、おろそかにすることはできませんね。この機会に赤ちゃんとママ・パパがより幸せな毎日を送るための「我が家なりの寝室」について考えてみませんか?

 

〈参考資料〉
※1 「夫婦の就寝形態の特徴と寝室・私的領域の計画課題について」(2011年)https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/76/660/76_660_281/_pdf
※2 篠田有子:就寝形態論 家族の構造と心、世織書房(2004年)
※3 今井範子:住様式からみた住宅平面に関する研究、京都大学博士論文(1986年)、「第4章 寝床様式と主寝室」より。1978年から1979年に行われた、マンションと公団住宅に住む家族(主に核家族)が対象の調査。第一子2歳までの77家族の83%、3歳から未就学児までの162家族の56%が親(母)子同室就寝。また、夫婦別室就寝は15%存在。
※4 Caudill, W. and Plath. D. W. “Who sleeps Whom? Parent-Child Involvmemt in Urban Japanese Families,” Psychiatry, 29, pp.344-366, 1966

 

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<プロフィール>
梅本舞子(うめもと・まいこ)
筑波技術大学 産業技術学部 総合デザイン学科 講師。博士(工学)、1級建築士。主な研究テーマは、「日本の住様式と住要求構造の関係」、「開放型の住宅計画論の構築―住まいを開くことのメリットの検証」、「セーフティネット住宅の拡充」など。共著に「受け継がれる住まいー郊外の住生活に残る和の要素」ほか。6歳と2歳の男の子のママ。

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