梅本先生の調査では、第一子誕生後、平均して9.3年間は夫婦の寝室に子どもが一緒に寝ていることが報告されています。その間、第二子が誕生したり、パパだけが別室で寝るようになったりと、寝室はママとパパだけの部屋ではなくなります。
また2階建て住宅に住む乳幼児のいる家族では、1階のリビングわきの和室を寝室にしているケースが多いという結果が出ています。赤ちゃんが小さいうちはミルクやおむつ交換などで夜中に頻繁に起きるので、キッチンや洗面所、トイレが近くにある場所を寝室にするのは便利です。日中もベビーベッドや布団をリビングやその近くに置いているという家は多く、合理的な住まい方と言えるでしょう。
ところが子どもが小学生以上の家族では、その数は減ります。そして、子どもが成長して自分の部屋で眠るようになった家族では、再び1階和室を寝室にするケースが多くなります。ここで1階に寝ているのはほとんどが親です。「注目したいのは、子どもの成長とともにママとパパは、寝室の位置も変えているようだという点です」(梅本先生)
欧米のような“夫婦の空間”としての寝室の確立は、日本では難しいと先生は指摘します。
「よく洋画のワンシーンで、夫婦やカップルが寝室のベッドの上で食事をしたり、お酒を飲んだりするシーンがあると思います。寝室は夫婦の時間を楽しむための場所として描かれていますが、日本ではこのスタイルは根づきにくいのかもしれません。調査でも、夫婦の居場所として寝室を充実させたいという希望はほとんど見られませんでした。寝方も、寝室の場所さえも、子ども優先で変化するためでしょう。寝室は自分たちの居場所ではなく、寝るだけの場所ということかも知れません」(梅本先生)