「風しん」予防は社会、職場全体の問題 風しんワクチンの接種はなぜ大切?  Vol.2

「風しん」予防は社会、職場全体の問題 
風しんワクチンの接種はなぜ大切? Vol.2

妊娠・出産インフォ

プレママ、プレパパだけでなく、みんなで予防することが望まれる「風しん」。なぜなら、赤ちゃんが生まれながら病気を持ってしまう可能性が少しでもあるから。

そんな先天性風しん症候群(CRS)の実態について、産科医療の現場から感染症の事例に精通されている久保隆彦医師(シロタ産婦人科名誉院長)に話をうかがいました。

まだ見ぬ赤ちゃんのために「妊活前にワクチン接種を」

風しんは、発熱、発(ほっ)しん、リンパ節のはれなどの症状を引き起こすウイルス性の疾病です。その感染力はインフルエンザよりも強く、1人の患者から免疫がない5~7人に感染させる可能性があります(インフルエンザでは1~2人)。症状は軽いものがほとんどですが、明らかな症状が出ない場合も多く、風しんと気づかないまま周囲の人に感染させやすいという特徴があります。

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風しんは、せきやくしゃみなどの飛沫感染で広がります。風しんにかかったことがない、あるいはワクチンを受けたことがない妊婦がこの病気にかかってしまうと、お腹の中の赤ちゃんにも感染し、先天性風しん症候群(CRS)となって生まれてくる確率が高くなります。妊娠初期ほどそのリスクは高く、国立感染症研究所の調査によると、妊娠1か月で50%以上、2か月で35%、3か月で18%、4か月で8%程度が発症するとの結果が出ています。

 

3大症状は心疾患、難聴、白内障……

CRSの3大症状は、先天性心疾患、難聴、白内障です。これら以外には、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球など多岐にわたります。(下図はクリックで大きく表示されます)

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※厚生労働省「風しんの感染予防の普及・啓発事業」HPより

では、妊婦が風しんにかからないために、どのような対策が必要かというと、妊娠してから、もしくは妊活に入ってから風しんのワクチン摂取に関心をもつ方が多いですが、それでは絶対的に遅いです。「まずは風しんのワクチンを打つ、それから妊活をスタートする」というのが基本です。妊娠がわかってから抗体検査を受ける妊婦さんは多いのですが、その時点で風しんの抗体がない、あるいは少ないとわかっても、妊婦にワクチンを打つことはできません。予防のためにできることといえば、旦那さんやまわりの家族に抗体がない(低い)人がいればワクチンを打ってもらい、自分はなるべく人混みを避け感染しないように生活することぐらい。それでは、風しん対策として不十分といわざるをえません。

もともとは子どもがかかる病気として認識されている風しんですが、2013年の大流行で感染したのは、主に成人の20、30、40代の男性でした。しかも、女性の3倍以上の男性が風しんに感染しました。なぜ、成人男性の間でこれだけ流行したのか? また男女間で3倍以上という顕著な差が出たのかというと、子どものころの風しん予防接種の受け方に原因があります。(下図はクリックで大きく表示されます)

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わが国における風しんワクチン接種の歴史を振り返ると、ワクチン接種は義務ではないため、その時々によってワクチン接種の実施が変わっているのです。1976年から主にCRSを予防することを目的に接種が開始され、 1977年8月からは女子中学生に対する定期接種が始まりました。そうなると、幼児期に定期接種として受けた世代もあれば、学校で予防接種として受けた世代もある一方で、一度もワクチン接種を受けていない世代も存在します。また、学校で実施された予防接種も女子のみを対象に行っているので、男子は受けていない世代もあります。それが今の20代から40代の男性です。(下図はクリックで大きく表示されます)

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※厚生労働省「風しんの感染予防の普及・啓発事業」HPより

昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの人は、中学生のときに女子のみ集団接種が行われている世代。この年代に生まれた男性はこれまで一度も風しんワクチン接種を集団で受ける機会を持っていません。

また昭和54年4月2日から昭和62年10月1日までの間に生まれた人は、学校での集団接種ではなく医療機関での個別接種となっている世代。親が医療機関に連れていき予防接種を受けなければならなかったので接種率が低く、男女ともにワクチンを接種していない人が多い世代です。

ちなみに、昭和62年生まれの人は平成27年である今年で28歳。この風しんワクチンを一度も接種していない世代というのが、今の20、30、40、50代の男性に当たり、まさに結婚して子育てを行う世代です。この働き盛りの男性たちの職場で、知らないうちに風しんをうつされた旦那さんがそれを家庭にもちこみ、妊娠している奥さんが感染してしまう――。これが、先天性風しん症候群の赤ちゃんを生んでしまう主な要因となっています。2012~2013年にかけて日本で風しんが大流行したのは、風しんが流行している東南アジアあるいはインドなどで風しん抗体を持っていない日本の成人男性が風しんにかかったことが発端と推測されています。

また、注意したいのがCRSの発症は過去に風しんワクチンを接種している母体でも起こりうること。わかりやすくいえば、旦那さんが風しんに感染した場合、奥さんは風しんの予防接種を受けているので大丈夫だとは必ずしも言い切れないのです。

予防接種は一度受けておけば大丈夫と思っている人が多いかもしれませんが、ワクチン接種から時間が経つと抗体も弱まる場合があります。なかには、ワクチンを接種しても抗体をもちにくい体質の人もいます。風しんワクチンは1回の接種で約95%、2回の接種で約99%風しんを予防することができるという結果が出ています。ワクチンを2回接種しても問題はないので、過去に予防接種を受けたかどうか覚えていない人、またわからない人は抗体検査(免疫の状態を調べるための血液検査)で自分の免疫力を調べて、積極的にワクチンを接種したほうがいいでしょう。

現在、多くの自治体で、先天性風しん症候群の予防のための(主として妊娠を希望する女性を対象に)抗体検査を無料で実施しています。無料の抗体検査は、平成27年3月31日までの処置でしたが、国の予算が延長になりましたので、多くの自治体で引き続き補助を受けられます。

 

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【プロフィール】
久保隆彦(くぼ・たかひこ)
2015年3月まで国立成育医療研究センター周産期センター産科医長。4月よりシロタ産婦人科名誉院長。周産期医学、胎児新生児医学、母子感染予防対策、産科危機的出血の対応、妊産褥婦のメンタルヘルスの問題、妊娠・授乳と薬、妊娠中からの虐待予防を専門分野とする。日本で最初のHIV妊婦の母子管理をおこなった。

【関連リンク】
風しん・先天性風しん症候群とは?/厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/vaccination/about.html#anchor02

なぜ大切?風しんワクチン/厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/vaccination/vaccine.html

 

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