特集「男性不妊」(前編)
不妊の原因はパパかも知れない?専門医が語る「精子」のお話

ミキハウス編集部

加齢は“精子力”を弱めます 妊娠を望むなら、生活習慣を見直しましょう

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2015年に横浜市立大学が全国の男性不妊を扱う大学病院の協力を得て、7253名の男性不妊の患者を対象に調査を行いました。これによると不妊の原因となる主な疾患として、精子に関する「造精機能障害」、精子の通り道がふさがってしまう「閉塞(へいそく)性精路障害」、性交時の「性機能障害」が挙げられています。

中でも最も患者数が多い「造精機能障害」は全体の約80%を占めていて、この傾向は前回調査の1996年度とほとんど変化がありません。

「造精機能障害」とは、精子を作る機能が正常に働かない状態を言います。この障害が起きると、精液に含まれる精子の数の減少、精子の運動量の低下ばかりでなく、精子に奇形が現れるなど“精子力”が低下し、不妊につながります。

精子の劣化に加えて、晩婚化に伴う「子作り期」の遅れも不妊の大きな要因となっているようです。

日本人女性の初産の平均年齢は2011年に30歳を超え、男性が初めてパパになる年齢も2016年のデータで32.8歳と、40年前の28.3歳から4.5歳も上昇(※2)しています。女性は年齢が上がるにつれて妊娠率が低下することはよく知られていますが、男性も加齢によって造精機能障害が起こりやすくなるのです。

“精子力”の低下は、いろいろなことが原因で起こります。造精機能障害の中にも、無精子症、乏精子症、精子無力症などの異なる症状があり、閉塞性精路障害の原因も一つではありません。

小堀先生は、「赤ちゃんが欲しいと思うなら、まず生活習慣を見直すこと」と言います。

「たばこや睡眠不足で増加する活性酸素によって、体内の抗酸化力のバランスが崩れることを酸化ストレスと言い、これは細胞が老化する原因となります。不妊の原因が何であれ、妻の妊娠のために男性が生活習慣を見直すのは大切なことです。また、コエンザイムQ10などを使った抗酸化療法で、精子の運動率が上がるというデータも出ていますので、そうしたサプリを摂取することもひとつの手段でしょう」(小堀先生)

妊娠しやすい精子をつくるための行動指針として、先生は注意すべき7つの心得を挙げてくださいました。

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膝の上でのノートパソコン使用は、働き盛りのプレパパにとってはついついやってしまいがちなこと。またスポーツタイプの自転車などの愛好家も増えていまので、くれぐれも長時間ライドにはご注意ください。その他も、今すぐにでも始められそうなこともありますから、不妊を避けられるために心掛けてみてはいかがでしょうか。

続く後編では、「不妊に対する男性の意識改革」をテーマに、小堀先生に現状と打開策を教えていただきます。

〈参考文献〉
※1「第15回出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所 平成29年)
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/doukou15_gaiyo.asp

※2「平成30年 我が国の人口動態」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/english/database/db-hw/dl/81-1a2en.pdf

 

dr

【プロフィール】
小堀善友(こぼり・よしとも)
獨協医科大学 埼玉医療センター リプロダクションセンター 准教授。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピスト。男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症を専門とする。著書に、「正しいマスターベーション」、「妊活カップルのためのオトコ学」、「泌尿器科医が教える男の『性』活習慣病」などがある。

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