特集「産前産後のママのからだ」(第1部)
妊娠中の体重はしっかり増やすのが「正解」その理由とは

ミキハウス編集部

低出生体重児でもちゃんと育ちますが、問題点も…

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平成24年に厚生労働省から発表された「21世紀出生児縦断調査結果の概況」(※1)を見ると、「体重及び身長の身体発達曲線」は月齢が高くなるほど、差が開く傾向が見て取れます。たとえば男の子の場合、2,100gで生まれた赤ちゃんは1歳のお誕生日を迎える頃には約7,500gですが、出生児に3,000gだった赤ちゃんは9,000gを超えています。出生時は900gの差が、12か月後には1,500gにも広がっています。

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出典データ:「21世紀出生児縦断調査結果の概況(体重及び身長の身体発達曲線)より」

「大きく生まれた赤ちゃんは、(体力があるからか)初めからおっぱいをちゃんと吸える子が多いようです。おっぱいが吸えるから、母乳も出やすくなる。ママにとっても赤ちゃんにとってもよい授乳ができやすくなるようです」(森崎先生)

この傾向は6歳になっても同じ。小さく生まれると、平均的な体格の子どもたちを超すのはなかなか大変なようです。もちろん成長するにつれてママ・パパの遺伝子の影響でぐっと成長することもあるでしょう。ただ、低出生体重児が増えてきた日本では、平均身長がわずかながら低下しているのも事実なのです。

なお、低出生体重児は成人してから心臓病や糖尿病などになりやすいというバーカ―氏仮説(※2)は、最近の医学界では常識になりつつあります。これは、胎児に充分な栄養が届かないと、少ない栄養で生きていくために、体は細胞の数を減らして“省エネ”体質になって生まれるので、普通の食生活でも生活習慣病になりやすいというものです。

やせ気味のまま育つ子どもは、病気に対する抵抗力が低いなどの問題も明らかになりつつあります。とはいえ、もちろん大きければ大きいほどいいというわけではありません。「新生児の適正体重2,500~4,000gの範囲内になるように、ママも体重を増やしていただきたいです」と森崎先生。何事も「適正」が望ましいですね。

さて、本記事ではやせ志向を脱却して、「しっかりと適正体重まで増やしていきましょう」としてきましたが、やはり心配になるのは産後にまた体型を戻せるか否か。妊娠・出産を経てスッキリと素敵な先輩ママたちも少なくありませんが、彼女たちはどうやってその体型を実現したのでしょうか。続く「産前産後のママのからだ」第2部では、産後のからだのケアについて助産師さんにお話を伺い、体型戻しにチャレンジしている先輩ママたちの経験談も紹介していきます。

 

〈参考資料〉
※1 21世紀出生児縦断調査結果の概況(厚生労働省平成24年) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/tokubetsu/kekka03.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001tmct-att/2r9852000001tmea.pdf

※2 胎生期から乳幼児期における栄養環境と成長後の生活習慣病発症のリスク(日本産科婦人科学会雑誌60巻 2008年9月)
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/60/9/KJ00005041847.pdf

 

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【プロフィール】
森崎 菜穂(もりさき・なほ)

国立成育医療研究センタ―研究所 社会医学研究部 ライフコース疫学研究室長。医学博士。東京大学医学部を卒業後、沖縄県立中部病院、東京大学の小児科を経て、東京大学医学部附属病院、東京都立墨東病院、東京都小児総合医療センターに勤務。2012年ハーバード大学公衆衛生大学院にて公衆衛生学修士号を授与される。主な研究テーマは「胎児期・幼少期の環境要因暴露が健康に与える影響に関する研究」など。3歳の子どもを保育園に預けて仕事をする先輩ママ。

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