I:次は意思決定力について教えていただきたいのですが、これは具体的にどのようなチカラを指すのでしょうか。
高橋先生:どこに行こうか、何を食べようかという日常の小さな選択から、どこの学校に行こうか、部活は何にしようかという少し先の、大きめの選択まで、人生は選択の連続です。一つひとつのことを自分で判断して、「こうしたい」と自信をもって表明できることが意思決定力だと言えます。
I:自分の意思を持ち、それを明らかにするということですね?
高橋先生:そう。自分で決めるチカラです。子どもが自分で決めて実行したことであれば、失敗してもいい経験になる。成功したら大きな達成感を味わえるし、次に向けての自信にもつながります。親に「こうしなさい」と言われてやるのではなくて、自分のことを自分で決めて実行にうつすことができるか否かは、その後の人生を左右すると言ってもいいでしょう。
I:幼少期からその都度考えさせること、選択させることで、自分で決めるチカラをつけるということですね。
高橋先生:はい。自分には決める力、権利があると子ども自身が実感していることが大切なんです。自分のしたいことを言ってみても、どうせ聞き入れてもらえない。何を言ったって無駄、と思って育つのは不幸なことです。
I:これは子育て中の自分も反省すべきことがあるかもしれません。子のためを思って、ついつい介入しすぎてしまうことってあるんですよね…。
高橋先生:親のスタンスとしては、まず子どもの意見を通すこと。そして、結果として失敗しても強く責めないことも大切です。「自分で決めたことだから、これでいい」という気持ちになれる環境を用意してあげるのは親の大きな役目です。そういうことを子どものうちに経験しておけば、大人になってから自分の判断を信じて生きて行けるんじゃないですか。
I:「自分で決めたことだから、これでいい」というのは、自己責任の意識を持たせることにもつながりますでしょうか?
高橋先生:うーん、微妙に違うかな……。自分で決めていい、なおかつ、それで失敗してもだれの責任でもない……そんな感覚かな。失敗は失敗でしかないですからね。次の成功のために反省するのはいいけど、そこで責任を感じるようにしなくてもいいと思うんです。そのために親として「失敗したけど、自分で決めたんだからいいんだよ」ということを伝えていただきたいと思います。いずれにせよ、小さい頃から自分で決めたことを恐れずやらせてもらう経験を積んでいけば、子どもの意思決定力は育つはずです。