数年前までは日本と同じように出生率の低下が深刻な社会問題となっていたドイツは、今ベビーブームに沸いています。2018年3月28日に配信されたロイターの記事(※)によると、2016年の出生数は前年比7%増の79万2131人となり1996年以来の高水準となりました。2011年には66万人でしたから、5年間で出生数は約2割増えたことになります。
要因は大きくふたつ。まずは、同国が受け入れた移民や難民の数が増え、そうした世帯で多くの子どもが生まれているのがひとつ。ふたつめは政府や自治体の子育て支援など、地道な家族政策が功を奏して、30~37歳のドイツ人女性の出産が増加していることがあるようです。
不定期連載「世界の子育て」vol.2は、ミュンヘン在住の溝口シュテルツ真帆さんにドイツの子育て事情を伺います。溝口さんは結婚を機にドイツに移住して出産、現在1歳9か月の娘さんを育てながらフリーの編集者として働いています。
医療費は原則無料、妊娠・出産にもお金はかかりません
――まずドイツで暮らすようになった経緯をお伺いしたいと思います。
溝口さん:東京で会社員として働いている時にドイツ企業の日本支社に勤務していたミュンヘン出身の夫と知り合いました。彼が帰国することになり、2014年に結婚と同時にドイツで暮らし始めました。
――移り住んだのは最初からミュンヘンでしたか?
溝口さん:はい。ミュンヘンはドイツで3番目の都市とは言っても、人口が140万人ぐらいで東京に比べると田舎なんです。娯楽は少ないし日本に住んでいた時のような友だちがすぐにできるわけでもなく、最初のうちはちょっとホームシック気味でしたね。
――そんな中で妊娠されたんですね?
溝口さん:はい、妊娠に関してはすごく順調だったので、特に大変なことはありませんでした。しかもドイツは医療費が基本的に無料なので、産婦人科での妊娠の診断から産んで退院するまで全くお金がかからないんですよ。
――金銭的な心配が要らないんですか。それはうらやましいですね。
溝口さん:(日本では追加料金が必要となる)無痛分娩を選択しても無料です。私が知りうる限り、一般的に病院は自然分娩を勧めますので、簡単に「無痛にしましょう」という病院だけではないようです。もっとも無痛分娩が多い病院もあります。そこは多様性があるというか……いずれにせよ、最後は夫婦の意思が尊重されますね。