「どうしてワクチンが必要なの?」 専門医が語る予防接種の基礎知識

「どうしてワクチンが必要なの?」
専門医が語る予防接種の基礎知識

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軽い風邪から麻しん(はしか)やヒブ感染症(細菌性髄膜炎)など症状の重いものまで、赤ちゃんがかかる感染症はたくさんあります。こうした感染症から赤ちゃんを守るための安全かつ有効な手段がワクチンです。しかし、実はワクチンで防げる病気はごくわずか。多くの感染症はワクチンが開発されていないため予防することができません。

今回のテーマは、ずばりワクチン。子どもたちの健康を守るために開発されたワクチンと、その役割などについて、NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会の理事長で、すがやこどもクリニック院長の菅谷明則先生にお話を伺いました。VPDというのはワクチンで防げる病気(Vaccine Preventable Diseases)のこと。会には全国から多くの小児科医が参加し、子どもたちの命と健康を守るための活動を行っています。

 

生後まもない赤ちゃんは免疫力がある、は間違いだった?

Hand of the newborn child

胎児はへその緒を通じてママから免疫(抗体)をもらうため、生まれたての赤ちゃんは病気にならない…そんな話を聞いたことはありませんか? これは半分正しくて、半分誤りです。まず、ママから抗体をもらうのはその通りで、生後6か月くらいまでは“効力”があります。しかし、赤ちゃんが総じて免疫力が高いかというと、それは間違いです。

菅谷明則先生はこう語ります。
「抗体は病気によって違うため、ママからもらった抗体が役立つときもありますが、ママがすべての病気の抗体を持っているとは限りませんし、その強さには個人差もあります。また抗体をもらっていたとしても、他のいくつもの免疫システムが体の中にできていなければあまり意味がない感染症もあります。つまり総合的に見れば、生まれたばかりの赤ちゃんがもっとも免疫力が低いとも言えます」

なお抗体は生後1か月頃から自分で作れるようになりますが、2歳ぐらいまではまだ低く、大人のレベルに近づくのは6歳頃です。いずれにせよ、乳幼児期には免疫力が未発達なため、さまざまな感染症にかかるということを覚えておいてください。

「赤ちゃんや小さな子どもはいろいろな感染症に感染して免疫をつけながら成長していきます。自然に感染して免疫力がつくなら、それでいいじゃないか、ワクチンはいらないのでは、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。子どもがかかりやすい感染症は、風邪のように軽いものだけではありません。なかには深刻な合併症や後遺症をおこしたり、命を落としたりする危険がある病気もあります。そうした感染症は、かからないようにまず予防することがなにより大事。そこで科学的に安全で効果が証明されている予防法として、ワクチンがあるわけです」(菅谷先生)

さて、みなさんはワクチンがどのようなものかご存知でしょうか。ワクチンとは、感染症の原因となるウイルスや細菌の病原性(病気を発症させる性質)を弱めたり完全になくしたりして、安全な状態にしたもの。つまりワクチン接種は、本当に感染症にかかってしまう前に病原性を弱めた(もしくはなくした)ウイルスや細菌を体内に入れて、その感染症に対する抵抗力(免疫)をつくってしまおう、という方法になります。ワクチンは自然感染のように病気を発症させずにコントロールされた安全な状態で免疫をつくり出します。したがって、基本的には、接種後に症状が出ないか、たとえ出たとしても大変軽く済むというのが利点です。また他人へ感染しないというのもメリットです。しかし、ワクチン接種によりつくりだされる免疫は、自然感染による免疫より弱いため、1回の接種では不十分で、複数回の接種が必要になることがあります。

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ワクチンはまわりのみんなのため、大切な人のためにも受けさせてあげてください

ワクチンを接種することで、子どもたちを感染症から守ることができますが、すべての感染症に対してワクチンがあるわけではありません(むしろ、ワクチンで防げる病気は、ごく一部です)。数多い感染症の中でも、ワクチン接種で防げる病気は「VPD」と呼ばれています。

「治療が難しいVPDから子どもたちを守るために、ワクチンは多くの研究者が長い時間と多大な労力をかけてつくり上げた人類の貴重な財産です。何かの事情で接種しそびれているうちに、子どもさんがVPDに感染するようなことがあってはあまりにかわいそうです。接種できる月齢になったら、1日でも早くワクチン接種を受けるようにしてあげましょう。すべてのVPDはワクチンで確実に予防することが大切です」(菅谷先生)

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「ワクチン接種には3つの大きな利点があります。1つ目は、『接種した本人がかからないこと』。2つ目は『かかっても軽い症状ですむこと』。このふたつはワクチンを接種する本人のための、いわゆる『個人防衛』です。そして、同じくらい大事なのが3つ目の『まわりの人にうつさないこと』。これは、『集団免疫』と呼ばれています。ワクチンを接種しないと、家族や、お友だち、おなかの赤ちゃんにVPDをうつすリスクは高まります。まわりの大切な人を守るためにも、ワクチン接種はとても大切だということをわかっていただきたいと思います」(菅谷先生)

ワクチン接種は本人のためはもちろん大切ですが、まわりの人たちへの「思いやり」でもあります。考えてみてください。私たちのまわりには、免疫力の弱い人たちがたくさんいます。たとえばワクチンを受けることができる年齢になっていない小さな赤ちゃん。おなかに赤ちゃんのいる妊婦さん。病気のためにワクチンを受けたくても受けられない人。体力の低下した高齢者の方々。もしかしたら、ワクチン接種はしたけれども、免疫が充分についていない人などもいるかもしれません。

ワクチンを接種できる人たちが、きちんとワクチンを受ける。このことは、同じ社会に暮らすものとして守っていきたいルールであり、最低限の「思いやり」でもあるのです。

ワクチンは決められた回数、ちゃんと受けることが大事です

日本では生後2か月からワクチン接種が推奨されています。1歳代までに接種できるワクチンは約10種類で、すべて接種すれば約14のVPDを予防できます。下記の「0歳の予防接種スケジュール」の表を見ながら、菅谷先生にワクチンについてもう少し詳しく教えていただきましょう。

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「まずワクチンには、『生ワクチン』と『不活化ワクチン』、さらに『トキソイド』という3種類があります。生ワクチンは免疫ができる最低レベルにまで病原性を弱めたもので、副反応として、もともとの病気のごく軽い症状がでることがあります。不活化ワクチンとは、細菌やウイルスの病原性を完全になくして、免疫をつくるのに必要な成分だけを取り出してつくったもので、接種してもその病気になることはありません。トキソイドは不活化ワクチンとほぼ同じで、細菌の出す毒素の毒性をなくし、免疫をつくる働きだけにしたものです」(菅谷先生)

ワクチンの接種は注射によるものがほとんど。しかし、ロタウイルスワクチンだけは口から飲む経口ワクチンです。ロタウイルスワクチンには2つのタイプがありますが、効果に差はありません。また、1歳前後までに受けられる約10種類のワクチンのうち8つは定期接種になっていて原則として無料で受けられます。ロタウイスルワクチンとおたふくかぜワクチンは任意接種で、自治体によって助成制度がありますが、ほとんどの場合有料です。

「生後2か月から5か月頃までは毎月予防接種をすることになりますが、親御さんとしては接種のたびに泣きじゃくるわが子を見守るのは心が痛むと思います。しかし、今現在、接種できるすべてのワクチンは、効果と安全性の検証が充分行われています。また、同時接種の効果と安全性に関しても問題がないことがわかっています。心配しないで接種できるワクチンは必ず同時接種で受けてください」(菅谷先生)

ワクチンは接種可能な時期になったらなるべく早く始めて、きちんと決められた回数を接種することが大切です。上のスケジュール表を参考にワクチン接種を受けてください。

 

〈参考資料〉
NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会HP
http://www.know-vpd.jp/index.php

 

【プロフィール】
菅谷 明則(すがや あきのり)
NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会 理事長 すがやこどもクリニック院長 医学博士 日本小児科学会専門医 慶應義塾大学医学部卒業。慶応義塾大学病院、東京都立大塚病院、東京都立清瀬小児科病院を経て、2005年9月に、すがやこどもクリニックを開院。2017年からNPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会の理事長を務めVPDの予防の啓発活動に取り組んでいる。

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