
近年、子どもや若者の間では、片方の瞳が内側に寄り左右の視線がずれる「後天内斜視」が増加。これは「スマホ内斜視」とも呼ばれ、デジタルデバイスの過剰視聴との関連が疑われています。
日本弱視斜視学会と日本小児眼科学会などは2019年から、この後天性の急性内斜視とデジタルデバイスの関連について全国的な調査を実施し、斜視の原因や治療方法などについて研究をしました。
その結果、12歳以下の子どもでは、それ以上の青年や成人に比べてデジタル機器の使用時間が短いにもかかわらず、内斜視が急性に発症していることがわかってきました(※5)。また一度内斜視になるとデジタルデバイスの使用を控えても、手術が必要になる例がかなりあることもわかりました。
内斜視では瞳がずれるだけでなく、モノを立体的に見ることができなくなってしまいます。

「両眼で立体的にモノを見る能力も6歳ぐらいまでに急速に発達します。にもかかわらず、ベビーカーに乗っているうちからスマホを見ている子どもたちも少なくありませんね。眼位(左右の目の見ている方向)も眼球運動も不安定な時期からのスマホの使用はとても心配です」(富田先生)
またスマホがからだに与える影響を考える時、デジタル機器の普及とともに取り沙汰されるようになったブルーライトの問題も忘れることはできません。ブルーライトは日光に含まれていて、昼間たくさん浴びたブルーライトが日没とともに消えると、メラトニンという睡眠ホルモンが分泌されて眠たくなってきます。ところが夜遅くまでブルーライトを浴びていると、睡眠のパターンが崩れてしまうのです。
「スマホから出るブルーライトの量は多くはないものの、子どもの場合は目との距離が近いので影響が大きい」と富田先生は言います。ブルーライトは子どもの目に悪いというよりも生活習慣の乱れにつながるということのようです。
スマホはいろいろな面で赤ちゃんの成長に影響があります。もちろん悪いことばかりではないし、使い方さえ間違わなければ非常に役立つ道具です。しかし、子どもを育てるママ・パパとして「確実に存在する悪影響」については、しっかり認識しておいた方がよいでしょう。
もちろん子育ては理想的にできるとは限りません。見せたいとは思っていないけど、仕方なく見せることもあるかもしれません。そうであれば、なおさらスマホの影響をきちんと知って、与え方について考える必要がありそうですね。

【プロフィール】
富田 香(とみた かおる)
平和眼科(東京都豊島区)院長、眼科専門医 慶応義塾大学医学部卒業 国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)眼科等を経て、1987年より現職。眼科一般のほか、小児眼科が専門。弱視や斜視の診療のほか、先天疾患による視力障害のあるお子さん、発達障害のお子さんの診療や支援も行っている。