子どもの目の発達をうながすために一番大切なこと――それは「外で遊ぶこと」。
その理由について富田先生はこう解説します。
「6歳ぐらいまでは視力だけでなく、近くのものや遠くのものにピントを合わせることや見たいものへ視線を向ける眼球運動の能力も育ちます。広い場所でからだを動かして遊ぶ時には、遠くを見たり、近くを見たりするし、からだの動きに合わせて目を使いますから、自然とピント合わせや眼球運動が発達するのです。一方、スマホを見ている時は、からだは全く動かず、眼球運動も狭い画面の範囲だけですよね。赤ちゃんの頃からスマホばかり見ていてはピント合わせや眼球運動の発達が悪くなってしまう可能性は否定できないと思います」(富田先生)
ピント合わせや眼球運動は、日常生活はもとより本を読んだり、黒板の文字を写したりするなど教育を受ける際にもとても大事な機能となります。スマホ画面を長い時間見つめるのは、こうした発達を阻害するかもしれない、というのです。
また近年、世界的に問題になっている近視の急増についてもスマホとの関連性が疑われると富田先生。
「これまで近視の原因としては遺伝が最も大きいと考えられてきました。両親が近視であれば、両親が近視でない場合に比べて近視になる確率は7~8倍と言われています。それでもこのごろ親世代に比べて子どもの世代で近視が増えていることを考えると、遺伝だけでは説明がつきません。つまりスマホなど、デジタルデバイスの過剰な使用が影響していると考えられます。なお強い近視になると視力や視野に障害が起きる緑内障や網膜剥離などの危険性が高まることが知られています」(富田先生)
最近の研究(※1)では目とモノの距離が30㎝以内で30分以上作業を続けると近視の進行が速くなるとされています。
「スマホを見る距離は、大人でも平均20~25㎝と言われています。子どもはからだが小さいので、もっと近づいて見ていると思われます。近視の増加は、決してスマホと無関係ではないでしょう」(富田先生)
WHO(世界保健機関)も2019年4月に出した「乳幼児に関する運動とスクリーンタイム(テレビやスマホなどの画面を見てじっとしている時間)に関するガイドライン」(※2)の中で「子どもたちの健康的な発達のためにからだを動かして遊ぶことは重要である」と提言しています。
「屋外活動を1日2時間、週14時間以上すると近視の進行が抑制されるという研究もあります。冒頭にもお話しましたが、子どもの目の機能は生まれてから6歳ぐらいまでに発達していくこと。さらに、からだを使った外遊びで子どもの目の色々な機能が育つこと、外遊びがとても大事であることをぜひ覚えておいていただきたいと思います」(富田先生)