I:親としては子どもには多くの友だちを作ってもらいたいし、そのためのコミュニケーション能力をつけてもらいたいと思います。より多くの人と円滑なコミュニケーションが取れるような大人に育つために、親が子にしてあげられることってなんでしょうか?
高橋先生: “良い経験”を積ませていくことではないでしょうか。例えば運動でもそうで、野球でも毎打席空振りしていたら練習にならないけど、何回かに一回カーンといい当たりがでると、「リ・インフォースメント(reinforcement)=強化」される。つまり成功体験を重ねることで着実に身につけていくことになり、上達につながる。コミュニケーション能力を身につけたいのであれば、気の合う人、話を分かってくれる人と一緒に楽しい時間をすごすのはとても大切な事です。
I:仲の良い友達とできるだけ遊ばせるとか、そういうことですか?
高橋先生:う〜ん、わざわざ仕向ける必要はなくて、自然にしていればいいと思います。子どもたちがコミュニケーション能力のベースを身につけるのは難しい事ではありませんから。親子のコミュニケーションだって、意識しなくても生活の中で自然とできているでしょう?
I:たしかに。そう考えるとお友だちもそうですけど、基本は親子のコミュニケーションをしっかり取り、“良い経験”を積ませて“楽しい気持ち”をたくさん抱かせることが大事なのかもしれませんね。
高橋先生:それはすごく大事です。でも普通の会話でいいですからね。特に意識なんてしなくていいです。普通の会話の中で、子どもは学んでいきます。
I:子どものコミュニケーション能力を育てるために「良い会話をしなくちゃ」「楽しい時間をすごさせなきゃ」なんて肩肘張らなくていいと。
高橋先生:はい。無口なお父さんなら「ふーん」なんて素っ気ない返事でも十分です。本当の意味で子どものことを大切に想っていれば、口から出てくる言葉はそれほど気にしなくていい。
I:そんなもんなんですか……コミュニケーション能力のある人って、明るくて気さくな家族の中で育つものなのかとどこかで思っていましたけど。
高橋先生:それは違うのではないでしょうか。コミュニケーションの仕方にかかわらず、その子の個性とは、育つ中で作られるものではなく、遺伝で決まるものです。もちろん家庭環境により左右されることもありますが、それはあくまで個性が生かされたぐらいに考えた方がいいでしょう。
I:そうなんですね。うちの子はまだ2歳ですが、僕の小さい頃よりずっと社交的で、誰に似たんだろうと思うこともあるんです。顔はそっくりなんですけどね……本当にそういう部分も遺伝の影響が大きいのですか?
高橋先生:もしかするとパパであるIさんは、もともと社交的な性格なのに小さい時にそれが発揮されなかったのかもしれない。あとはママの遺伝も考えられます。パパとママの遺伝子が混じっているのは、大いに意味があることなんです。
I:そうですかぁ…できればあの社交性を失わずに育ってほしいものです。
高橋先生:自然に接していれば大丈夫ですよ。いずれにせよ、その子には持って生まれた個性というものがあります。そしてその個性により、コミュニケーションの取り方も様々。ちょっとやんちゃな子は乱暴なコミュニケーションを好むし、思慮深い子はあまりアクションを取らずに柔らかくアプローチしていく。でも多少やんちゃであっても、やんちゃもの同士でコミュニケーションが取れていればまったく問題ないし、その中でどんどんより高度なコミュニケーションが取れるようになればいいわけです。その第一歩として、まずは家庭での心の通ったコミュニケーションを通じて、子どもの“能力”を育んでいけばいいと思いますよ。
- <参考資料>
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芸術表現を通じたコミュニケーション教育の推進(文部科学省/平成22年)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/commu/1294421.htm
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芸術表現を通じたコミュニケーション教育の推進(文部科学省/平成22年)