【小児科医・高橋孝雄の子育て相談】
集団行動が苦手&人見知りする子の育て方

小児科医 / 高橋孝雄先生

競争がある遊びの面白さを小さい頃から体験させてあげましょう

競争がある遊びの面白さを小さい頃から体験させてあげましょう

I:友だちと遊ぶことが大切さであるということは、この連載でも何度も高橋先生がご指摘されていることかと思います。お友だちと遊ぶのが苦手なのは個性だとして気にする必要はない、というお言葉はとても安心できるわけですが、一方で友だちと遊ぶことで得られる多くの「学び」が、なかなか得られないのではないか、という心配は相変わらず残るかなと。そのあたりについて、先生のお考えをより深くお聞きできればと思います。

高橋先生:わかりました。仰るように、子どもの社会生活は遊びで成り立っているようなところがあり、あらゆることを遊びから学ぶもの。ですから、一人遊びが好きだってことを否定するわけではないんですが、集団で遊ぶ機会は子どもの成長にとって非常に大切です。これって多くの専門家が指摘していることですよね。ところで、友だちと遊ぶってトラブルがつきものじゃないですか。ちょっとした争いも起こるし、モノの取り合いだってある。面倒なんですよ。そして競争になることもあり、そうなると勝敗もからみますよね。たとえば、みんなと遊ぶことが苦手な理由が、競争があること、優劣がつくこと、負けるかもしれないこと――そういうことが嫌でお友だちと遊ぶことを避けているのであれば、それはちょっと問題かもしれませんね。

I:つまり自分が思い通りにならない状況が嫌で、それを避けているのであれば、そこは注意が必要である。

高橋先生:ええ、特に勝ち負けですね。子どもの頃の遊びって、勝敗があって、それが遊びを楽しくしていることってよくありますよね。だから夢中になれる。ただの引っ込み思案ではなく、勝ち負けに興味がないとか負けるのが嫌といった理由で集団に入りたがらないのであれば、そこは親が積極的に他の子どもたちと遊ばせて、負けて泣いたり、おもちゃを奪われたりする“苦い経験”を積ませてあげたほうがいいだろうと思います。

積極的に他の子どもたちと遊ばせて、負けて泣いたり、おもちゃを奪われたりする“苦い経験”を積ませてあげたほうがいいだろうと思います

I:多少脱線しますが、たとえば運動を伴う遊びの場合、得手不得手がわかれますよね。走るのが得意な子、力が強い子が勝つ遊びに、そうじゃない子は参加したくないと思うのはある意味自然なことなのかなとも思うんです。だって負けることがわかっている遊びにわざわざ参加したくないじゃないですか(笑)。

高橋先生:それは大人でもそうですよね。でも子どもの頃の遊びにおける勝ち負けの経験は、集団で遊ぶ楽しさにつながるものです。特に小さい頃から「負け」を経験していることは、とてもいいことだと思いますね。やる前から勝負を避けるのではなく、まず負けを知ること。そうすれば、負けるのはなにも特別なことではなくて、それで何かを失うわけでもないということを実感できるようになるでしょう。

I:この社会は勝負の連続ですから、子どものうちに遊びの中で負ける経験を積んでおくのは大切かもしれませんね。

高橋先生:ええ、そう思いますね。 “上手に負ける”を学ぶことは大事なことです。悔しいと思うから、どうにかして勝ちたいと子どもなりに考えて努力するんじゃないかな。ただし、負け続けて、それが当たり前になって、悔しいとも思わなくなるのは行きすぎです。ですから負けた時に親がどう対応するかがポイントです。遊びでもなんでも、わが子が負けてしょんぼりしていたら、そんな時こそ共感してあげてください。「くやしいね」「でも、よく頑張ったね」、なんでもいいです。負けや失敗をいい経験にするのは、ママ・パパのタイミングを逃さない一言です。それは子育てに必要な「技」ですね。

I:スポーツの世界なんかでは、褒めて伸ばすタイプと叱咤激励しながら育てた方がいいタイプと、どちらもあるみたいなことが言われますよね。子育ての場合は基本、褒めた方がいいですか?

高橋先生:褒める言葉でも叱咤激励の言葉でも、ともに子どもに対する共感の表れであってほしいものです。お子さんの性格にもよりますが、感覚的には、奮い立たせるような厳しい言葉を1回かけたいなら、5〜10回ぐらいは褒めてあげるのがいいのではないでしょうか。またママとパパで役割分担をして、2種類の言葉がけをバランスよく使い分けてもいいかもしれませんね。ママは「勇気を出して仲間に入れてもらいなさいよ、迷惑かけてもいいじゃない」、一方パパは「今のままでもいいと思うよ、お友だちを大事にして偉いね」なんて感じでね。

I:お友だちとのコミュニケーションが苦手、集団で遊べない…それがただの個性によるものなのかそうでないかは、普段の親との関わりあいでわかること。また、個性のレベルであれば、いずれ「社会」に馴染むにしたがって直ること。一方で、お友だちとの遊びには学ぶことが多くあり、そこで「負け」を知ることがとても大事なこと――今回もいろいろなことを教えていただきました。ありがとうございます!


わが子が楽しそうにしているのを見るだけでハッピーな気持ちになるし、しょんぼりしていたり、ひとりぼっちで遊んでいると自分たちまで悲しくなってしまうママ・パパ。友だちと遊びたがらなくても、人見知りがひどくても、共感しながら忍耐強く見守る姿勢も子育てには必要なようです。その姿勢が、ここぞという時の素早いサポートにつながるのでしょう。ママ・パパも子どもの成長とともに、親として成長していくということですね。

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