I:いわゆる「反面教師」という言葉がありますよね。悪い意味での手本となる人や物事を指しますが、たとえば他の子に持っていたおもちゃを半ば強引に取られたとします。本人は貸したくないけれども、渋々貸したと。こういう時に、「貸してあげられて偉かったね」と褒めつつ、自分の子にはそうなってほしくないから、「本当はあんなことをしてはいけないから真似しちゃだめだよ」と教えてあげたりしてしまうことがよくあります。
高橋先生:う〜ん。「貸してあげられて偉かったね」で止めておけばいいのに。「本当はあんなことをしてはいけないんだよ」と言ってしまったら、それはやりすぎかと思いますね。そんなことを言わなくても、子どもはお友だちの行為が“あまりいいことではない”とわかりますよ。いくら幼いとはいえ、人のものを強引に取り上げることが悪いことくらいは実感として気づいているはずです。何よりも、子どもの面前で他の子どもを非難するようなことは決してしない方がいい。子ども自身の持っている共感力を親が弱めてしまうことになりかねません。
I:言わなくてもわかると。悲しい気持ちを慰めようと共感することは大事だけれども、お友だちを「貶す(けなす)」ことにもつながるような共感の仕方はよくないわけですね。まぁ、それはそうですよね…。
高橋先生:自分の大事なものを奪われた時の悲しみや悔しさっていうのは、体で覚える感覚ですから、ことさらに説明する必要はないと僕は思うんです。人を不快にするようなことをしてはいけない。それは本能的に感じるべきことです。幼くて分からない、ということはないはずです。 親が子どものトラブルに干渉してしまうのは、自分と同じ悔しい思いや悲しい気持ちを、子どもには味あわせたくないという親心ですね。でもそれは成長していくために必要な経験だと思いますよ。