高橋先生:子ども同士のトラブルが起きた時に本来大切なことは、やられた側の子の親がどうするかではなく、やってしまった側の親がどう対応するかということでしょうね。
I:つまり“加害者側”のママとパパの対応が大切だと。
高橋先生:ええ。まずはその場で「お友だちが大事にしているものを無理やり取り上げるのはよくないことだよ」とちゃんと叱りましょう。短い言葉ではっきりと叱る。ポイントはその場ですぐに手短に、です。
I: これもケースバイケースですが、例えば叱っていると子どもが“ギャン泣き”して、途中から収拾がつかなくなることもよくあります。その場合に、冷静になったタイミングでお話をしようというママ・パパも多いと思うんです。数時間、もしくは翌日に「こんなことがあったね。あまりよくなかったね。なんであんなことやったの?」みたいな感じで説明すると、理解を示してくれることも多々あるのかなと。
高橋先生:「振り返り」ってやつですね。決して否定するわけではなく、子どもがそれを受け入れて身につく環境であれば悪くはないと思います。でも多くの場合、蛇足と言えるのでは。「振り返り」が度重なって来ると、だんだん効果も弱くなって、子どもの心に残らなくなってしまいます。子どもを叱る際は、その場で冷静にきつく言うことが肝心です。
I:やった側は叱るとして、やられた側の親は我慢するべきなんでしょうか?
高橋先生:そこは難しいですよね。ただ子どもが失敗したとき、負けたときは褒めるチャンスであり、何かを学ぶチャンスでもあるのと同様、嫌なことをされたとき、トラブルに巻き込まれたときも、なにかを学ぶチャンスだと考えてほしいですね。少々のことではへこたれない人間になって欲しいと思うなら、「試練だね。ここを乗り越えて、強くなってね」と願いつつ、見守っていたらいいのではないでしょうか。
I:そこも見守るべきなのですね。わが子のことをそれくらいの距離感で見られる冷静さが必要ですね。
高橋先生:子どものことは、子どもに任せる。子どもの力を信じるという親の姿勢は子育てに不可欠だと思います。3歳ぐらいになれば、ルールを守れるようになります。4歳になれば、ルールを守らない子は仲間から注意されるでしょう。友だちの中でいつも負けている、弱い立場にあるわが子がかわいそうに思えても、強くたくましく育つための大きな試験問題を出されたと思って放っておけばいいんですよ。
I:そうですよね、そうですよね…もちろん子どもを信じているんだけれど、自分がちょっと支えてあげないと、このまま真っすぐ歩いていけないんじゃないかっていう不安がいつになってもつきまとうんですよね(苦笑)。
高橋先生:真っすぐ歩いてなんかいかなくていいんですよ。親からしてまっすぐは歩いていませんよね、トラブルや後悔続きで・・・(笑)。繰り返しになりますけど、子ども同士のトラブルは子ども同士が話し合ったり、感じ合ったり、お互いを思いやる中で解決していけばいいもの。最近の小学校では、トラブルがあったときに、すぐに「動く」先生が多くなっていると聞きます。保護者から苦情が寄せられる前に未然にトラブルを防ごうというのも無理からぬことですが、ちょっともったいないような気もします。トラブルから学ぶことはたくさんあります。もちろんイジメは別として、ちょっとした諍い(いさかい)を、問題が発展しないように先回りして火消しするようでは、学びの機会を奪うことにもなりかねません。口出ししたくても、じっと我慢で子どもを見守る。これが基本だと思います。
I:わかりました。子ども同士のトラブルを見守るためには、自分の子ども信じることもさることながら、親同士の信頼関係をしっかり構築することが大切なのではないか、とお話を聞きながら思いました。やられた側の親もやった側の親も、何かもやもやした気持ちが残らないように、その場で叱る必要があるときは叱りつつ、「ウチの子がごめんなさい」「いいのよ、大丈夫。ウチの子も強くなってほしいわ」といった親同士の対話、コミュニケーションがあるだけで随分変わりますよね。本日もありがとうございました!
子どもは日々の生活の中で得るたくさんの経験から、自らで多くを学んでいきます。おもちゃの取り合いも、仲間はずれも、その時は悲しくつらい気持ちになっても、その経験を糧にきっと大きく成長できるはず。やさしく、たくましくと願うなら、まずはママ・パパがおおらかな気持ちで子どもの世界を優しく見守ってあげたいですね。