――それでは出産について教えていただきたいと思います。コロナ以降、医療機関の感染症対策が厳しくなり、立ち会い分娩や産後の面会ができなくなっているそうですね。
吉村先生:病院は妊婦さんや赤ちゃんの健康を守る場所です。そこで妊婦さんの間に感染が広がってしまうのは絶対に避けなくてはいけませんから、妊婦さん以外の来院は極力控えていただきたいということです。PCR検査が受けやすくなった昨年夏ごろからは、検査を条件に立ち会い分娩を認めるクリニックも出てきましたが、それぞれの医療機関で対応が異なりますから、事前に確認しておいた方がいいでしょう。
――PCR検査は出産前の妊婦さんも受けるんですよね。
吉村先生:そうですね。お産の時にはどうしてもいきんだり息が荒くなったりしますから、妊婦さんが感染していると唾液が飛んで周囲へうつしてしまうかもしれません。今はほとんどの産科でPCR検査ができるようになっていて、出産前には受けていただくことになると思います。
――その検査で仮に「陽性」と判定されたら、どうしたらいいのでしょう。
吉村先生:その場合は分娩予定の病院ではなく、別の病院に移ることになるかもしれません。感染している妊婦さんが経膣分娩するのが難しいというわけではありませんが、わが国ではほとんどの場合は帝王切開を選択されています。そのためのオペ室があり、産後の病室としてウイルスを外に出さないように気圧を調整した陰圧室がある病院に転院して、出産することになると思います。
――ニュースで「医療が逼迫している」と聞くのですが、出産の直前に感染がわかっても、行き場がなくなるということはないんですね?
吉村先生:確かに一般の方々は検査で陽性になってもなかなか入院できないという話も聞きますが、妊婦さんに関してはそういう心配はいりません。全国各地にある設備の整った医療機関で専門性の高いスタッフが対応する体制が整っていますから、安心して出産に臨んでいただけると思います。
――そうですか。お話を伺って安心しました。コロナ禍だからといって、妊娠・出産に障害があるとか、難しいと考える必要はないということですね。
吉村先生:医療機関への家族の出入りが制限されるなど、ご不自由をおかけすることもあるでしょうが、産科の医療体制については今までと変わらない安全を提供しています。コロナ禍でも無事に妊娠期をすごし、元気な赤ちゃんを迎えることができるように万全の体制が整っていますからね。
――生まれた赤ちゃんにはほとんど感染しないというお話でしたが、授乳はどうでしょう? 感染しているママが母乳を与えることはできますか?
吉村先生:母乳を通して新生児に感染するリスクは少ないと言われていますが、ウイルスが母乳中から検出されたという報告もあります。また授乳する際、接触や飛沫感染を防ぐことは難しいと思われますから、感染している間はおやめになったほうがいいと思います。検査で陰性になっても、医師のOKが出るまでは控えたほうがいい。どうしても母乳を与えたいと考えるなら、リスクの少ない授乳の仕方などを医師とよく相談してください。