2017年から毎年行われているミキハウスベビークラブ会員さまを対象にした赤ちゃんの「名づけ」についてのアンケート調査。4回目の年を象徴する出来事と言えば、やはり新型コロナウイルス感染症の流行です。そこで今回は、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会や意識の変化は、名づけになんらかの影響を及ぼしましたか?」という質問をしてみました。その結果、約87%が「及ぼしていない」と考えていましたが、「及ぼした」という回答も約6%ありました。
「及ぼした」と答えたママ・パパはどんなふうにコロナ禍を受け止め、このかつてない災難の経験をどんな形で赤ちゃんの名前に込めたのでしょう。3人のママにお話を伺いました。
コロナ禍、それぞれのママ・パパの思いが込もった名づけの風景
最初にお話を聞いたのは、東日本大震災とコロナ禍、両方を経験したママ・小春さん。宮城県出身の小春さんは、15歳の時に東日本大震災を経験。その後出会った5歳年上のご主人も東北地方の出身でした。
「私たちのように震災の経験者同士が違う場所で出会って結婚するのはそう多くないと思います。そこで家族や命に対する思いを娘の名前に込めようと思いました」(小春さん)
10月生まれの娘さんの名前は「乃々葉(ノノハ)」ちゃん。青々とした植物がそよ風に揺れている様子が目に浮かぶこの名前には2つの意味があるそう。
ひとつはコロナ禍で知った健康の大切さ。「今まで子どもが成長して大人になっていくことは当たり前だと思っていたけれど、実はすごく恵まれた環境なのではないか」と小春さんとご主人は考えるように。
ふたつ目は故郷への想い。東日本大震災の津波で破壊され、変わってしまったご主人の故郷。思い出の中にある緑豊かな風景を子どもの名前に残すことをご主人が強く望んだ結果、「葉」という字が入ったといいます。
実は小春さんには、ずっと前から決めていた名前がありました。
「震災を経験して、いつか子どもができたら、『祈里(イノリ)』 という名前にしようと思っていました」(小春さん)
ところがコロナ禍で、家で過ごす時間が長くなり、名づけについてもご主人と何度も話し合う機会があって、その結果ふたりで決めたのが「乃々葉」という名前だったそうです。
「震災の経験も、今のコロナ禍もいつか昔話になって風化してしまうのではないかと思います。だからこそ、子どもの名前に今の私たちの思いを残したかったんです。娘に名づけの由来を聞かれた時に、震災やコロナ禍について話すきっかけになるし、娘は自分の子どもにそれを伝えてくれるだろうと思います。私たちの経験がそうやって語り継がれていったらいいなと願っているんです」(小春さん)
名づけについて悩んでいる後輩ママ・パパに伝えたいことを小春さんに聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。
「最初はわが子にふさわしい名前なのか迷いもあったのですが、呼んでいるうちに名前の方が子どもになじんできたみたい。名づけって、こんなものかもしれませんね。」(小春さん)
続いてお話を聞いたのは、現在育休中の新米ママ・千賀さん。アンケートでコロナ禍が名づけにどう影響したかの質問に対して、「(コロナ禍で)予想もしない社会状況がグローバル規模で拡大していく中で、柔軟に変化に対応することやその為に常に努力し続けることの重要さを感じた。自律して夢を叶えられる人間になってほしいと願って名前を考えた」と答えてくれました。
赤ちゃんの名づけにこだわったのは、職場結婚したご主人だったそう。
「環境が大きく変化する中で、夢を叶えるためには、強い芯のある人間になることが大切」とご主人は言い、自律した女性になって欲しいという気持ちを込めた名前にしたいと提案したそうです。
そんなご主人の思いを千賀さんも受け止めました。
「以前は、『好きなことを見つけて、それを生涯の仕事にできればハッピーな人生』と思っていましたが、コロナは予測不可能な出来事もあることを教えてくれました。それで私も、まずは自分の足でしっかり立てるようになることが大切と考えるようになったんです」(千賀さん)
ご主人の思いは「律」の漢字で表すことが決まり、そこにどんな漢字を組み合わせるかをご夫婦で考えました。姓との音の組み合わせ、字画などいろいろな角度から検討した結果、「女の子らしい可愛らしさも持ちあわせた人に育ってほしい」という千賀さんの願いを「花」という漢字で表現することに。こうして娘さんの名前は「律花(リッカ)」に決まりました。
「妊娠がわかって、エコーで顔が見られるようになっても、すぐには“かわいいわが子”という感じではないですよね。でも名前を考えていると、こんな子になるんじゃないかとか、一緒にこんな事をしたいとか、将来のわが子の姿を思い浮かべることができて、すごく楽しい時間でした」(千賀さん)
千賀さんは名づけで親としての実感を深めていったようです。