内閣府が2020年10月から2021年1月にかけて日本、フランス、ドイツ、スウェーデンの4か国で20~49歳の男女を対象に行った「令和2年度少子化社会に関する国際意識調査(※1)」によると、「(自分の国が)子どもを生み育てやすい国」と答えたのはスウェーデンでは97.1%であるのに対し、日本は38.3%――この数字がなにを意味するのか。昭和女子大学人間社会学部初等教育学科の石井正子教授に考察していただきました。

- 石井 正子(いしい・まさこ) 先生のプロフィール
千葉大学教育学部卒 日本女子大学大学院修士課程、昭和女子大学大学院博士課程修了 博士(学術)。昭和女子大学人間社会学部初等教育科教授、同大学院生活機構研究科人間教育学専攻教授。専門分野は障害のある子どものインクルージョン、子どもの生活環境が発達に与える影響など。二男一女の母。
子育て世代への支援策と周囲のやさしさで“育てやすさ”を実感できる欧州の国々

「少子化社会に関する国際意識調査」は2005年度から5年おきに行われていて、2020年度で4回目。最初の調査から「(自分の国は)子どもを生み育てやすい国だと思うか」という設問があり、2005年(※2)の回答では、スウェーデンは97.7%、フランスは68.0%、日本でも47.6%が「とてもそう思う」、「どちらかといえばそう思う」と答えています(ドイツは、2005年は調査対象外)。
2020年になると、「とてもそう思う」、「どちらかといえばそう思う」と答えたのは、スウェーデン97.1%、フランス82.0%、ドイツが77.0%で、日本は38.3%と低下。15年前と変わらず育てやすいスウェーデン、育てやすさが増したフランス、育てにくくなった日本。欧州と日本の差が大きくなっています。
2020年度の調査では「子どもを生み育てやすい国だと思う理由」について、いくつかの選択肢を提示して選んでもらっています(複数回答可)。4か国で最も大きな差が出たのは、「育児休業中の生活保障が充実しているから」で、スウェーデンの83.6%に対し、日本は8.2%。
また「親との同居、近居により親の支援があるから」の項目はどの国でも20%前後ですが、「地域で子育てを助けてもらえるから」、「子どもを生み育てることに社会全体がやさしく理解があるから」といった周りの意識やサポートについては、最も多いスウェーデンではそれぞれ40.9%と54.5%で、最下位の日本の5.5%と8.6%を大きく引き離しています。
これらの結果から見えてくるのは、スウェーデンでは制度面でも人々の意識の上でも安心して子育てができる環境が整っているということ。フランスもドイツもスウェーデンほどではないけれど、着実に「子どもを生み育てやすい」社会を実現しているようです。
一方、ワンオペという言葉が生まれ、待機児童問題などが取り沙汰される日本。こうした差はどこから生まれるのでしょうか。昭和女子大学人間社会学部初等教育学科の石井正子教授に“子育てがしにくい”と感じる人が多い日本社会の現状とそんな環境が子どもたちに与える影響についてお聞きしました。