発達心理学の専門家に聞いた「イヤイヤ期」の子育て

2021.07.22

ミキハウス編集部

「魔の2歳児」とも呼ばれるイヤイヤ期。口を開けば「イヤ!」と言う小さなわが子に振り回されると、ママ・パパのストレスは募りますね。

この時期になるとどうして「イヤ!」が始まるのでしょう。ママ・パパはわが子の「イヤ!」にどう対応すればいいのでしょう。白梅学園大学で子どもの心の発達を研究している佐久間路子教授に伺いました。

佐久間 路子(さくま・みちこ)先生のプロフィール

お茶の水女子大学大学院卒 白梅学園大学 子ども学部 発達臨床学科及び白梅学園大学大学院 子ども学研究科 教授。臨床発達心理士。研究テーマは「子どもの自己理解や心の理解の発達」。著書に「乳幼児のこころ(有斐閣)」「生活のなかの発達ー現場主義の発達心理学(新曜社)」「子どもの『こころ』をのぞいてみる(ぎょうせい)」などがある。一女の母。

「イヤイヤ」は成長の証です

「イヤイヤ」は成長の証です

担当編集I(以下、I):本日は先生にイヤイヤ期について伺い、はじめて経験するわが子との葛藤をどう乗り越えたらいいのかなどについて教えていただきたいと思います。まずはイヤイヤ期の始まりについてです。個人差はあると思いますが、おおよそ2歳ぐらいからと考えていいのでしょうか?

佐久間先生:1歳後半から2歳ぐらいまでの間に始まることが多いです。「イヤ!」が出てくるのは、いろいろな事が少しずつ自分でできるようになってきた表れでもあります。例えば、最初は歩けるだけでうれしかった赤ちゃんが、次第に自分でいろいろなところに行ってモノを触れるようになり、もっと脚力がついてくるとよじ登ったり、隙間に入ってみたりするわけですね。とはいえ、まだ思い通りに体を動かせるわけではないし、自分の気持ちをうまく言葉にできない…そうした、もどかしい気持ちが「イヤ!」という言葉になるとも言えます。

I:確かにその年頃の子どもは、昨日まではできなかったことが突然できるようになったりするものですが、まだ出来ないことも多いですよね。

佐久間先生:それに「自分」という存在に気づくということも関係していると言われています。自己認識とか自我の芽生えなどと呼ばれているのですが、他者との違いがわかってきて、自分はこうしたいという欲求が出てくるんです。

「イヤイヤ」は成長の証です

I:成長の過程でみんなが通る道ということでしょうか。それでも「イヤ!」が強くて、長く続く子と、ほとんど気づかないまま終わってしまう子もいますよね。親としてはできるだけ軽く乗り越えられないものかと考えてしまうのですが…。

佐久間先生:私は発達心理学を研究していて、イヤイヤ期の子どもとの関わり方も学んでいますけれど、私の子どもにもイヤイヤ期はありました。子どもが言うことを聞かず道端に寝転がって親を困らせるということを知識として知っていても、はじめて自分の子の「イヤ!」に直面した時は「あ、きた」と思いつつ、私だってちょっと困惑したものです。

I:先生でもそうなら、仮にわが子のイヤイヤがひどいものだったとしても、もう受け入れるしかないのですね(苦笑)。

佐久間先生:そもそもイヤイヤを抑えたり、軽くする必要があるのか、というのは考えた方がいいかもしれません、発達心理の概念では、イヤイヤ期は自我が芽生え、自己主張が始まる大切な時期。親としては大変ですが、子どもの心の成長として、プラスの意味もあるんですよね。

I:なるほど。イヤイヤ期は成長発達の段階で必要不可欠で、正常な反応ということですね。

佐久間先生:子どもの「イヤ!」に親が「なんでそんなこと言うの?」「なんでママ・パパのいうこと聞かないの?」と腹を立ててしまうと、親も子も疲れて辛くなっちゃいます。だからといって、子どもの言うことを「そうね、そうね」と何でも聞くのはちょっと違うと思うし。

私の場合は「あら、こんなことで騒いでる」なんて、ちょっと引いて面白がることで気持ちを切り替えるようにしていました。深呼吸でもいいんです。子どもに理不尽な「イヤ!」を言われた時のちょっとしたクールダウンの方法を見つけておくと、親も楽になるのではないでしょうか。

次のページ 子育ては試行錯誤の連続。賢く立ち回る方法はありません。

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