![子育ては試行錯誤の連続。賢く立ち回る方法はありません。](https://baby.mikihouse.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/07/pixta_37478228_S.jpg)
佐久間先生:子どもの心の発達にとっては、自分でやりたいとか、自分がやるんだという意思を持ち、それにチャレンジして達成感を得るのは大切なことです。でもまだ経験が少ないので、親の考えや一般常識からずれた行動になることだってあるんですね。例えば、雨の日に長靴を履いていたら、みんなに「かわいいね」と言われて、子どもはすっかり気に入ってしまって、晴れた日でも履きたいと思うのですが、「それは雨の日に履くものよ」と親に止められるわけですよ。
I:長靴のお話、まったく同じことを自分の娘に、かつて言ったことがありますね。天気のいい日に雨靴を履いて歩いたら、暑いし動きにくいことなのでつい言ってしまったんです。ただ、それは本人が経験すればわかることなので、今思うと、そんなこと言わなくてもよかったかなと。
佐久間先生:イヤイヤ期に近づくと子どもはだんだん、自分の「意思」が出てきて、こだわりを主張するようになる。そうなると必然的に、親に止められる経験が日常生活の中ですごく増えてくるんですね。それまでは親と思いがぶつかり合うことは少なかったのに “自分はこうしたい”という意識が出てくると、親やまわりの人との交渉が必要になります。お子さんの「イヤ!」の内容によってはその気持を汲み取って「どうしたいの?」と一緒に考えることができるといいですね。
I:自分の好みを主張する機会になるんですね。「イヤ!」にもいろいろありますからね。
佐久間先生:他の子のおもちゃを取りあげてはいけないとか、道に飛び出してはいけないとか、生活していく中で守るべき社会のルールや安全に暮らすための約束事を破るようだったら、子どもが好きにやりたがっても、「それはしてはいけないこと」と親が丁寧に教えてあげなくてはいけません。
I:それはそうですね。
佐久間先生:公園の遊具を登ってみせると「上手ね」と褒めてもらえるけれど、ダイニングテーブルによじ登ると「ダメよ」と叱られるというように、していいこと、いけないことが場所や場面によっても変わることも覚えていかなくてはいけない。イヤイヤ期の自発的な行動がいろいろな経験に繋がって、子どもは多くのことを学ぶのだろうと思いますよ。
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I:イヤイヤ期の経験はそれからの行動の規範になるんですね。
佐久間先生:そういうことです。あとは、やりたいことが増えてくるこの時期にたくさんの経験をさせてあげるために、「ダメよ」、「あぶないよ」と言わなくてすむ環境を整えてあげることも大切でしょう。子どもがすごす場所には危ないもの、触られたくないものを置かないとか、窓はちゃんとロックしておくとか、あらかじめ配慮しておけば子どもがやりたいことを思う存分やっていても、親は余裕を持って見守ることができるのではないでしょうか。
I:なるほど。ママ・パパが「ダメ」、「やめなさい」と言うから「イヤ!」と返ってくることもあるということですね。それなら行動を制限しなくていい環境にすればいいと。それはイヤイヤ期対策のいいヒントになりそうです。
佐久間先生:以前、親の会に参加させてもらい、0~4歳までの子どもを育てている方たちとお話しした時に、イヤイヤ期をまだ経験したことのないママ・パパたちがイヤイヤ期をすごく怖がっているという印象を受けたことがあります。心配な気持ちはわかりますが、あまりに情報が入りすぎて、現実を見ることが難しくなっているようにも見えます。
I:確かに、最近は子育ての情報も溢れています。加えてSNSでスマートに子育てをしている方の発信を目にすると、「こんな上手にやっている人がいる」とうらやましく思うことも。
佐久間先生:研究者仲間ともよく話すのですが、スマートな子育てなんて幻想ですよ(笑)。イヤイヤ期に関わらず、子育てなんて「ぐちゃぐちゃ」が当たり前。その経験を通じて、親も子どもも育っていくものです。子どもがいつも扱いやすい子じゃないからと言って、「うちの子は大丈夫かな」なんて心配しなくてもいいのではないでしょうか。
そもそも子育ての目標は、心豊かに楽しい人生を送る人になってもらいたいということで、親の言うことを聞く子どもを育てようということではないはずです。子育ては理屈では割り切れないからこそ、その親子にしかわからない強い絆ができるものです。