特集「発達心理学からみる赤ちゃんの食事」(後編)イヤイヤ期でも「食事をおいしく、きちんと食べる子ども」にするために

特集「発達心理学からみる赤ちゃんの食事」(後編)
イヤイヤ期でも「食事をおいしく、
きちんと食べる子ども」にするために

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すりつぶした食べ物を飲み込むゴックン期、食べ物を舌でつぶして食べるモグモグ期、1日3回の固形食になるカミカミ期と離乳食が進んで、咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)の口腔機能が十分に発達した赤ちゃんは、いよいよ幼児食を始めることになります。

この時期の赤ちゃんは、あんよが上手になり、自我が芽生え、しぐさや言葉で意思表示ができるようになってきます。自己主張も始まり、言うことを聞いてくれなくなって、どう対応したらいいか困ってしまうママ・パパもいるようです。

そんなわが子を「食事をきちんと食べる子ども」にするために、ママ・パパはどんなことに気をつけたらいいのでしょう。前編に続き、発達心理学がご専門の早稲田大学の外山紀子先生に「幼児食の食べさせ方」について教えていただきます。

 

幼児食の好き嫌いは、“食物新奇性恐怖”かも?

雑食性の動物は、気づかないうちに毒物を摂取してしまわないように、知らない食べ物を避ける“食物新奇性恐怖”という行動が見られるといいます。

「人間も雑食性の動物ですから、新しい食べ物はとりあえず用心するものですが、1~2歳の子どもは特にその傾向が強いのです」(外山先生)

離乳食は何でも食べたのに、幼児食に移った頃から、「イヤ」、「キライ」と選り好みをする子どもは少なくなくて、ママ・パパは「何が悪いのだろう」と悩むこともしばしばです。でもそれは単なる“わがまま”ではなくて、本能的な“食物新奇性恐怖”が働いているということもありそうです。

また、食べたものが原因で胃腸の不快感があると、たった1回の経験でも強烈な記憶となってその食べ物が嫌いになることがあり、それを“味覚嫌悪学習”と呼ぶそうです。

「ピーマンを嫌うなら、小さく刻んで料理に混ぜて味に慣れさせましょう」などと言うアドバイスをよく聞くものですが、外山先生は「人間は好きでないものに対して非常に敏感。だから子どもは嫌いなものを察知するとすぐにかぎ分けて、その料理を拒否するようになることもあります」と言います。

「ピーマンや人参を食べなくても、他にも野菜はあるので、おおらかに構えたらいいのではないでしょうか。神経質になって、『何とか食べさせなければ』なんて焦る必要はありません。それに大人になる過程で好き嫌いもなくなっていくこともありますし、また大人になって、嫌いな食べ物がいくつかあってもそれほど困りませんよね。他のものを食べればいいし、好き嫌いも個性の一つですから」(外山先生)

今は「山菜が大好き」というママ・パパだって、小さい頃から好物だったということはないはず。人は成長していく中でいろいろな味を知り、嗜好も変わっていくものです。無理して食べた思い出は、苦手意識を作ってしまうこともあり、好んで食べるようにはならないということを心に留めておきたいですね。

食事の時間は20~30分までと決めましょう

好き嫌いは個性くらいに考えてもいい……それは頭では理解できますが、やっぱりその後の成長や、長い目で見た健康な食生活のことを考えると、なるべくなら好き嫌いのない子に育ってほしいもの。ではどうしたら、わが子が無理なくいろいろなものを食べるようになるのでしょうか。

「信頼している親しい人が、おいしそうに食べる姿を見せることが好き嫌いを克服するために一番効果的です。たとえば人参が嫌いで、うちでは食べない子どもが保育園でなら食べるという場合、同じテーブルに座った他の友だちが人参を好きだと感化されて食べるようになることがあります」(外山先生)

嫌いなもの、苦手なものを「食べないから」と食卓に出さないようにするのではなくて、ママ・パパが食べる姿を見せること。ママ・パパがわが子と一緒に食卓に向かって同じものを食べるだけで、子どもの食の世界は広がるのです。

「こういうことを話すと『社会性を育てるために楽しく食べなきゃ!』って思われるママやパパもいらっしゃいます。でも、そんな無理しなくてもいいんです。食事の基本は食べ物に集中して食べること。私は研究で子育て世帯の食事の風景をビデオに撮ってもらっているのですが、なかには食事に1時間もかけたり、子どもが食卓を離れて遊び始めても追っかけて食べさせるママもいます。でも、子どもの集中力は10分か20分ぐらいしか続きませんから、食べないのであれば、20分ぐらいで切り上げてはいかがでしょうか」(外山先生)

粘って(半ば強制的に)食べさせるのは意味がないようです。では、どうすれば好き嫌いの少ない、たくさん食べる子になってくれるのか……。実は離乳食も幼児食も、うまくいくかどうかは食べる前に決まっていると外山先生は言います。

「子どもは身体の感覚に正直なので、間食はしていなくても、甘い飲み物を飲んだりして満腹中枢が働いていると食べられません。つまり食べない子にはそれなりの理由があって、食事のタイミングでお腹が空いていない可能性もあります。だからおなかが空いた状態で食事のスタートラインに向かわせてください。これ、見落としがちですが、食事をおいしく食べるためにはとても大事なことです。また、食事の途中で子どもが遊び食べを始めたり、『もう食べない』などと言い始めたら、思い切って食事をおしまいにしてもいいと思います。そして、次の食事まで何もあげない。子どもがほしがっても、中途半端に甘いものをあげたりせずに、『ダメなものはダメ』と断固とした態度をとることも、時には大事なことです」(外山先生)

少なくよそって、全部食べたらいっぱいほめてあげてください

これは子育て全般に言えることですが、もし子どもが食事をあまり食べなくても思いつめずに、「こんなもの」とおおらかに構えることも大切です。

「食事は1日3回食べるもの。お昼ご飯を食べなかったら、夜に食べればいいし、今日食べなかったら明日食べればいい。食事のバランスが悪くても数日間のトータルで考えればいいんです。子どもが小食なら、無理にたくさん盛り付けるのではなく、少なめに盛り付ければいいと思います。その時々で食べられる量も違うので、控えめによそって、全部食べたら『えらいね!』とほめてあげてください。『全部食べた!』という達成感は自信にもつながり、食に対する姿勢も積極的になっていきます」(外山先生)

大人だって、たくさん食べる人もいれば小食の人もいるのですから、育児書やネットの情報と比べて、「うちの子はどうして食べないんだろう」なんて焦る必要はありません。わが子の個性を大切に、気持ちよく食卓に向かえる環境を整えてあげることが、「食事をおいしくきちんと食べる子ども」にするために大切なようですね。

 

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【プロフィール】
外山紀子(とやま・のりこ)
早稲田大学人間科学学術院教授。博士(学術)。津田塾大学学芸学部国際関係学科教授を経て、現職。研究分野は認知発達。「食事場面における幼児と母親の相互干渉」、「離乳食期における摂食スキルの発達」、「幼児期における選択的信頼の発達」など数多くの論文を発表。著書に「心と体の相互性に関する理解の発達(風間書房)」、「発達としての共食 社会的な食のはじまり(新曜社)」、「乳幼児は世界をどう理解しているか:実験で読みとく赤ちゃんと幼児の心(新曜社)」、「やさしい発達と学習(有斐閣)」、「若者たちの食卓・自己、家族、格差そして社会(ナカニシヤ出版)」などがある。

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