【専門医監修】今の妊婦さんはやせすぎです

近年になり、UNICEF(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)は、受精卵となってから満2歳の誕生日までの1,000日の間に適切な栄養を与えられた子どもは、大人になってから生活習慣病などの病気のリスクが低くなることを明らかにしています。また胎児期の成育環境が、免疫機能や内分泌機能、精神疾患にも影響することが多くの研究からわかってきました。

小さな命の健やかな成長のためにプレママにできることがあるとしたら、妊娠前から自分のからだをしっかり管理すること。そこで、慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生に、プレママのからだづくりについて伺いました。

吉村泰典(よしむら・やすのり)先生のプロフィール
慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医

1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。

やせ体格のプレママからは低体重の赤ちゃんが生まれる傾向があります

やせ体格のプレママからは低体重の赤ちゃんが生まれる傾向があります

生まれてくる赤ちゃんの生涯の健康に、妊娠前からのからだづくりがかかわっている――国内外で発表された多くの調査・研究の結果を受けて、厚生労働省は昨年3月、プレママの食事指導に使われてきた栄養基準を改訂、「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」(※1)として発表しました。

「今の妊婦は多くの方がやせすぎています。妊娠前からの健康なからだづくりを積極的に進めてくことには大きな意義があると思いますね」と吉村先生。

吉村先生が指摘するように、2019年の調査(※2)で、日本の20代女性の約21%、30代女性の約16%がBMI(体格指数)18.5未満の“やせ”であることがわかっています。OECD加盟の先進諸国の中で、日本人女性の“やせ”の割合は9.3%で1位。2位の韓国の5.2%、3位のスイスの3.2%を大きく引き離しています(※3)。

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「妊娠前からの“やせ”は、不妊や早産、2,500g未満で生まれてくる低出生体重児の原因と言われています。低出生体重児はおとなになってから肥満、高血圧、糖尿病生活習慣病を発症しやすいというのは医学界ではすでに常識ですし、最近では、免疫や内分泌の異常、精神疾患にも関わっているという研究結果が次々と発表されています」(吉村先生)

2017年に日本で生まれた赤ちゃんのうち、9.4%が2,500g未満の低出生体重児でした(※4)。1980年のデータでは5.2%ですから、この40年ほどで2倍近くに増加したことがわかります。また低出生体重児でなくても、最近の赤ちゃんは比較的小さく産まれる傾向があるそうです。

「2011年生まれの子どもの出生時の平均体重は、ママ・パパ世代が生まれた1975年に比べるとおよそ200gも減少しています(※5)。小さく産まれると、母乳をうまく飲めないなど発育にも影響することもあります。妊娠前の女性が、バランスのいい食事を規則正しく摂るようにならなければ、低出生体重児は減っていかないと思われます」(吉村先生)

次のページ 妊娠前に普通体重なら、出産までに10~13㎏増やしましょう

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