
高橋先生:たくさんの経験を積み重ねることが学びにつながるというのは、これまでも折にふれてお話してきました。学びの力を育てたいなら、親は子どもがいろいろな経験ができる環境を用意してあげるだけでいいんです。その中で、子どもが好奇心を抱いて取り組みたいことを見つけたら、いい循環が生まれて将来役に立つ力になっていくこともあるでしょう。でも興味が持てないものは学びたいとも思いませんよね。親があまり熱心にお膳立てすると、かえって子どもの興味を削いでしまいかねません。
I:経験ができる環境を用意するのはいいけれども、力を入れてお膳立てするのはよくない……親の教育に対するコミットも「いい塩梅」が必要なんですね(苦笑)。
高橋先生:好奇心は人間が生まれついて持っているものですが、学びには目的意識が必要です。目的意識って、中学生ぐらいでやっと自覚するものでしょう。小さい子はそんな事を考えてはいません。例えば知育玩具と呼ばれるおもちゃで遊ぶ時に、「これをできるようにして、空間認知能力を高めたい」なんて、遊ぶ目的を意識している子どもなんていませんよ。

I:確かに(笑)。要は子どもの自然な好奇心を摘み取ってしまわないことが大切なんですよね。
高橋先生:ええ。子どもでも大人でも好奇心はすべての行動の原動力になります。特に乳幼児期には、好奇心を満たすことは、子どもにとってご飯を食べるのと同じぐらい大切なこと。それを感じ取って、子どもの好奇心を大切に見守ってください。
I:いろいろな事に興味を持つわが子を見ていると、先回りして知識を教えたくなってしまうんですが、まずは辛抱強く子どもの気持ちに寄り添うことなんですね。今日もいいお話をありがとうございました。