軽いつわりと重いつわりで生まれてくる赤ちゃんの体重が違う? 

2022.07.21

ミキハウス編集部

パートナーや周囲の理解はつわりのつらさの軽減に役立ちます

パートナーや周囲の理解はつわりのつらさの軽減に役立ちます

I:軽いつわりと言われるものでも、2か月近く続くんですよね。長い間吐き気が治まらない、食べられないというのはつらいし、症状が強いとからだだけではなく気分も落ち込んでしまいそうです。

永田先生:つわりは一人ひとり、症状も程度も違います。「みんなつらいものなんだよ。」といった励ましを受けると、いま、まさにつらい状況にある妊婦さんは、自分のつらさを分かってもらえないように感じてしまうかもしれません。

もしつらいのであれば「妊婦として当然のこと」と我慢をしすぎないで、症状を少しでも改善していけるようパートナーや家族、医師に伝えてください。買い物や食事の準備などの生活面でのサポートが大きな助けになることもありますし、つわりの時に使える吐き気止めなどの薬もあります。そうしたものに頼ることも選択肢のひとつです。

I:赤ちゃんへの影響が心配で服薬をためらうプレママも多いかもしれませんが、それは心配いらないのですね。


永田先生:産科医であれば、症状や状態に応じて、妊娠期に飲んでも問題がないとされている薬を選択してくれると思います。症状がつらいようなら、遠慮をしないで、かかりつけの産科医に相談してください。

I:妊娠期、もしくは妊娠前からこういうことをしていればつわりになりにくい、重くなりづらいといった予防法はあるのでしょうか?

永田先生:残念ながら、つわりの原因やメカニズムは解明されておらず、明確な予防法も確立されていません。

ただし、妊娠前からマルチビタミンサプリを摂取しておくと、つわりにも効果があるとも言われていますね。でもビタミンAについては過剰摂取で胎児の器官形成に影響が出る可能性があるとされていますから、妊婦さん用として販売されているものを、適切に摂取してください。

I:葉酸は胎児の発育に必要な栄養素であり、先天性異常の発症率を抑えられることもわかってるので、妊娠を考える段階から服用をするのが常識になっていますね。

永田先生:私も妊娠・出産を3回経験しています。1人目のとき、つわりは想像以上につらくて、通勤途中や職場でもひっきりなし嘔吐し、仕事をするのもままなりませんでした。決まった飲み物、食べ物しかのどを通らなくなったし、買い物にも行けなかったので、飲まず食わずで夫の帰りを待つという日もありました。夫がにおいの強い料理を食べて帰ってくると、我慢できないほどの吐き気に襲われたり…。


I:先生も大変だったんですね。

永田先生:つわりに効くとされている生姜を食べたり、吐き気に効くツボを押したり、いくつか漢方薬や吐き気止めを試したり…あのときは藁にもすがる思いでいろいろ試してみました。効く方には効くんでしょうが、私自身はスッキリ治るといったほどの効果は感じられませんでしたが。

I:いろいろ専門的な知識がおありでも、当事者になったら藁にもすがるような思いで、なんでもやったわけですね。

永田先生:それくらいつらいですから。自分で解決できないことに無力感を感じたし、「医師としてこれまでつわりの妊婦さんにしっかり寄り添えていなかったのでは」と反省したりもしましたよ。

ちなみに、1人目の時の経験から、2人目以降では妊娠前から対策を立てました。上の子の育児や生活にできるだけ支障がないように受けられるサポートを確認し、過度の負担がかからないように仕事の調整をし、1人目の時に効果を感じた漢方薬を早めに飲みはじめ、つらい時には夫や周囲の人に手伝ってもらえるように準備をしたんです。2人目以降もつわりの症状はつらいものでしたが、1人目の時のような、絶望的な気持ちにはなりませんでした。


永田先生:私自身は、どうしても世間的につわりが軽く見られているように感じています。ご本人やパートナー、ご家族が妊娠・出産を待ち望まれている場合、つわりはむしろ喜ばしいサインのように感じられるかもしれませんし、およそ半数の方はつわりがないか軽いつわりのみで出産にいたります。しかし、生理痛や更年期障害と同じで、つわりは症状も程度も人によって、その時々で違うんです。

I:プレママがつわりで気分が悪そうでも、周囲はどんな感じなのかを想像できないので、つい「大丈夫だよ」、「がんばって」と声を掛けてしまいそうです。

永田先生:何度も言いますが、つわりはつらいんですよ。もしご自身やパートナー、ご家族が軽いつわりで済んだのであれば、それはとっても幸せなことです。でも、妊婦さんにつわりがつらいと言われたら、「当たり前のことだ」とか「大げさだ」などと思わないでほしいんです。通常のつわりでも本当につらいですし、それが妊娠悪阻なんて段階になると、当然家のことなんてなにもできませんし、上の子がいる場合もお世話だってできません。ですから、周囲の人にはできるだけ寄り添う気持ちを持っていただき、サポートしてほしいと思います。

I:なるほど、そうですね。自分の努力ではどうにもならないからだの不調を抱えているわけですから、周囲の理解とサポートがなくてはあまりにも大変です。多くの女性が仕事と妊娠・子育てを両立している現在、調子が悪くなってからでは支援を求めるにくいかもしれませんから、パートナーや家族だけでなく、職場など社会全体でプレママをサポートする体制ができるといいですね。

今日はつわりと生まれてくる赤ちゃんの大きさの関係性のお話からつわりとの向き合い方まで、貴重なお話をたくさん伺いました。ありがとうございました!


<参考資料>
永田 知映(ながた・ちえ)
国立成育医療研究センター 教育研修センター 教育研修室 室長 大分大学医学部卒。医学博士、公衆衛生学修士。専門分野は産婦人科学、女性の健康、周産期医学、母子保健。現在の主な研究テーマは「女性の健康、周産期関連の大規模データを用いた解析」

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