2017年7月。28歳の誕生日に結婚し、29歳のときに第一子を妊娠、そして出産したタレントの横澤夏子さん。書籍『追い込み婚のすべて』では、100回以上も婚活パーティに通い、ターゲットを絞り、文字通り“追い込む”ことで結婚を実現したエピソードを、ユーモラスに描かれています。

恋愛〜結婚ではある意味、戦略家の一面も持つ横澤さんですが、妊娠や出産、そして子育てについて、どのような価値観、プランをお持ちだったたのでしょうか？ 今回、ミキハウス妊娠・出産・子育てマガジンでは「“追い込み婚”、その後のお話」をテーマに、妊活から出産、子育てに至るまで横澤さんのリアルに迫ります。Vol.4のお題は「withコロナの子育て＆ふたり目の妊娠」です。
【取材日　2022年8月某日＠東京】

《プロフィール》
横澤夏子
よこさわなつこ。1990年7月20日生まれ、32歳。新潟県出身。高校卒業後、NSC東京校に入学。2011年、2015年の「R-1ぐらんぷり」では準決勝に、2017年は決勝に進出するなど一流芸人として活躍。プライベートでも2017年7月20日、28歳の誕生日に結婚を発表すると、2020年2月に第一子を出産、翌年10月に第二子を出産。現在は二人の子どもを子育てしながら、タレントとしても活躍中。本サイトの人気連載コラム「なっちゃんの子育て日記」では、日々の子育ての様子を綴っている。

子育てがはじまって慣れない中でふたり目を妊娠

――私たち編集部スタッフが横澤さんにはじめてお会いしたのは2021年の6月末のこと。新しい連載コラムを開始するにあたりご挨拶をさせていただいたのですが、あのときすでにふたり目のお子さんがお腹の中にいたんですよね。

横澤夏子さん（以下、横澤）：そうですね。まだ発表はしてなかったんですけど、当時はそろそろ妊娠後期に入るくらいだったかと思います。

――あの日はゆったりとしたワンピースを着られていたこともありますが、まったく気づかなかったです。

横澤：お話したのも、ほんの一瞬でしたものね。

――ですから第二子妊娠のニュースを見たとき驚いて、すぐにマネージャーさんに「おめでとうございます」ってメールをしました（笑）。さてさて前置きが長くなりましたが、今回のテーマは「withコロナの子育て＆ふたり目の妊娠」です。コロナ、コロナで世の中が大変な時期に子育てをスタートされて、そしてほどなくして２回目の妊婦生活にも突入されるわけですね。想像するだけで、大変だったんだろうなぁと。

横澤：クラクラするくらい大変でした。前回のインタビューでもお話しましたけど、本当に最初の子を産んで、すぐに緊急事態宣言。世の中でなにが起きているのかよくわからない状態です。でも、コロナで外出できなくなる、人と会えなくなる、そうしたことに大変さはあまり感じてなくて。そんなことより、とにかく家の中のことが大変すぎて、(当初は)コロナどころではありませんでした。

――ひとり目のお嬢さんの出産から程なくしてふたり目の妊娠が発覚。これはある程度、想定されていたんでしょうか？

横澤：いや、ここまで早く妊娠できるとは思ってなかったです。もともと私たち夫婦は3人子どもが欲しいね、ふたり目は2学年差くらいがいいかな、なんて話し合っていたんです。ただ、ひとり目も妊活にとても苦労したことがあったので、早めにクリニックに通うことにしたら、ありがたいことにすぐ妊娠が発覚。とってもうれしいことなんですけど、いかんせん子育てにてんやわんやだった時期だったので、どうしたものかなと。

――手放しで喜んでいるわけにもいかないぞと。

横澤：そうなんです。ひとり目の妊娠期間中、あれだけ苦しかったのに、赤ちゃんを育てながら妊婦生活を送れるのだろうかと本当に心配でした。案の定、子育てしながらのつわりは相当辛かった。タイミングが悪いというか、上の子の離乳食がはじまる時期とつわりが重なってしまって。あのときは湯気を吸うだけで気持ち悪くなってましたね。湯気づわりってやつです。だから料理もできないし、お風呂にも入れない。

――それでも赤ちゃんは待ったなし。

横澤：はい、待ってくれません。これ、年子で産んでいる世の中のお母さん、どうやってたんだろうって不思議で仕方なかったですね。こんなにやること一杯なのに、気持ち悪いわ、子ども泣くわで、まさにてんやわんやでした。

“マスク警察”になっていたあの頃

横澤：子育てに慣れてくるじゃないけど、少しだけ心に余裕ができるようになると、今度はコロナが気になりはじめました。夫はリモートワーク中心だったのでほとんど外出することはないんですけど、私は基本、仕事は家を出ないといけない。だから夫には「気をつけて」と言われてはいて。言われるまでもなく、かなり気をつけてはいましたが。

――お仕事柄、いろいろな方にお会いされますものね。今はだいぶ意識が変わってきましたけど、当時（2021年春〜秋）はまだ世の中もコロナに対する警戒感が強かったように思います。

横澤：私もいろんなことに敏感に反応してましたよ。現場とか行っても「あの人、マスクしてない！」とかマネジャーに言ってみたり。そんなこと言われても困っただろうけど、言ってましたね。完全に“マスク警察”でした。

あと少し狭いスタジオに入ったときなんて、うつるんじゃないかと気が気でなかったです。それに他人の行動も気になってたなぁ。うん、完全にそれモードに入ってましたね。

――妊娠をされてるから、人よりも敏感になるもの仕方ないと思いますよ。

横澤：それはそうなんですけど妊娠を発表してなかった時なんかは、私が妊婦だなんて誰もわからないじゃないですか。だから誰にもなにも言えずに、ちょっと気にしてますよ感をアピールすくらい。周りの方には「ただコロナに過敏になっている人」だと思われていたかもしれません。

――なるほど。とはいえ過敏になる理由がやっぱりあるというか、一時期は芸能人の方の陽性者が頻発していた時期があったじゃないですか。そんな「現場」で仕事をするわけですから、妊婦さんに関わらず過敏にもなるのではないかなぁと。

横澤：そうなんですよねぇ。なんでもホルモンバランスのせいにするわけじゃないですけど、心のバランスが取れてないので、ギャーギャー言ってました（苦笑）。コロナについては正しい情報がどれかよくわからなかたし、ワクチンだって妊婦が打っていいのかどうか、最初はよくわからなかったじゃないですか。どちらにしても感染だけはしちゃいけないって強く思いながら慎重に妊婦生活を送っていました。

――2度目の出産も無痛にされたんですよね。

横澤：はい、もうそこは迷わずに。前回お話したように、1度目は分娩中に“自然”から“無痛”に変更したんですけど、2度目は最初から無痛分娩だったのでかなり楽でした。当日、ぐっすり眠って次の日には「あれ、案外復活してる」みたいになってて。すごいですよね。夫も立ち会いできて、スムーズな出産ができました。ただ、夫以外はお見舞いがNGで、夫も面会時間は1日30分のみ。このあたりはコロナ禍だったので仕方ないなぁと。

子育てとキャリア、すべてを手に入れることはできない

――この2年〜3年、妊娠・出産と立て続けに人生の大イベントを体験されてきました。一方で芸人・タレントとしてのお仕事はセーブしなければいけなかったと思うのですが、自身のキャリアと子育てのバランスについて、どのようにお考えでしょうか？

横澤：そこは葛藤があります。お仕事はいっぱいしたいけど、全部自分が思うようにできるわけじゃない。たとえば私にとって大きかったのは『細かすぎて伝わらないモノマネ』に出られなくなったことですね。あれってオチの後に、床が開いて奈落に落とされるという演出があるじゃないですか。だからひとり目を産んで、さぁ、出ようかと思ったら妊娠がわかってまた諦めなくちゃいけなくなって。

――さすがに妊婦だとできない仕事ですよね。

横澤：そうなんです。あー、今年も出られないんだって、すごく悲しくて悔しくて。で、オンエアを見て、改めて出たかったなぁって思ったりね。やりたいと思っていたことがどんどん手から離れていく感覚はありました、だけど、それは私が選んだこと。すべては手に入らないから、どこかでお休みをしなければいけない。葛藤はありつつも納得するようにしました。

横澤：できる範囲でお仕事をしていくしかないですよね。夫の仕事、シッターさんのご都合、子どものコンディション、お仕事のタイミング……現実的にそれらをすべて私の都合だけにはできないですから。今の私の第一目標は家族の生活を回すこと。目標はいくつ持ってもいいと思うんですけど、優先順位は子育てだというふうに変わりました。

――これからも子育ては続きます。こんな形で仕事をしていこう、みたいなことはお考えですか？

横澤：そこは考えますね。今、子育てをがんばって、できれば３人目も産んで、３番目の子が小学校高学年になるくらいになって諸々落ち着いてから、完全に復活できればいいかなと勝手に思っていたりはするんですけど。でも小学生の子を持つお母さんから「いつまでも落ち着かないよ」と言われて、こわーってなっているところです（笑）。

撮影：今井裕治